法定雇用率の段階的な引き上げ方針決定!障害者雇用の現状を解説

2023年5月9日


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2023年1月、厚生労働省は障害者法定雇用率の段階的な引き上げ方針を発表し、それに伴い雇用義務のある企業の従業員数基準が変更される予定です。障害者の雇用率は年々向上しているものの、法定雇用率を達成している企業の割合は半数以下です。この改正により、対象となる企業は障害者雇用に取り組む必要があります。今回は、2023年1月に決定された法定雇用率の引き上げの背景や目的、変更点、そして障害者雇用の現状について解説します。

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障害者法定雇用率について整理しよう

2023年時点で、民間企業における障害者法定雇用率は2.3%です。つまり、43.5人以上雇用している企業は障害者を1人以上雇用する必要があります。法定雇用率は5年ごとに、障害者雇用率の推移を勘定して設定されています。障害者雇用率制度にもとづく雇用義務がなされない場合は行政指導を受けるのはもちろん、企業名が公表されてしまうこともあり、企業のイメージダウンにつながりかねません。
また、常用労働者が100人以上いる企業において、実雇用率が法定雇用率を下回る場合は納付金を支払う義務があります。納められた納付金は実雇用率が法定雇用率を上回っている企業に調整金として還元されます。

そもそも障害者雇用率制度とは

障害者雇用率制度とは、障害を持つ人も一般労働者と同じ水準で雇用の機会を得るために設けられた制度です。企業には法定雇用率以上の障害者を雇用する義務が発生します。
以前は法定雇用率に含まれる障害者は、身体障害者と知的障害者に限られていましたが、2018年から精神障害者が追加されました。雇用義務対象となる障害は3種類となり、同時に法定雇用率も変更されています。

障害者法定雇用率の引き上げの背景

政府では、すべての国民が障害の有無にかかわらず、ともに生きていける共生社会の実現に向けてさまざまな取り組みを行っています。障害者雇用率の引き上げもその取り組みのひとつです。共生社会において障害者が企業に貢献するためには、障害者一人ひとりに合わせた雇用を管理する必要があります。
ハローワークにおける障害者の年間就職件数は9年連続で増加傾向にありますが、中小企業では法定雇用義務の履行が進まないのが現状です。企業規模が小さいほど、障害者雇用に課題を抱えている背景があります。

障害者の雇用義務発生の対象企業がとるべき対応とは

障害者雇用において自社の条件と実雇用率を確認し、雇用計画を立てましょう。実雇用率の算出方法は以下のとおりです。

  • 実雇用率=常用雇用で働く障害者数÷(常用雇用労働者+常用雇用短時間労働者×0.5)
  • 常用雇用短時間労働者は、1人を0.5人とカウントします。ちなみに特例子会社の場合、親会社とのあいだで実雇用率が通算できるなど例外が認めらえるケースもあります。

障害者法定雇用率の変更点

2023年から障害者雇用率を段階的に2.7%に引き上げられる

2023年に障害者雇用率が2.7%に引き上げられることが決まり、対応に困る企業が少なくありません。そこで企業が計画的に雇い入れできるよう、2023年は法定雇用率を2.3%に据え置き、2024年から2.5%、2026年から2.7%と段階的に引き上げられます。また、教育委員会を除く、国および地方公共団体については3.0%に設定しています。

2025年4月から除外率が引き下げられる

障害者の雇用が難しい企業に対して「常時雇用している労働者の総数」から除外率に相当する労働者分を差し引くことができる、除外率制度が設けられています。ノーマライゼーションの観点より、除外率制度は2004年に廃止が決定されましたが、しばらくは経過措置として業種ごとに除外率が設けられ、段階的に廃止に向けて引き下げられる予定です。具体的には2025年4月1日以降から、除外率が業種ごとに段階的に引き下げられます。ただし、現在の除外率が10%未満の業種においては適用されません。除外率による障害者雇用義務数の算出例は以下のとおりになります。

2023年における常用雇用労働者が1,000人の企業の雇用義務数を算出したい場合

  • 除外率40%の場合……(1,000人-400人)×2.3%=13人

実雇用率の算定方法についての変更

障害特性を考慮した障害者雇用を推進するため、実雇用率の算定方法に関しての変更点が2点あります。ひとつは、短時間労働の精神障害者のみ適用している特例措置の延長で、2023年4月以降の継続が決まりました。通常、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の障害者は「0.5人」と算定することになっていますが、精神障害者は「1人」として算定できます。
もうひとつは、精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者を対象に、週所定労働時間が10時間以上20時間未満でも「0.5人」とカウントして算定に含めることができるようになりました。

障害者雇用のための事業主支援を強化する

実雇用率が法定雇用率を上回る企業に対して、障害者雇用調整金や報奨金が支給されます。また、障害者雇用するうえで企業が受けられる助成金はさまざまです。2023年6月より開始される助成金を紹介します。

  • 労働移動支援助成金
  • 中途採用等支援助成金
  • トライアル雇用助成金(一般トライアルコース以外)
  • 地域雇用開発助成金
  • 人材確保等支援助成金
  • 通年雇用助成金
  • キャリアアップ助成金(正社員化コース以外)
  • 両立支援等助成金
  • 人材開発支援助成金

雇用関係助成金を申請する方法として電子申請があります。電子申請のメリットとして、いつでも申請が可能なほかに、一度入力した情報を繰り返し反映可能なので事務負担軽減にもつながります。また、障害者雇用関係の助成金拡充のほかに、2024年4月以降、雇入れや雇用継続を図るために必要な雇用管理に関する相談援助を原則無料で受けられるようになります。

障害者雇用は今後どうなる?

厚生労働省の公表した2022年の「障害者雇用状況」では、民間企業で雇用されている障害者数は前年より1万6,172人多い61万3,958人となり、19年連続で過去最高を更新しました。障害種別にみると、身体障害者35万7,767.5人・知的障害者14万6,426人・精神障害者10万9,764.5人となっており、特に精神障害者が前年比11.9%と最も伸び率が高いです。

障害者雇用の現状

障害者雇用率引き上げに伴い、企業への対応強化を求める一方で、障害者雇用が上手くいかないという採用担当者の声も少なくありません。前述のとおり、企業で働く障害者は2022年の時点で61万人余りと増え続けていますが、雇用率を達成した企業は48%にとどまっているのが現状です。こうした状況から厚生労働省は、助成金拡充を行うなど障害者雇用を進める企業の支援に力を入れています。

障害者雇用の今後

これまでの障害者雇用は、雇用率を達成するために数を確保する「量」の時代でした。
しかし、障害者雇用が進むなか、これからは障害に合わせた業務内容で企業収益への貢献を目指す「質」の時代への転換が予想されます。また、今後は体調や気持ちに波がある精神障害者の人たちの働く場をどう広げるかが課題となります。調子に波があっても仕事がしやすいフォロー体制など、企業のきめ細やかな対応が求められていくでしょう。

まとめ

2023年1月、障害者雇用率が段階的に引き上げられることが決定しました。障害者雇用率の引き上げには、政府が共生社会の実現に向け、積極的に障害者雇用に取り組んでいるという背景があります。また、障害者雇用は数合わせで雇用する「量」の時代から「質」の時代に変化しつつあり、企業にはさまざまな対応が求められています。障害者雇用を進めるための支援制度などを活用しつつ、障害者の働きやすい職場づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。

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