就業規則は不利益変更できる!条件と注意点について解説

2021年5月18日


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就業規則の従業員への不利益が見込まれる変更は原則禁止されています。ただ、働き方が多様になり就業規則のどの部分に不利益を感じるかは人それぞれであることから全員が納得する就業規則は作れません。そのため企業には合理性があり、従業員への周知が徹底されている場合に限り不利益な改正が認められています。今回は就業規則変更の原則や不利益な変更の例、変更できる条件、就業規則の変更手続き、過去の事例について解説します。

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就業規則について

就業規則の役割

就業規則とは、従業員の労働時間や賃金などの労働条件に関することや、職場内の規律などについてまとめたものです。就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する企業では作成・労働基準監督署への届出が義務付けられています。就業規則があることで、企業は社内ルールを明確に従業員に示すことができ、社内秩序を守ることができます。また、労働条件などが原因のトラブルも未然に防げるので、就業規則の役割は重要といえるでしょう。

就業規則の内容

就業規則の記載内容は、絶対的必要記載事項・相対的必要記載事項・任意的記載事項の3つに大きく分けられます。

  • 絶対的必要記載事項

就業規則に必ず記載しなければならない事項で、従業員と労働契約を締結する際にも欠かせない項目です。記載が必要な項目には以下のようなものがあります。

  1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
  2. 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締め切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  3. 解雇の事由を含む退職に関する事項

ちなみに、労働契約を締結する際に示される、労働条件の「絶対的明示事項」には、上記の3項目に加え、「労働契約の期間」、「有期労働契約を更新する場合の基準」、「就業の場所」、「従事すべき業務」、「所定労働時間を超える労働の有無」の5項目が必要になります。

  • 相対的必要記載事項

企業で何らかの制度を設ける場合は必ず記載すべき事項で、以下のような項目が該当します。

  1. 退職手当に関する事項
  2. 臨時の賃金、最低賃金額に関する事項
  3. 食費、作業用品などの負担に関する事項
  4. 安全衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰、制裁に関する事項
  8. そのほか全従業員に適用される事項
  • 任意的記載事項

任意的記載事項については、労働基準法に定められていないため、企業の任意で記載することができるものです。例として以下のような項目が記載されます。企業によって記載項目は異なりますが、従業員に対して周知したい内容を整理しておくと良いでしょう。

  1. 就業規則の目的と趣旨
  2. 企業の理念
  3. 心得
  4. 用語の定義

就業規則の変更について

就業規則変更の方法

就業規則を変更する際は、作成時と同様に、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者からの意見聴取が義務付けられています。ここでいう「意見聴取」とは、文字通り意見を聴けば良いため、同意を得ることや、協議を行うことまで要求しているものではありません。また、事業主としては、法的にはその意見に拘束されるものではないため、就業規則の変更そのものは企業が主体となって行うことができるといえるでしょう。

不利益な変更を行う条件

就業規則は、上述のように企業の判断で変更できるものですが、不利益変更である場合は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と合意することが必要です。ただし、就業規則の変更に反対する従業員がいたとしても、その変更が合理的な変更と認められる場合は、就業規則の不利益変更は可能とされています。ここでいう「合理性」とは、以下のような要素を考慮して判断されます。

  • 従業員の受ける不利益の程度
  • 労働組合などとの交渉の状況
  • 変更内容の相当性
  • そのほかの事情

不利益変更については、「変更についての企業側の必要性が高く、かつ、従業員の不利益性の小さい」場合には合理性が認められることが多いですが、「企業側の必要性は高いが、従業員の不利益も大きい」場合には、より綿密な協議のもと合意を求める必要があります。

不利益な変更の例

就業規則の不利益変更でイメージしやすい例には、以下のようなものが挙げられます

  • 賃金の引き下げ
  • 手当の廃止
  • 労働時間の変更
  • 年間休日の削減
  • 福利厚生の廃止や減額

企業からもらえる賃金、手当が引下げられることは、従業員に金銭的不利益があるといえるでしょう。ほかにも、従業員のメリットが無くなる場合は不利益変更になる可能性があります。

不利益な就業規則変更の裁判事例

住友重機械工業事件

大幅な損失を計上したことを理由に、従業員への報酬を減額した事例です。当時の状況は、業績不振から企業の株価も下がり債券格付けもBB+と格下げされており、経営陣は事態の改善のため、2002年と2003年度の2年度にわたる基準賃金で平均10%ほどの総労務費の削減を盛り込んだ対策案をまとめました。裁判では経営危機回避を目的とした企業側の労働条件変更に対して合理性が認められています。

フェデラルエクスプレスコーポレーション事件

指定休日の削除が不当な労働条件の変更にあたる、として争われた事案です。メーデー・クリスマス・12月30日・従業員の誕生日の4日間の休日を出勤日とした就業規則の変更は合理性がないとして、企業側が提訴されました。判決では、代償措置がないこと、同業他社の状況などから、変更の必要性が認められないことが指摘されました。このことから、変更後の労働条件については合理性が不十分で、従業員の訴えが認められています。

シオン学園事件

教習指導員に対する賃金体系の変更について争われた事案です。当時、多額の営業損失を計上していたため、企業は対応策として賃金減額を実施したところ、従業員より訴えを起こされました。裁判所の結果、企業側の合理性が認められています。賃金減額に関して度重なる団体交渉に応じていることや、経営状況について丁寧な説明を行ったことなどが評価されています。

就業規則変更の流れ

就業規則の変更案の作成

まず就業規則の変更案をまとめます。従業員に対して不利益な変更が生じる場合は、その合理性を慎重に判断して変更案を作成してください。また、従業員に正社員のほかパートやアルバイトといった非正規労働者がいる場合は、就業規則が適用される範囲を決めることも重要です。さらに、法律に抵触する部分がないかどうか、法務担当者などによる確認も忘れずに行いましょう。

就業規則変更届の作成

次に、就業規則変更届を作成しましょう。就業規則変更届には決められた様式はありませんが、活用できる雛形を労働局のWebサイトなどからダウンロードできます。また、就業規則変更届には就業規則の全文を記載しなくても、主な変更箇所のみを添付することも可能です。

意見書の作成

意見書は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者から意見を聞いたことを証明するための書類です。就業規則の変更に対して労働者の代表者から特段意見がない場合には、意見書には「特になし」と記載しましょう。

労働基準監督署へ提出

労働基準監督署に以下の書類を提出します。

  • 就業規則変更届
  • 意見書
  • 変更後の就業規則

社内へ周知

従業員へ就業規則を変更したことを忘れずに周知しましょう。周知方法としては、社内の見やすい場所に変更後内容を掲示する、書面で従業員に交付するなどがあります。また、電子的データとして保存してパソコンで閲覧できるようにする方法もおすすめです。

まとめ

最近ではコロナ禍の影響で、事業縮小や事業内容の変更を迫られる企業も少なくないため、従業員に対し不利益な労働条件の変更をしなければならない場合もあるでしょう。不利益変更でトラブルが生じないよう、企業には合意に至るための努力が求められますが、その変更に合理性が認められれば、不利益変更を行うことも可能です。この場合は、不利益変更の具体的内容を正確に伝えることはもちろん、企業の経営状況の悪化など、変更が必要である実質的理由について詳しく説明し、理解を得るよう心がけましょう。

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