
越境学習とは、従業員が自組織を離れ、異業種や地域活動など普段の業務環境とは異なる場で学ぶ取り組みを指します。多様な価値観やスキルに触れることで、視野拡大やイノベーション創出、人材育成に効果があります。一方で、学びが業務に還元されないリスクもあるため、受け入れ側の支援や目的の明確化が重要です。今回は、越境学習の導入メリットや実施時の注意点などについて解説します。
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越境学習の目的
越境学習は、あえて自身の所属する組織から離れ、異なる環境での学びを通じて視野を広げることを目的とした学習方法です。所属組織の枠を越え、スタートアップやNPO、地域コミュニティなど異なる文化を持つ場で業務に関わることで、新たな視点からスキルや知見、気づきを習得します。また、他者と協働しながら「自分とは何者か」を見つめ直し、アイデンティティを再構築するきっかけにもなるでしょう。
越境学習を実施する背景
近年、新規事業開発や事業変革を担う人材の育成が重要になってきました。従来のOJTや社内研修だけでは、こうした人材を育てるには限界があります。現場感覚の不足や、社外人材との協業経験の少なさが課題となる中で、そのような実績や経験を積む方法として「越境学習」に注目が集まっているのです。また、地域側も企業人材との対話や新たな視点を求めており、企業と地域がともに学び合う場づくりが必要とされています。こうした状況を踏まえると、越境学習は企業と地域、双方の課題を解決へと導く有効なアプローチの一つになると考えられます。
越境学習の実施方法
越境学習を企業として導入する場合は、まず部門やチーム単位で試験的に始めるのが効果的と言えます。小規模な取り組みから成果を生み出すことで、社内の理解が進み、全社的な展開にも繋げやすくなるでしょう。また、導入を進める際には、経営層や人事の関心に応じた説明が重要です。例えば、エンゲージメント向上やDX推進など、組織課題に直結する効果を具体的に示すことで、越境学習の価値がより伝わりやすくなります。
越境学習を導入するメリット
企業内のイノベーション創出
国内企業が直面していると言われる行き詰まり感の背景には、長期にわたる経済の停滞や、従来型の人材育成方法に限界があるからと言われています。特に大企業では、イノベーションを担える人材の不足が課題となっており、社内だけの経験に閉じてしまう傾向も見られるようです。こうした中、越境学習によって異なる価値観や組織文化に触れ、時には葛藤を通じて新しい視点を得ることが、企業内での変革のきっかけとなるかもしれません。勤務先以外での経験が少ない従業員にとっても、越境学習はスキルや思考の枠を広げる良い機会となるでしょう。結果として、新たな商品やサービスを生み出す力が育ち、イノベーション創出につながる可能性が高まります。
新たな視点・価値観の共有
越境学習を通じて、新たな視点や価値観に触れられます。越境学習を終えた社員がその経験を自社の新サービス開発に活かすことで、従来とは異なる発想や迅速なアイディア創出が可能になるでしょう。また、自己の強みや持ち味に気づき、それを日常業務で活かす機会が増えることも期待されます。さらに、多様な関係者を巻き込み、全社視点で物事を考えるなど、リーダーシップの芽生えにも繋がります。
従業員のキャリア形成を促進
越境学習を行うと、慣れ親しんだ職場では見落としがちな性質も、異なる価値観や文化の中に身を置くことで、自分自身の強みや特性に客観的に気づくきっかけを得ることがあります。こうした気づきは、自律的なキャリア形成を後押しし、将来の方向性を考えるうえで重要な手がかりとなるでしょう。実際に、ある企業では他社の研修に社員を派遣した結果、越境学習者のマインドセットが変化し、制度化に至った事例もあります。キャリアの選択肢を広げる機会として、越境学習は有効な手段となるかもしれません。
越境学習を実施する際の注意点
実施の目的を明確化する
越境学習を実施する際は、組織として「なぜ行うのか」「どのような変化を期待するのか」といった目的を明確にしておく必要があります。越境先で得られた価値観や経験は、学習者本人にとって大きな刺激となりますが、それを組織側が受け止め、活かせる環境が整っていなければ効果は限定的です。また、個人のキャリアビジョンと越境先の方針、送り出す企業の狙いが一致しているかも重要なポイントです。
越境中の従業員を定期的にサポートする
越境学習を効果的に実施するには、越境中も従業員を支える仕組みが重要です。たとえば、越境経験者が事前相談会を開き、学び方をアドバイスすることで、経験の少ない学習者にとっても不安を軽減できます。また、越境後も定期的な意見交換の場を設け、得た知見の社内活用を促すと、より学習効果が高まります。経験者による声かけやフォローが、挑戦を後押しする心理的な支えにもなるでしょう。
フィードバックを社内で共有する
越境学習を通じた気づきや経験は、できるだけ社内で共有することが重要です。体験を語ることで、他の社員にも主体性の大切さが伝わり、前向きな行動変化を促すきっかけになります。また、越境経験者が社内にコミュニティを持つことで、学びを相互に共有し、帰任後も組織変革に取り組む動きが継続しやすくなります。制度を使わなくても行動は変えられるという意識が広がれば、企業全体の活性化にもつながるでしょう。
まとめ
越境学習は、視野の拡大やイノベーション創出、人材育成に効果的です。導入には目的を明確にし、越境中の支援や学びの社内共有を徹底することが重要です。越境学習は単なる経験にとどまらず、変化を起こし人材を育てる土台となるでしょう。
