採用ペルソナとは、企業が求める理想的な人材像を具体化した架空の人物像を指し、採用のターゲットを明確にすることで効果的な人材獲得を可能にします。作成には、自社のビジョン分析、データ収集、年齢・職歴・価値観などの詳細設定、検証・共有が必要です。これにより採用のミスマッチを防ぎ、効率的な採用活動が実現します。今回は、採用ペルソナの意味や作り方、活用のメリットについて解説します。
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企業が求める理想の人材像のこと
「ペルソナ」は、マーケティングの領域においては「製品やサービスを利用することを想定した消費者モデル」のことを指します。自社が開発する製品やサービスに対して、注目度やニーズのある人物像をあらかじめ設定することで、より具体性のあるマーケティング戦略の構築が可能になります。つまり、「採用ペルソナ」は企業が採用したいと考える具体的な人物像のことを指し、採用活動を効率化させるための重要な情報源となります。
「採用ターゲット」との違い
「採用ペルソナ」と混同されがちなワードとして、「採用ターゲット」というものがあります。採用ターゲットとの違いは、採用ターゲットは消費者の全体から該当するであろう人物を絞り込む形で決定するのに対し、採用ペルソナは性別や居住地などの情報をもとに、具体的な人物像を構築していくというアプローチの違いがあります。また、採用ターゲットは同じ属性を持つグループという単位までしか絞り込みをしませんが、採用ペルソナはパーソナリティを持つ1人の人物像を作りあげるため、社内間でより詳細な認識の共有が可能という違いがあります。
採用ペルソナの作り方
手順1:採用の目的を明らかにする
採用ペルソナを作成する前に、まずはなぜこれから採用活動を自社が進めなければならないのか、その目的を社内で共有しておきましょう。例えば、離職などで欠員が生じた部署への人材を補充したい場合と、新規事業に参入する際のオープニングメンバーの募集とでは、理想の人物像とするステータスは大きく異なることが予想されます。
この場合、欠員が生じたケースでは退職した従業員が持っていたスキルや経験と近い人材が求められますし、オープニングスタッフのケースは、新規事業の内容に沿った人物像を新たに構築する必要があります。このように、採用目的によってペルソナ構築の進め方や採用方法についてあらかじめ協議しておくと、その後の採用プロセスがスムーズに進みます。
手順2:求める人物像を洗い出して優先順位をつける
次に、いよいよ採用ペルソナの具体的な人物像の構築に入ります。まずは、どのような人物像が求められるのか、その属性や情報を思いつくままに挙げてみましょう。ただし、理想像を追及するだけではなく、採用する現場の声を聞いたり、実際に現場で活躍する従業員の属性を見極めたりするように、的確な人物像の設定を目指すことが重要です。
その後、挙げた属性や情報に対して、優先順位をつけていきましょう。まずは「必須条件」を決定し、次に「できれば含みたいもの」を当てはめていき、最後に「除外するもの」が出てきたら少しずつ情報整理を進めます。優先順位を当てはめることで、理想が高すぎる構成になっていないか、不要な情報が含まれていないか、といった確認作業がスムーズに行えるようになります。
手順3:情報を整理して社内で内容を共有する
要素の優先順位をつけたら、より具体的な人物像になるようにバックグラウンドやパーソナリティなどの設定を肉付けしていきましょう。「働き方の希望」や「ライフスタイル」など、心理的要素を加えることでより現実味のある人物像の構築につながります。
ここまで詳細なペルソナの設定ができたら、社内で意見のずれがないか採用ペルソナを共有し、適宜調整をしましょう。さらに、採用市場との齟齬が生じないよう、採用担当者ともペルソナの共有を行い、ペルソナの設定が現実的であるかどうかを確認することも重要です。
手順4:定期的にブラッシュアップを行う
採用ペルソナは一度構築したらそれで終わりではなく、適宜修正やブラッシュアップを繰り返して運用を行うのが基本です。なぜなら、採用市場のトレンドや求職者のニーズ、自社の求人状況は刻一刻と変化するため、それに合わせて採用ペルソナの要素を調整する必要があるからです。定期的に現在の状況とペルソナ設定にずれがないかを見極め、見直しを進めましょう。もしも思うように求職者が集まらないと感じたら、優先順位の見直しを実施すると良いかもしれません。
採用ペルソナを設定することによる効果
ペルソナの情報が求人票の作成に役立つ
求人票を掲載する際には、いかに他社と異なる点をアピールできるかが大きなポイントとなります。特に、大規模な求人サービスに掲載する場合、利用者が多いことでアクセス数は見込めるかもしれませんが、当たり障りのない内容にとどまってしまっては求職者の訴求にはつながりません。しかし、明確な採用ペルソナを設定している場合、ペルソナの要素や情報を通じて自社の独自性や強みをアピールすることが可能です。
採用担当業務の効率化
また、採用ペルソナとして設定した人物像に合わせた採用手法をとる、という活用方法もあります。例えば、スカウトをして求職者とコンタクトをとりたいと考えた場合、スカウトメールの文面に採用ペルソナの情報を落とし込むことができます。スカウトしたい人材が採用ペルソナの要素と近い人物であれば、それだけ自社に興味を持つ可能性が高くなります。採用手法が多様化するなかで、効果的な採用手法やアプローチを選択できるのは、採用担当者の負担を軽減し効率的な業務の進行に役立つでしょう。
入社時のミスマッチを防ぐ
採用ペルソナは求職者にとっても求める人物像が明確であるため、企業側とのミスマッチが起こりにくい状況であると言えます。そのため、入社後もビジョンや働き方とのギャップが生まれにくく、ミスマッチが原因となる早期離職やモチベーションの低下といった不安要素を感じにくくなります。結果として長期的な定着につながり、企業の成長や活性化が期待できるでしょう。
まとめ
自社が求める人物像を「採用ペルソナ」としてまとめることで、求職者にとっても自社をアピールできる大きな訴求力として期待できます。ただし、あれもこれもと要素や希望を詰め込みすぎると、採用市場とマッチせず求職者が現れないという本末転倒の結果になる可能性もあります。経営層や現場、市場の状況など多角的な視点からペルソナを設定し、採用活動に生かせるよう定期的にブラッシュアップを進めながら運用しましょう。