新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、短時間休業で雇用調整補助金の申請が可能になりました。特例措置の拡充に伴い要件が緩和され、就業規則に記載されている内容であれば申請することができます。今回は短時間休業の定義や休憩時間の取り扱い、特例措置によって拡充された短時間休業の例など解説します。
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新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の縮小を余儀なくされた企業は多いでしょう。しかし、従業員を解雇したり、無賃金のまま休業させ続けたりすれば、経済社会への打撃はより大きなものになってしまいます。そこで、企業が雇用を維持するために、雇用調整(休業)を実施した場合は、雇用調整助成金によって休業手当などの一部が助成されることになっています。支給対象は休業手当だけでなく、事業主が従業員を出向させることで雇用を維持した場合も含まれます。
また、長引く流行拡大に対応するための特例措置が講じられており、保証内容が大幅に拡充されました。まず、上限額及び助成率は引き上げが実施され、1人1日15,000円を上限額として従業員へ支払う休業手当などのうち最大10/10が助成されます。さらに、短時間休業の場合でも適用条件が緩和され助成金をより活用しやすくなりました。なお、この特例措置は緊急対応期間である2020年4月1日から2021年4月30日までの賃金計算期間が対象です。助成金の申請の手続きはハローワークもしくは都道府県労働局が窓口を担当しており、緊急対応期間中の特例として計画届の提出は不要です。申請様式やマニュアルなどは厚生労働省の公式ホームページなどに掲載されていますので、詳しくは確認してみましょう。
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短時間休業の定義
短時間休業とは、1日の定められた所定労働時間のうち、一部を休業することを指します。この短時間休業ですが、事業所に勤めるすべての従業員が同時に休業する必要があるという要件が特例措置により緩和され、適用範囲が拡大しました。特例措置では、担当・部署・部門・役職・職種・勤務体制・シフト制などにより行われる、1時間以上の短時間休業に対しても適用されます。これにより、飲食業や宿泊業など一斉での休業が難しい多くの業種でも利用しやすくなり、助成金を申請できる企業の幅が大きく広がりました。
短時間休業中の休憩時間の取り扱い
短時間休業に休憩が含まれる場合、休業時間は、休憩時間を除外した就業時間で計算を行います。例えば、通常であれば9時から18時まで勤務し、昼休憩を1時間取得する従業員を、12時に退勤させた場合、休業時間は13時から18時の5時間です。休憩時間の定義ですが、従業員が労働から離れることを権利として保障されている時間で、途中付与・一斉付与・自由利用の3つの原則があります。つまり、休憩時間中は労働の義務がないため労働時間には含まれず、休業の時間としても休憩時間はカウントされません。判断に迷いがちな休憩時間の取り扱いですが、休業時間には含まれませんので注意しましょう。
特例措置によって拡充された短時間休業の例
シフト制の職場
シフト制とは、出勤時間や出勤日が週によって異なり、勤務日や休日が決まっていない働き方です。コンビニエンスストアやカスタマーセンターなど、シフト制が採用されている職場は多くあります。さらに、お客様や従業員との接触する回数を削減でき、通勤ラッシュを回避できるメリットからも、コロナ対策としてシフト制を導入し始める企業も増えています。特例措置で一斉休業という条件が取り外されたことにより、シフト制における短時間での休業にも助成金が適用されるようになりました。例えば、新型コロナウイルスの影響で営業時間の短縮などによりシフトが削減されてしまった従業員に対して助成金の申請が可能です。
部署ごとに働き方が異なる企業
部署や部門ごとに働き方が違う企業も多くあります。例えば、工場を稼働させている製造業であれば、管理部門と製造ラインでは勤務体制が異なる場合が多いでしょう。また、新型コロナウイルスの影響で一部の部門で業績が落ち込んでしまったケースもあります。特例措置ではそのような状況に対応して、工場での製造部門など一部門のみの短時間休業を申請することができます。全従業員が一斉休業する必要性がないので、一部の従業員の勤務時間の調整をすることが可能です。
常時配置が必要な従業員がいる職種
宿泊業や24時間営業をしている業種では、従業員の常時配置が必要です。このような職種では、以前は、一斉休業という助成金を申請するための条件を満たせませんでした。しかし、特例措置で条件緩和されたことにより、常時配置が必要な従業員以外の従業員を短時間休業させる際も、助成金が適用できるようになりました。
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まとめ
企業は、従業員を雇い入れる以上は、従業員とその家族が安定した生活を送るために、一定の責任を果たす必要があります。新型コロナウイルスの感染拡大により多くの企業が打撃を受けていますが、現在のような苦境には必ず夜明けが訪れます。そのときを企業と従業員にとって、より良い形で迎えるためには、苦しい時こそ従業員の雇用や賃金を守る努力が必要です。
雇用調整助成金の特例措置は、労働時間の調整や休業手当の支払いなどで苦労している多くの企業を支援すべく実施されています。より広い範囲の従業員に補償ができるよう、積極的な活用を検討しましょう。