キャリアオーナーシップとは、従業員が自分のキャリアを自らの責任で管理し、積極的に育てていくという考え方やアプローチを指します。従業員が自分のキャリアに責任を持つことで、仕事に対するモチベーションや満足度が高まり、業務へのコミットメントが強化されます。また、従業員が主体的に学ぶ姿勢を持つことで、スキルや知識が向上し、企業全体の能力が高まります。キャリアオーナーシップを促進するために、キャリア研修や社内制度の整備などを実施しましょう。
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個人が主体性を持ってキャリア形成を行うこと
冒頭でも述べた通り、従業員一人ひとりが自らの責任でキャリアを管理し、主体性を持ってキャリア形成を行っていく、という考え方やアプローチがキャリアオーナーシップです。従来は終身雇用や年功序列のもと、企業主導で従業員のキャリアを形成していくことが当たり前でした。しかし、働き方の多様化や雇用の流動化に伴い、個人主導によるキャリア形成の必要性が高まっています。企業や組織にとっても、従業員一人ひとりがキャリア形成の必要性を認識し、主体的に行動に移すことで、さらなる人材の成長が期待できるのもメリットです。
キャリアオーナーシップが注目を集める背景
キャリアオーナシップが注目を集める背景には、終身雇用を前提とした年功序列の崩壊および、人事評価制度における成果主義の台頭が挙げられます。従来は経営戦略に基づき、企業主導で従業員のキャリア形成を促すのが当たり前でした。しかし、変化の激しい「VUCA時代」の現代においては、将来を的確に予測するのは非常に難しいのも事実です。このような時代背景において、人材の利活用を喫緊の課題と捉えている企業も少なくありません。目まぐるしく変化するビジネス環境を生き抜くため、人的資本を重視する企業が増えた結果、注目を集めているのが、従業員の自律性を高めるキャリアオーナーシップという考え方です。
日本におけるキャリアオーナーシップの現状
このような背景から、我が国日本においても先進企業を中心に、キャリア形成に対する考え方が変わりつつあります。しかし、2020年に一般社団法人日本経済団体連合会が実施した「人材育成に関するアンケート調査」によると、キャリア形成に向けた取り組みにおいて、「会社主導で社員のキャリア形成を行っている」と回答した企業が74.1%だったのに対し、「自律的にキャリア形成を行っている」と回答した企業は22.9%に留まりました。一方、キャリア形成に向けた今後の方針については、「自律性を重視」が62.9%、「会社主導が基本」が35.9%となっています。多くの企業では、従業員を主体としたキャリアオーナーシップの取り組みを検討しているようです。
キャリアオーナーシップのメリット
従業員のモチベーションが高まる
キャリアオーナーシップによって自身のキャリアを主体的に捉えられるようになると、仕事の意義が明確になり、従業員のモチベーションが向上します。今まで漫然と取り組んできた仕事も、キャリアオーナシップを強く意識することで、キャリア形成に必要なミッションであると捉えることが可能です。中長期的なビジョンで仕事に取り組む従業員は改善意欲や問題意識も高く、業務の改善や成果の実現につながるケースも少なくありません。個々の従業員がキャリアオーナーシップを持つことでチームのモチベーションが高まり、組織の生産性も向上します。
従業員のスキルや知識が向上する
終身雇用・年功序列に基づく企業主導のキャリア形成では、戦略的に必要性の高いスキルや知識を優先して身に付けさせるのが一般的です。しかし、キャリアオーナーシップに基づく個人主導のキャリア形成においては、企業が求めるスキルや知識だけでなく、将来のキャリアプランを見据えた幅広いスキル・知識を主体的に習得できます。前述の通り、キャリアオーナーシップを持った従業員はモチベーションも高いため、日々の業務を通してさまざまなスキル・知識を吸収することが可能です。従業員の主体的な取り組みを後押しする環境が根付けば、生産性が向上して組織の活性化にもつながります。
組織の柔軟性が高まり対応力が向上する
従業員の主体的な行動をサポートする取り組みは、組織の持続的な成長や発展にも欠かせません。「VUCA時代」の現代においては、目まぐるしい変化への対応が求められます。幅広いスキルや知識を持った従業員が自律的に動けるようになれば、市場の変化に素早く対応することが可能です。自律的な従業員が増えれば当然組織の柔軟性が高まるため、企業の対応力が向上します。新たなニーズをキャッチアップして変化の激しいビジネス環境を生き抜くためには、キャリアオーナーシップによってキャリア自律を促すことが重要です。
キャリアオーナーシップの支援方法
研修や面談によるキャリア意識の醸成
従業員が積極的にキャリアオーナーシップを持つには、社内外の研修や定期的な面談によってキャリア意識を醸成することが重要です。キャリア研修やキャリアカウンセリングを受けることは、従業員一人ひとりがこれまでのキャリアを整理し、将来の目標を見定め、目標の達成に向けたプロセスを考える基礎となります。また、キャリア形成の専門家であるキャリアカウンセラーによる面談は、仕事上のキャリアプランに関する相談だけでなく、ライフステージの変化に伴い直面する課題の解決や改善にも効果的です。
支援制度による自己実現機会の創出
従業員の主体的な行動をサポートする支援制度を構築し、自己実現機会を創出することも、キャリアオーナーシップの獲得に効果的です。例えば、キャリア形成や自己啓発につながる書籍の購入やセミナーへの参加、語学スクールや資格予備校への通学などに対し、学習支援手当や補助金制度を導入する方法などが考えられます。インターネットが普及した現代では、従業員にアカウントを与えて、自由にeラーニングを受けられる環境を整えている企業も増えてきました。
柔軟な人事制度の導入
キャリアオーナシップの定着を目指すには、希望するキャリアの実現に向けて従業員が主体的に行動できる環境を構築する必要があります。従業員の主体的な行動を促すには、柔軟な人事制度が必要です。具体的な取り組みとして、社内公募制度や社内FA制度、社会人インターンシップ制度などを導入する企業も増えてきました。従業員の知見を広げるためには、副業を解禁するのも効果的かもしれません。副業以外にも、他社留学ともいわれる越境学習を推進する方法もあります。
まとめ
今回はキャリアオーナシップについて解説しました。キャリアオーナシップとは、個人が自分の責任でキャリアを管理し、主体的にキャリア形成を行っていくという考え方やアプローチです。従来の終身雇用や年功序列が崩壊し、成果主義が台頭した現在、キャリア自律をした人材が求められています。変化の激しい「VUCA時代」を生き抜くためには、キャリアオーナーシップによるキャリア自律の促進が必要です。