事業場外みなし労働時間制をテレワークに導入する判断基準は?

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コロナ禍でテレワークが普及し、在宅勤務者の労働時間管理についてさまざまな意見が取り沙汰されています。その中で、企業の労働時間の把握と算定義務を免除する事業場外みなし労働時間制を導入しているケースがあります。今回は、労働基準法上の労働時間の定義や就業規則の変更の必要性、事業場外みなし労働時間制の適用基準、労働時間の管理方法などを解説します。

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労働基準法上の労働時間の定義

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。労働のための拘束時間とも言い換えられ、使用者からの命令により労働者が仕事に従事する時間です。主として命じられている仕事を行う業務時間に加えて、以下のような時間が、労働時間になります。

  • 就業を命じられた仕事の準備をする時間
  • 業務終了後に会社で行った事後処理の時間
  • 仕事から離れられない待機時間
  • 参加が必要な研修や教育訓練の受講時間
  • 会社の指示により仕事に必要な学習をした時間
  • 着用を義務付けられた所定のユニフォームへ着替える時間
  • 業務後の清掃時間、昼休みの電話当番

※通勤時間や休憩時間は会社からの拘束がないため、労働時間には該当しません。

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制とは、労働者が仕事の全部もしくは一部を社外で行い、使用者が労働者の労働時間を正確に把握することが難しい場合に、前もって決定された時間を働いたとものとして扱える制度です。使用者には、社員の労働時間を管理する義務がありますが、その例外として認められた制度です。事業場外みなし労働時間制を導入すれば、労働時間の計算の負担を軽減できます。この制度において、基本的な労働時間の考え方は以下のようになります。

  • 原則として所定の時間を労働したものとみなす
  • その業務を行うにあたり、所定の勤務時間を超過する場合は、当該業務の遂行に通常必要な時間、もしくは労使協定で定められた時間を労働したものとみなす

たとえば、所定労働時間が8時間の労働者に事業場外みなし労働時間制を適用した場合、社外でどのような働き方をしているのか把握できなくても、8時間勤務したとみなされます。また、その業務を遂行するために、通常9時間かかる場合は、一日の所定労働時間を9時間と定めます。この場合、もし業務が6時間で遂行できたとしても、使用者は9時間分の賃金を支払う義務があります。

導入の際に必要な手続き

就業規則の変更

就業規則に事業場外みなし労働時間制に関する規定がない場合には、就業規則の変更が必要です。労働者が10人未満の事業場では必ずしも就業規則が制定されていませんので、その場合は労働契約書にその旨を記載し、労働条件としての根拠とすることが必要です。

労使協定の締結

事業場外労働のみなし労働時間制については、労使協定は必須の要件となってはいません。ただし、その業務に必要な労働時間については、業務の実態を踏まえて労使でよく協議したうえで決めることが大切です。そのため、できる限り労使協定を結ぶことが奨励されています。また、労使協定で定める時間が法定労働時間(8時間)を超える場合は、労使協定を所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

事業場外みなし労働時間制の適用基準

事業場外みなし労働時間制は、「社外で仕事を行っている」場合に、「使用者による指揮監督が行えず、勤務時間の算出が困難である」ことが適用基準です。そのため、社外で業務を行っていたとしても、使用者の指揮監督が可能であれば、適用することはできません。つまり、基本在宅で仕事をするテレワークや、一日中外回りの営業職、事務所に出社しないバスなどの運転手であっても、会社からメールや電話で具体的な指示ができたり、パソコンの使用履歴、通話記録、日報などから労働時間を把握できたりする場合は、「使用者の指揮監督が行えず勤務時間の算出が困難である」という適用基準を満たせないケースもあります。

テレワークの場合の事業外みなし労働時間制の導入基準

テレワークは社外での業務になりますが、多くの場合、インターネットを通じて使用者からある程度の指揮監督をすることができ、労働時間の算定も可能です。そのため、必ずしも事業場外みなし労働時間制を導入する必要はないとされています。テレワークにおいて事業外みなし労働時間制を導入するには、以下の基準を満たす必要があります。

  • 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること

労働者が仕事を専用とする個室を確保していない場合は、勤務時間帯と日常生活時間帯が混在してしまう可能性が高いため、労働時間の算定が困難になります。反対に、社外であっても仕事だけに集中できる環境があり、仕事時間と日常生活時間帯をはっきりと分けることができる場合には、労働時間が算定できるため、事業場外みなし労働時間制は適用されません。

  • 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと

「常時通信可能な状態」とは、インターネットを通じて、使用者がテレワークをする労働者に対し、具体的な指示を随時行うことが可能であり、労働者がそれに即応できる状態のことをいいます。テレワークをする労働者が、パソコン等の情報通信機器から離れることが自由であったり、業務の中で通信ができない状況が発生したりする場合は、この基準に該当します。

  • 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

使用者が、労働者に対し、業務の目的、目標、期限等の基本的な事項を支持することやその変更を指示することが無い場合には、この基準に該当します。

このように、テレワークでは、常に事業場外みなし労働時間制を適用できる訳ではないことに注意が必要です。

労働時間の管理方法

事業場外みなし労働時間制を導入していても、使用者には、労働者の生命、身体および健康を危険から保護する安全配慮義務があるため、労働者の労働時間を把握しなくて良い訳ではありません。使用者は、把握している「労働時間の状況」をもとに、必要に応じて、業務内容の改善を行うほか、所定労働時間や労使協定を見直すなどして、労働時間 を適切に設定することが大切です。
また、実際の労働時間を把握することができる場合は、労働時間の算定がしがたいとはいえないため、みなし労働時間を適用することができません。そのため、導入前によく検討することが大切でしょう。

休憩時間

テレワークの場合、自宅で一人仕事をすることになりますので、つい自分で休憩時間を早めに切り上げたり、昼食をとりながら仕事を続けたりすることが考えられます。しかし、労使協定や就業規則などで定められている所定の休憩時間を取るように徹底しましょう。

休日、深夜の労働について

テレワークをする労働者からは、「一人集中できる休日や深夜時間帯に、自発的に仕事をしたい」という声もあるようです。しかし、事業場外みなし労働時間制を導入していても、休日や深夜の労働をした場合は割増賃金の支払いが必要になります。労使協定や就業規則などで、特別の指示または事前に許可した場合を除き、休日労働および深夜労働に従事してはいけない旨を規定しましょう。

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まとめ

コロナ禍で影響を受けた企業の中には、テレワークの導入によって事業が継続できたというケースもあるでしょう。しかし、テレワークでの労働は、働いている姿を目視できないために、労働時間の管理や正確な評価がしにくいというデメリットがあります。
事業場外みなし労働時間制は、このような社外での労働時間の管理義務を免れる制度と解釈する人も多いですが、実際には導入するためには高いハードルがあり、職種も限られます。また、導入後も、使用者は労働者の労働時間や健康状態の管理を怠って良い訳ではありません。事業場外みなし労働時間制の導入を検討する際は、適用基準を満たしているか確認し、運用について社内でよく検討することが大切でしょう。

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