10分前出勤は労働基準法では労働時間に含まれる?

2021年3月4日

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就業時刻に業務をしっかりと始められるよう、10分程度余裕を持って出社することを指導している企業は多くあります。この場合、10分間の準備時間が労働時間に含まれるかどうかは、ルールの作り方に依ります。どのような場合に労働時間に含まれるのか確認し、違法な労働を強いていないかチェックしましょう。今回は、10分前出勤の現状と法律上の労働時間の開始の定義、労働時間にみなされる例、就業ルールへの記載の仕方について解説していきます。

10分前出勤の現状

ひと昔前のビジネスマナーでは、「始業時間には席に着き、仕事を始められる状態にしておくべき」という考え方が一般的でした。しかし、現在は労働基準法における「労働時間」の定義が周知されており、賃金の発生しない始業時間より前に勤務を開始することを強制することは違法行為という考え方が定着しつつあります。
しかし、勤務開始前の着替えや準備などのために早めに出社する必要がある職種もあるため、始業時間に間に合えばいいという考え方は、すべての企業には適用できていない現状です。また、特別な準備は無くても、「新人は一番に出社するべき」などという習慣がある職場もあるでしょう。
このように、多くの労働者が、労働基準法における労働時間の定義を知識として知ってはいても、職場の規則や意向に従うべきという考えのもと、早めに出社する人が多いことが現状です。

法律上の「労働時間の開始」の定義

労働基準法では、「労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されています。つまり、雇用主から直接的または黙示的な指示を受け、従業員が業務に従事する時間のことを労働時間といいます。
この定義は当然のことをいっているようですが、実際の業務上では判断が難しいケースが生じることがあるため、注意が必要です。たとえば、就業規則に記載はないものの、社内の習慣で勤務時間外にやるべきことがある場合などです。このような時間を労働時間としてみなすかどうかは、就業規則だけではなく、そこに雇用主の直接的または黙示的な指示があるかどうか、強制力があるかどうかなどを、客観的な事実に基づいて判断します。

10分前出勤は労働時間とみなされるか

10分前出勤についても、雇用主の指揮命令下にあって労働力を提供している時間か否かが判断のポイントになります。
強制力が弱く実際に業務に従事していない場合は、指揮命令下のもと労働力を提供しているとは言い切れません。たとえば、自分の意志で早めに出社し、席に着いているというだけでは、労働時間とはみなされない可能性があります。
一方、就業ルールで10分前出勤が規定されている、あるいは始業時間前に朝礼やミーティングが行われるなど、黙示的に10分前出社が強制されている場合は労働時間に該当するため、時間外手当を含めた賃金を支払わなければなりません。

労働時間にみなされる例

業務に必要な準備や清掃の時間

始業時間前の業務に必要な準備行為や、就業時間後の業務に関する後始末を事業場内で行った時間は、それらが雇用主の指示によるものであれば労働時間とみなされます。準備行為や後始末とは、着用を義務付けられた所定の服装への着替えをすることや、事業場内の清掃をすることなどです。
業務の開始と終了の前後は、多くの人が身だしなみを整えたり身の回りを整理したりするなど、それなりの準備をするものですが、準備行為や後始末を怠った場合の不利益措置の程度が大きいと、義務付けられたものとされる傾向があります。また、準備行為や後始末などに場所の指定などの場所的拘束がある場合も義務付けられたものとみなされやすいでしょう。

手待時間

手待時間とは、就業時間中に作業はしていないものの、雇用主から指示があればすぐに対応できるように待機している時間のことです。手待時間中は雇用主の指揮命令下にあるといえるため、労働時間とみなされ、賃金の支払いが必要です。具体的には、飲食店などで顧客が来店するまで店舗で待機している時間や夜間勤務での仮眠時間、昼休み中の電話番や来客対応、物品の運搬や運送などが挙げられます。
実質的には手待時間であるにも関わらず、休憩時間として扱い、賃金を支払っていないケースも見られます。このようなケースではトラブルに発展する場合もあるため、自社の業務フローに応じて、正しい判断をしなければなりません。
休憩時間として賃金を支払わなくてよいのは、その時間を労働者が自由利用できる場合のみなので、注意が必要です。場所や過ごし方について、業務に対応させるための一定の拘束がある場合は、業務のために待機させているとみなされ、手待時間になる可能性があります。

研修・教育訓練の受講時間

業務後の研修や教育訓練は、業務上参加を義務付けられているか、自由参加とされているかが判断のポイントになります。参加が義務付けられている場合は、労働時間として賃金を支払わなければなりません。また、自由参加と謳っていても、その研修に参加しなければ業務に差し支えるような場合は、労働時間としなければならない可能性があります。自分が担当する業務が、事前に先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ遂行できない場合、その業務見学は労働時間にあたります。

就業ルールへの記載方法

出社時間は抽象的な表現で記載する

明確に10分前出勤を就業ルールに記載してしまうと、義務付けたことになるため、その分の賃金や時間外手当を支払わなければなりません。もちろん、従業員全員が10分前出勤をすることに業務上の必要性があるならば、本来の始業時刻を10分早く設定することも検討するべきでしょう。
しかし、単に円滑な業務の開始を推奨したいという程度であれば、「出社は始業時刻に速やかに業務を開始できるよう余裕をもって行うものとする」というように、抽象的な表現で記載することが望ましいでしょう。このとき、明確な時間を規定したり、強制力が発生したりするような書き方は避け、あくまでも自社で働く心構えの一つとして、従業員が自発的に少し早めに出勤すること促す内容にすることが大切です。

就業ルール記載後の注意点

従業員に少し早めの出社を促す職場ルールの設定は違法ではありませんが、このようなルールの設定後に、余裕をもって出社しなかった従業員がいても、評価を低くしたり、懲戒処分をしたりすることは避けましょう。このような懲罰的な対応を行った場合は、企業側から始業時刻前の出社を強制されたものとして、労働時間と判断されるからです。また、従業員にとって不利益な処分はなくても、口頭で注意する場合も同様に注意が必要です。
日頃から社長や役員が率先して早めに出社する姿を見せることで、従業員にも余裕をもった出社をする意識を芽生えさせるのが良いでしょう。

まとめ

「10分前出勤を心がける」という考え方は、かつてはビジネスマナーとして紹介されていたこともあり、現在も多くの人が美徳のように考える傾向があります。たしかに、勤務開始時刻よりも早めに出社している従業員は、やる気があるように見え、評価を得やすいでしょう。しかし、このような考え方を強制することは、従業員の労働時間を不当に延長させ、賃金を支払わないという違法行為に繋がる可能性があります。そのため、「10分前出勤」をよしとする考え方が、自身には染みついていると自覚する管理職の人は、安易に勤務開始時刻前の出社を部下に勧めることで、暗に強制したことにならないよう注意が必要です。労働基準法は労働者を守るための法律だという意識を高く持ち、適正な労働時間で業務を行えるようにしましょう

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