アセスメントセンターとは、管理職候補者のマネジメント能力を客観的に評価する手法を指します。アセスメントセンターを導入することで、公平な評価が可能となり、管理職としての活躍を予測しやすくなります。一方、導入や運用に時間とコストがかかることが課題として挙げられます。導入手順は、評価項目の設定、演習の設計、評価者の選定、シミュレーションの実施、結果の検証・フィードバックといったステップで構成されます。今回は、導入するメリット・デメリット、導入手順について解説します。
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マネジメント能力を客観的に評価する
アセスメントセンター(Assessment Center)とは、職務場面において個人の資質や能力がどのように発揮されるのかを測定し、管理職候補者の実践的なマネジメント能力を客観的に評価する人材アセスメント手法の一つです。具体的には、管理職候補者に対して実際の職務場面を想定したビジネスシミュレーションを実施し、演習中の立ち居振る舞いや言動を専門の担当者が評価し、管理職候補として相応しい能力や要件を満たしているかを判断します。ビジネスシミュレーションに基づき客観的に評価するため、求められる能力や要件に対する現状や課題を可視化することが可能です。
評価を行うのは「アセッサー」
アセスメントセンターは、以下の3つの要素で構成されています。
- シミュレーション
- ディメンション
- アセッサー
シミュレーションは前述のビジネスシミュレーションを指し、実際の職務場面を想定した複数のシミュレーションを組み合わせた演習プログラムです。ディメンションは、管理職候補者に求める能力要件や評価指標を定めた評価項目を指します。アセッサーは、専門的な知識を有する評価者です。管理職候補者はビジネスシミュレーションに則って演習を行い、アセッサーがディメンションに沿ってスコアリングし、候補者が管理職に相応しいかどうかを評価します。
演習方法の種類
アセスメントセンターにおけるシミュレーションには、以下のような演習があります。
- インバスケット演習
- 方針立案演習
- 面談演習
- グループ討論演習
- プレゼンテーション演習
インバスケット演習はタスクの優先順位をつけてなにをすべきか意思決定をする演習、方針立案演習は将来の動向を予測し経営上重要な方針を立案する演習、面談演習は部下役のアセッサーと面談し理性と感情の両面から問題解決を図る演習、グループ討論演習は混沌とした場で意見を発信して他者の意見を引き出し合意を形成する演習、プレゼンテーション演習はテーマを設定し提案発表を実施する演習です。
アセスメントセンターのメリット・デメリット
メリット1:評価の客観性と公平性が増す
アセスメントセンターを導入することで、管理者に求められるマネジメント能力を客観的に評価できます。従来の人事考課は、職場の上司が日常的に部下を観察することで評価するのが一般的です。そのため、評価者である上司の主観が入り込んでしまったり、評価者によって意見がぶれてしまったり、一般社員としての業績のみに基づき評価してしまったりする課題がありました。結果としてマネージャーとしての適性がない社員を管理職に登用してしまうケースも散見されましたが、アセスメントセンターを導入すればそのような属人的な視点が排除されるため、評価の客観性と公平性が増すというメリットがあります。
メリット2:能力開発につながる
アセスメントセンターにおけるビジネスシミュレーションでは、管理職候補者は課題解決のプロセスや管理職に求められる能力を主体的に学ぶことが可能です。面談演習やグループ討論演習では、他者とのディスカッションをとおして自分自身を振り返り、アセッサーからのフィードバックによって自身の置かれた状況やあるべき姿を再認識できます。管理職候補として見込みのある人材が気付きを得ることで、さらに積極的に自己啓発に励む可能性もあるでしょう。ビジネスシミュレーションがきっかけとなり、さらなる能力開発が期待できるのもアセスメントセンターの大きなメリットです。
メリット3:将来予測ができる
一般的な業務に対する評価だけでは、管理職候補者がマネージャーになったときどのような活躍を見せるのかを判断することは難しいでしょう。例えば、一般業務の業績を評価し管理職に抜擢したものの、マネジメント能力が伴わずに思うような結果を得られないケースもあります。一方、アセスメントセンターでは、マネージャーになった際の振る舞いを事前に確認することが可能です。一般的な人事考課が現職に対する評価であるのに対し、アセスメントセンターは将来のポジションに対する評価という違いもあります。ビジネスシミュレーションによってある程度将来予測ができるのも、アセスメントセンターのメリットです。
デメリット:導入にはコストと時間を要する
メリットの大きいアセスメントセンターですが、導入にはコストと時間を要する点が課題です。例えば、自社で評価する場合は管理職候補者にもアセッサーにも所定の給与を支払っているため、別途手当などは必要ありません。しかし、外部のアセスメントセンターに評価を依頼する場合は、業務委託の費用が必要です。また、管理職候補者の業務調整や外部機関との日程調整など、さまざまな場面で時間を要する可能性があります。アセスメントセンターは公平公正な評価を実現できる反面、導入にはコストと時間を要するということを認識しておきましょう。
アセスメントセンターの導入手順
手順1:評価基準を明確にする
アセスメントセンターを導入する場合、まずは評価基準となるディメンションを明確にしましょう。ディメンションは評価項目を指し、会社によって管理職に求める能力要件や評価指標は異なります。例えば、積極的なコミュニケーションを重視するケースや、緻密な計画性を重視する場合もあるでしょう。これから会社を牽引する人材に求める要件を整理し、評価基準を明確化することが重要です。
手順2:演習方法とアセッサーを決定する
評価基準が決まったら、演習方法を決めてください。ビジネスシミュレーションには前述のとおり、インバスケット演習・面談演習・グループ討論演習などがあります。演習方法を決める際は、実施する難易度も決めておきましょう。自社でアセスメントセンターを導入する場合は、アセッサーを選定することも重要です。ただし、客観的な評価を実現するには、アセッサーの訓練も必要不可欠となります。自社で選定するのが難しい場合は、外部のアセッサーに依頼するのも一つの方法です。
手順3:演習の実施
シミュレーション・ディメンション・アセッサーが決まったら、実際に演習を実施してください。ビジネスシミュレーションは、全候補者を対象に、1日で実施するのが一般的です。ただし、対象者が多い場合や評価項目が多岐にわたる場合は、数日にわけて実施するケースもあります。対象者がもれなく演習に参加できるよう、事前に業務調整や時間調整を徹底しておくことが重要です。
手順4:アセッサーによる評価・検証
ビジネスシミュレーションが滞りなく終了したら、アセッサーの意見を集約して最終的な評価を作成します。客観的かつ公平公正な評価を実現するには、評価項目であるディメンションを明確化し、どのような観点で評価するのか、どのような点を評価するのかを、明確にしておくことが重要です。評価が確定したら、候補者に対しフィードバックを実施します。フィードバックでは各自の強みや弱みが明確になるため、今後のキャリアにとって非常に重要なプロセスです。
まとめ
今回はアセスメントセンターについて解説しました。アセスメントセンターとは、管理職候補者の実践的なマネジメント能力を客観的に評価する人材アセスメント手法の一つです。従来属人的になりがちだった人事考課ですが、アセスメントセンターを導入すれば公平公正な評価を実現できます。メリット・デメリットを把握した上で、アセスメントセンターの導入を検討してみましょう。