
企業内大学とは、企業が従業員向けに設立する教育制度を指します。長期的なスキル育成や経営戦略に沿った人材育成を目的とし、従業員の能力向上や次世代リーダーの育成、採用アピールにもつながります。一方で、運営コストや講師選定の難しさといった課題もあります。導入には目的と対象の明確化、カリキュラム設計、運営体制の整備、定期的な評価と改善が重要です。今回は、企業内大学を活用するメリットや作り方などについて解説します。
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人材育成のプラットフォームのひとつ
企業内大学は、自社の理念やビジョンに沿って従業員を育成する、社内向けの教育制度です。リーダー候補の育成やスキル向上、組織文化の浸透を目的に設けられ、単なる研修制度とは異なり、その名の通り大学のようなカリキュラムを持つのが特徴です。自社の課題に合わせて講座を提供でき、従業員同士が教え合い、学び合う風土づくりにもつながります。従業員の自発的な学びを促し、企業全体の底上げを図るための、人材育成のプラットフォームといえるでしょう。
企業内大学が注目される背景
近年、働き方の変化やオンライン研修の普及により、外部研修がうまく活用できないケースも見られます。また、社内のコミュニケーションが減っていることに不安を感じている企業もあるでしょう。こうした背景から、自社の方針や風土に合った教育を社内で行える「企業内大学」が注目されるようになりました。従業員同士が教え合うことで、コミュニケーションを取りながら学び合う風土を育てることが可能です。さらに、キャリア形成ややる気の向上にもなるでしょう。日本では2000年以降に広まり始め、今では中小企業でも導入事例が増えています。人材育成を経営の一部として捉える動きは、今後さらに加速するかもしれません。
社内研修制度との違い
企業内大学は、単なるスキル習得の制度という側面だけではなく、経営理念の浸透や将来のリーダー育成を見据えた、長期的な学びの場です。一般的な社内研修と違い、自分のキャリアに合わせて必要な講座を選び、主体的に学ぶことができます。また、カリキュラムも企業戦略に合わせて設計されることが多く、リーダーシップや専門知識など、深い学びが得られるようになっています。一方、社内研修は業務に直結したスキルを短期間で身につけるためのものです。両者にはそれぞれ役割がありますが、企業内大学は人材育成を中・長期的な成長戦略の一部として位置づけている点が大きな特徴といえるでしょう。
企業内大学を活用するメリット
従業員自身の意思で参加できる
企業内大学では、従業員が自分のキャリアや学びたい分野に合わせて、自由にカリキュラムを選べる仕組みが整っています。従来の社内研修のように、上司や人事部が内容や日程を決める受け身のスタイルとは大きく異なり、自ら学ぶ姿勢を大切にしている点が特徴です。従業員が自ら選んで学ぶ機会を持てるようになることで、自主的に知識を習得しようとする姿勢を高められることも、メリットになるでしょう。
意欲のある従業員のキャリア形成を促進
企業の成長に欠かせない人材育成では、単なるスキルアップだけでなく、従業員のキャリア形成支援が重要になっています。次世代リーダーの育成や、経営理念の浸透といった企業の課題と並行して、従業員が将来のキャリアを自ら設計する力を育む学習機会が提供されます。この仕組みがあることで、従業員は自分の将来について考えながら学ぶことに取り組めるようになるでしょう。
企業独自のプログラムを構築できる
研修の対象や時間、場所を自由に設定できる仕組みがあれば、自社の課題やビジョンに合った独自のカリキュラムを構築することが可能です。これにより、リーダーシップ開発や専門技術の習得、顧客サービスの向上など、幅広いテーマに対応できるのも特徴です。加えて、社内の従業員が講師を担当すれば、外部講師に依頼するよりも学習コストを抑えられます。こうしたオリジナルのプログラムは他社との差別化につながり、競争力を高めることができるでしょう。例えば、ある企業では従業員自らが講師を務めることで、現場の経験を活かした実践的な研修を行い、高い効果を得ています。このように、自社ならではの学習環境の整備は、企業の成長にとって非常に重要な要素となります。
企業内大学の構築方法
人材育成プラットフォームとしての目的を明確化
企業内大学を導入する際は、何よりも目的を明確にすることが重要です。「他社も始めているから」「今の流行だから」といった理由だけで進めてしまうと、期待した効果は得られないかもしれません。導入の前には、自社の現状や課題をしっかりと整理し、企業内大学がどのように課題解決に役立つのかを見極めることが求められます。
受講する従業員の選定
受講者を決めるにあたっては、まず社内にどのような教育ニーズがあるかを把握することが重要です。従業員一人ひとりのスキルや知識のレベルを把握し、不足している分野や強化すべきポイントを明らかにしましょう。ニーズに基づいたカリキュラムを組み立てることで、内容に無駄がなくなり、効果的な育成につながります。
プログラムの設計・運用体制の構築
設計面では、会社や従業員の現状を把握し、育成課題や目標を明確にしましょう。企業内大学の役割やコンセプトを定め、会社の既存制度と連携させることが重要です。運用面では、従来の研修にとらわれず、目的に応じた柔軟な形式を採用しましょう。対話形式や動画配信など、プログラムの内容によってより効果的な手法を選ぶ意識が求められます。また、社内講師の活用に際しては、業務との両立が可能となるよう、上司との調整や支援体制の整備が欠かせません。そして、「誰に・何を・どうしたいか」を明確にしておくことで主軸のぶれを防ぎ、特に「何を」については、会社の特徴や考え方がよくわかる学びの内容を持たせることがポイントになります。
実施とフィードバック
企業内大学の人材育成は、すぐに数字で成果を示すことが難しいため、長期的な視点での継続が求められます。しかし、効果を測らずに続けるだけでは意味が薄れる可能性があります。企業内大学の目的達成度を把握するために、従業員満足度や離職率などの指標を活用し、変化を定期的に確認しましょう。加えて、プログラムごとに受講後のアンケートを実施し、参加者やその上司の声を反映させることも大切です。こうした取り組みが質の向上につながります。
まとめ
企業内大学は、企業独自の理念や課題に沿って人材を育成することを目的としています。従業員に主体的な学びを促し、長期的な成長や組織力の強化を図ることができます。導入には目的の明確化、柔軟な運用体制、継続的な見直しが不可欠となるため、自社に合った設計で、効果的な人材育成を実現しましょう。
