従業員がうつ病で休職するときの正しい対応とは?給付金や復職する際の注意点などを解説します。

2022年12月13日

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近年、社会環境の変化や長時間の労働のストレスによりうつ病で休職する従業員が増えています。うつ病で休職する従業員に対して企業が対応を誤ると、訴訟トラブルに発展する可能性があります。そのようなトラブルを避けるためにも、正しい対応と注意点についてしっかりと把握しておきましょう。今回は、うつ病で休職する従業員に対する正しい対応方法、従業員へ案内すべき給付金、うつ病での休職から復職する従業員に対する注意点について解説します。

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うつ病で休職する従業員への正しい対応方法

診断書を提出してもらう

従業員から上司へ主治医による診断書(病気休業診断書)を提出してもらいます。診断書に必要な記載項目は以下のとおりです。

  • 病名
  • 働くことができない理由
  • 働くことができないと判断する期間

上司は、人事労務管理担当者に診断書が提出されたことを伝えます。

就業規則と有給休暇の日数を確認する

原則として、うつ病などのメンタルヘルス不調による休職は就業規則に基づいて行います。就業規則における以下の7つの項目を必ず確認しましょう。

  • 休職開始事由
  • 休職期間
  • 休職期間中の給与
  • 社会保険料の負担
  • 休職期間中の会社との連絡
  • 復職する場合の手続き
  • 復職できない場合の手続き

ノーワークノーペイを原則としている場合、休職期間中は無給になるため、まずは有給休暇を消化して体調が戻るか様子を見てから休職する方が従業員の安心につながるでしょう。会社側でも従業員の有給休暇の日数を確認して有給休暇の取得を提案することが大切です。

休職制度について説明する

従業員が休職中に安心して療養に専念できるように、休職制度について説明する必要があります。

  • 休職期間および延長の有無
  • 休職期間中の賃金の取り扱い
  • 復職に向けての手続き
  • 復職が難しいと判断されるときの解雇事由について

特に賃金の取り扱いや解雇事由については、トラブルを避けるためにもしっかり説明しておきましょう。

引継ぎの段取りを決める

引継ぎを行う際は、休職する従業員の体調に応じて引継ぎを行うことと、引継ぎの必要が生じた理由について慎重に取り扱うこと、これら2点に注意して段取りを決めましょう。医師から休職を指示された従業員については、速やかに休職させなくてはなりません。休職の開始が遅くなることで病状が悪化して会社の責任が問われる可能性があるためです。担当していた業務の後任者を早急に決定し、要点を押さえて最小限の連絡で引継ぎができるようにしましょう。また、引継ぎを行う際は、本人の許可なく休職者がうつ病であることを共有しないように配慮します。

うつ病で休職する従業員へ案内すべき給付金

傷病手当金

傷病手当金とは、病気やケガで働けない休職期間中に健康保険から支給される手当金です。以下の4つの条件を満たしていればうつ病でも傷病手当金を受給できることを従業員に説明しましょう。

  • うつ病の原因が仕事以外の事由であること
  • うつ病の療養のために仕事の継続が困難であること
  • 連続する3日間を含み、4日以上会社を欠勤したこと
  • 欠勤中に給料が支払われていないこと

なお仕事や通勤による病気やケガの場合、次に解説する「労災保険」の対象となるため、仕事以外の事由である必要があります。傷病手当金で受給できる金額は、「支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額」を30日で割った金額の2/3(1日当たりの金額)となります。

労災保険

労災保険とは、従業員が業務上または通勤による病気やケガ、障害を負った場合に従業員やその遺族に保険給付を行う制度です。うつ病などの精神障害の労災認定には以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  • 精神障害の発病前のおおむね6か月間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  • 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

個体側要因とは、精神障害の既往歴やアルコール依存状況などです。個体側要因がある場合は、それが発病の原因かどうか慎重に判断します。うつ病が労災と認められた場合、休業の4日目から、給付基礎日額の6割の額が労災保険の休業補償給付として、2割の額が休業特別支給金として給付されます。

自立支援医療制度

自立支援医療制度は、心身の障害の治療を行うための医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。うつ病の場合、継続的に精神科への通院が必要となりますが、その都度発生する医療費は休職者にとって大きな負担となります。自立支援医療制度の利用によって、医療費の自己負担額が軽減できることを説明し、居住地の自治体の障害福祉課の窓口に相談して申請するように従業員へ案内しましょう。

うつ病の休職から復職する従業員に対する注意点

職場復帰が可能か慎重に見極める

従業員が職場復帰できるかどうかについて必要な情報を収集し、さまざまな視点から評価を行い総合的に判断する必要があります。情報収集と評価の内容は以下のとおりです。

  • 従業員の職場復帰に対する意思の確認
  • 産業医による主治医からの意見収集
  • 診断書の内容だけでは判断しづらい場合、産業医が従業員の同意を得たうえで必要な内容について主治医の意見を確認します。

  • 従業員の状態等の評価
  • 治療状況や病状の回復状況、業務遂行能力、今後の就業に関する従業員の考え、家族の意見なども復職の判断材料にします。

  • 職場環境等の評価
  • 業務や職場との適合性、作業管理、作業環境、職場側による準備状況などを確認します。

従業員から職場復帰を希望する医師を伝えられたとしても、職場復帰が可能とは限りません。情報や評価をもとに、本当に職場復帰が可能か慎重に見極めましょう。

試し出勤を検討する

職場復帰を段階的に進めるためにおすすめの制度として「試し出勤制度」があります。試し出勤とは、職場復帰前に一定期間継続して試験的に職場に出勤することです。具体例として以下が挙げられます。

  • 模擬出勤
  • 職場復帰前に、通常の勤務時間と同じ時間帯に短時間または通常の勤務時間で、デイケアで模擬的な軽作業やグループミーティングを行ったり、図書館などで時間を過ごしたりします。

  • 通勤訓練
  • 自宅から職場の近くまで通常の出勤経路で移動し、職場近くで一定時間過ごした後に帰宅します。

  • 試し出勤
  • 職場復帰の判断を目的として、職場で一定期間継続して出勤します。

なお、トラブルを防ぐためにも、試し出勤中に災害が発生した場合の対応や賃金の取り扱いについては一定のルールを定めておかなければなりません。

復職後のフォローアップを忘れない

職場復帰後は、管理監督者による観察と支援に加え、産業保健スタッフによるフォローアップを実施します。

  • うつ病の再発や新しい課題発生などの有無の確認
  • 勤務状況および業務遂行能力の評価
  • 治療状況の確認
  • 作業環境・方法や、労働時間・人事労務管理など、職場環境等の評価と改善
  • 職場復帰をする従業員を受け入れる職場の管理監督者や同僚に、過度の負担がかかることを防ぐための配慮

「職場復帰日」「管理監督者による就業上の配慮」「人事労務管理上の対応」「産業医等による医学的見地からみた意見」「フォローアップ方法」などをまとめた職場復帰支援プランを作成している場合は、計画通りに実施されているか確認し、随時評価と見直しを行いましょう。

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まとめ

うつ病は外見上判断が難しい病気でもあるため、診断書をもとに休職を判断します。従業員が休職を開始する前に就業規則や有給日数を確認し、休職制度についてしっかり説明することが大切です。休職する従業員の経済的負担も考慮し、利用できる給付金についても案内しましょう。従業員の復職については産業医の意見や従業員の状態、職場環境など総合的な観点から判断します。試し出勤を検討することで、職場復帰の可否の最終的な判断材料になります。復職後は管理監督者や同僚、産業医と連携して従業員のフォローアップを努めましょう。

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