退職面談とは、従業員が退職を決意した際に、企業側がその理由や背景を理解するために行う面談のことです。従業員が退職を選んだ理由を聞き、企業の問題点を把握することで、離職率低下につながります。退職面談は、基本的に従業員にとってネガティブな面談であるため、従業員が話しやすい雰囲気づくりを心がけましょう。
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退職の理由や背景を理解するために行う面談
退職面談とは、従業員が退職を申し出た際、企業がその理由や背景を理解するために行う面談です。「強引に引き止められるのではないか」「叱責されるのではないか」などと考え、従業員にとってはネガティブな面談ですが、企業にとっては抱える問題点を把握するための大切な機会となっています。そもそも、退職はキャリアアップのための転職や独立といったポジティブな理由だけでなく、会社に対する不平不満が引き金となって退職という結論に至るケースも少なくありません。従業員が抱いている不満を知ることで、会社が解決すべき課題を把握することが重要です。
退職面談が注目を集める背景
退職面談が注目を集める背景には、終身雇用の崩壊と雇用の流動化があります。実際、総務省統計局が四半期ごとに公表している「労働力調査」によると、2023年第三四半期の時点で、転職者が325万人で6期連続、転職希望者が1,035万人で10期連続の増加を記録しました。つまり、転職市場における雇用の流動性は非常に高まっており、人材の確保に苦労している企業も少なくありません。このような時代背景において、優秀な人材を確保するには、企業が抱える問題点を把握し、さらなる人材流出を防ぐ必要があります。また、近年注目を集めるアルムナイ採用、いわゆる出戻り採用を取り入れるためにも、退職者との関係構築は非常に重要です。
退職面談の重要性
人材獲得競争が激化するなか、アルムナイ採用の重要性は日増しに高まっています。アルムナイ採用とは、転職や独立など、何らかの理由で一旦自社を退職した元従業員を再雇用する採用手法です。即戦力が期待できる、採用ミスマッチが起きにくい、採用コストを削減できるなどのメリットから、アルムナイ採用は近年大きな注目を集めています。実際、株式会社パーソル総合研究所の調査によると、アルムナイ経済圏の市場規模は、年間1兆1,500億円に上ることが明らかになりました。アルムナイ採用を導入するには、退職者との関係構築が非常に重要です。しかし、退職時の手続きで不快な思いをする退職者も少なくありません。アルムナイ採用を円滑に進めるポイントが退職面談です。退職者にとっても企業にとっても退職面談を効果的に実施することで、良好な関係を構築できます。
退職面談を実施する目的
退職を選んだ理由を引き出す
退職面談を実施する最初の目的は、退職という選択肢を選んだ理由を引き出すことです。前章でも述べた通り、従業員が退職を選択する場合、キャリアアップのための転職や独立といった、ポジティブな理由ばかりではありません。企業や組織に対する不平不満が蓄積した結果、退職を選択する従業員がいるのも事実です。退職面談を組織の改善に活かすには、退職を希望した従業員の本音を引き出す必要があります。退職者の率直な意見を聞くことで、企業が抱える問題を知ることが可能です。
企業が抱える問題点を把握する
退職面談のもう一つの目的は、企業が抱える問題点を把握することです。前述の通り、企業や組織に対する不平不満から、退職を選択する従業員も少なくありません。退職理由は従業員によってさまざまですが、人間関係の悪化や長時間労働の常態化など、職場環境や労務管理に何らかの問題があった可能性があります。退職希望者にヒアリングをすることで、現場で起こっている問題をあぶり出すことが可能です。ただし、退職面談で情報を収集する場合は、客観的な視点から判断しなければなりません。話しやすい雰囲気を作り、バイアスのない環境で率直な意見を引き出すことが重要です。
離職率を下げる
退職面接の最終的な目的は、離職率を下げることです。人材獲得競争が激しさを増す現代において、人材流出の連鎖は絶対に避けなければなりません。退職面談を有意義なものにするには、フィードバックの仕組み作りが重要です。例えば、面談で得られた情報をレポートにまとめて管理システムに蓄積する、面談のレポートをマネジメント層に共有して経営課題とする、などの方法が挙げられます。退職者から引き出した情報は必ずフィードバックし、マネジメント活動に活かしてください。マネジメント手法や人事評価制度を適宜見直すことで、従業員のエンゲージメントが向上し、離職率の低下が期待できます。
退職面談を実施する際の注意点
退職の理由を無理に聞き出さない
前章では、退職面談を実施する最初の目的は、退職理由を引き出すことであると述べました。しかし、退職の理由を無理に聞き出すのはご法度です。そもそも、従業員にとって退職面談はネガティブなものであり、強引に引き止められたり叱責されたりするのを恐れて、本音で話せないケースも少なくありません。退職面談では「辞めたいと思いはじめたのはいつ頃からですか?」といった切り口で質問を投げかけ、従業員の思いを受け止めてください。辞めたいと思いはじめた時期を把握できたら、そのとき何が起こったのか、どのように感じたのかなどを丁寧に掘り下げ、退職に至った経緯を分析するのがポイントです。
上司ではなく一人の人間として話を聞く
退職面談で率直な意見を引き出すには、上司ではなく一人の人間として話を聞くことも重要です。上司と部下という立場で面談をすると、萎縮して本音で話せない従業員も少なくありません。退職の希望を聞いたら、上司という立場を一旦捨てて、一人の人間として話をしてみてください。そもそも、退職という選択肢を選んだということは、何らかの問題や不平不満を抱えているということです。退職面談で話をするなかで、解決策を見出せるかもしれません。ただし、問題の解決に固執するのではなく、相手に寄り添って親身に話を聞く姿勢が大切です。面談では意見を述べたり否定をしたりするのでなく、あくまで受け止めの姿勢で臨みましょう。
最終的な結論は本人に任せる
そして、もっとも大切なことが、最終的な結論は本人に任せるということです。退職面談を実施した結果、思いとどまるのか意思は変わらないのかはわかりません。ここで注意しなければならないのが、退職面談の目的です。退職希望者を引き止めることでも、退職を促すことでもありません。退職面談の目的は、従業員の本音を引き出し、後悔のない選択をサポートすることです。例えば、まだ迷っている気持ちがある場合は、結論を急かさないようにしましょう。結果として退職という選択肢を選んだとしても、良好な関係性を構築できるはずです。
まとめ
今回は退職面談について解説しました。退職面談とは、従業員が退職を申し出た際、企業がその理由や背景を理解するために行う面談です。雇用が流動化するなか、人材の確保に苦労している企業も少なくありません。離職率を少しでも改善するには、退職面談によって退職の理由を引き出し、企業が抱える問題を把握する必要があります。また、近年注目を集めるアルムナイ採用を推進するためにも、退職者と良好な関係を構築する退職面談が重要です。