降格人事とは、従業員の役職や職位を下げる人事のことです。従業員に明らかな不祥事がない場合でも、成績不振や部署の異動の際にも役職が降格する場合があります。降格処分は従業員のモチベーションの低下につながりますし、処分が不適切な場合は法的なトラブルにも発展しかねます。そのため、降格人事は人事評価の中でも特に慎重に行う必要があります。今回は降格人事の概要と降格人事を行う理由、降格処分の手順や注意点、違法となるケースについて解説します。
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降格人事の概要
降格人事とは、従業員の地位や役職を上位から下位へ引き下げる人事です。例えば、部長が課長に降格されるケースなどがあります。また、降格人事は下位の職位に変更する「降職」と、従業員の職能資格や給与等級を引き下げる「降格」の2種類に分類できます。
降格人事を行う理由
降格人事が行われる代表的な理由は以下のとおりです。
- 社内規則への違反行為
- ハラスメント
- 配置転換
- 能力不足
犯罪行為はもちろん、繰り返される遅刻や無断欠勤などの問題行動も降格人事の理由となる場合があります。また、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントといった行為も問題とされ、降格の理由となるでしょう。ほかにも、管理職などのポジションによってはマネジメント能力不足から降格させられたり、本人に問題がなくても配置転換によって降格人事が発生したりするケースもあります。
降格人事を行う際の注意点
降格人事に関する項目が就業規則に明記されているかを確認しましょう。降格人事には、就業規則に沿った判断が求められます。根拠のない降格人事は認められないため、企業としての適切なルール整備が必要です。くれぐれも、人事権や懲戒権の濫用には注意しましょう。例えば、一度の遅刻や小さなミスなどで直ちに降格人事を適用することは、人事権や懲戒権の濫用に該当すると考えられます。
降格人事を行う手順
事実関係を正しく把握する
まず、事実関係を客観的に確認して、状況を正しく把握しましょう。例えば、規律に違反するような言動が見られると報告を受けた場合は、具体的にどのような問題が発生しているのか詳しい調査が必要です。報告を受けた内容と事実に差異がないかを確認し、問題の発生頻度などを調べます。降格人事の可能性がある従業員だけでなく、周囲へのヒアリングも実施して客観的に事実関係を確認しましょう。
降格方法を考える
懲戒処分と人事異動、どちらの降格方法が適切か検討しましょう。まず、懲戒処分では勤怠不良や重大な業務違反などが根拠となります。懲戒処分では訴訟へと発展するリスクや、基準を満たさず有効性が認められないケースも少なくありません。一方、人事異動においては個人の成績不良など能力不足に起因する場合が多くみられます。
弁明や改善の機会を設ける
降格人事の対象となる従業員に対しては、降格方法に応じて弁明や改善を試みる機会を設けましょう。懲戒処分として降格を行う場合には有効性が厳格に判断されるため、従業員本人に対して弁明の機会を設けることが必須となります。一方、人事異動による降格を行う場合には、弁明の機会の設置は必須ではありません。しかし、企業側が指導や注意を行って従業員に改善を促し、経過を観察する機会を設定することが望ましいとされています。
減給の可否を検討する
降格人事に伴い、従業員の給与を下げるかどうかを検討しましょう。減給を行う際には、役職手当や基本給など減給となる対象を慎重に検討します。また、降格人事と減給の関連付けが就業規則に記載されているかも重要となるでしょう。就業規則の内容に不足があると、減給が無効になる可能性があります。事実関係を整理し、該当する従業員の弁明内容なども踏まえて、減給の可否を決定しましょう。
従業員に通達する
降格対象の従業員に向けて状況を正しく理解してもらうために、降格内容を通知しましょう。従業員にとって降格人事が行われるという事実は、精神的ダメージやストレスにつながる場合があります。直前に言い渡すのではなく、ある程度の時間的なゆとりを持たせて伝えるようにしましょう。通達方法としては個別面談の実施や、降格処分通知書が推奨されます。
降格人事が違法となるケース
降格人事の理由がない
人事権に裁量があったとしても、理由なく降格人事は行えません。企業は降格人事に対して客観的に誰もが納得できる理由を説明する必要があります。また公平性も重視され、ほかの従業員との扱いが不公平・不平等となる降格も要注意です。
降格人事の根拠がない
根拠に乏しい降格人事は認められない傾向があります。人事権は労働契約によって企業に与えられる権利であり、多くは雇用契約書や就業規則に根拠となる考え方が記載されています。まずは降格人事が適正に行われ要件を満たしているかどうかを、根拠規定で確認しましょう。雇用契約書や就業規則に根拠の記載がなかったり、規定に違反していたりする降格人事は違法と判断される可能性が高くなります。
降格人事に不当な目的がある
降格人事における不当な目的や動機の代表例は以下のとおりです。
- 嫌がらせ目的で降格した
- 事実を捏造して降格した
- パワーハラスメントで降格した
上記の理由による降格人事は、人事権の濫用に該当します。動機や目的が不当な人事権の行使は違法になります。降格人事を検討する際は、正当な目的や理由があるかの検証が必要です。
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まとめ
降格人事は慎重な対応が求められる行為です。従業員の仕事とプライベートに対して大きな影響をもたらすため、降格人事を行う際には明確な理由が求められます。降格人事に問題があれば該当の従業員をはじめ、ほかの従業員にも不信感を与えてしまいかねません。客観的な視点を忘れずに、誰が見ても納得できる降格人事を行いましょう。