
アウトプレースメントとは、企業が人員整理の際に従業員の再就職を支援する仕組みを指します。キャリア相談や求人紹介、研修を通じて離職者の円滑な転職を後押しでき、企業は社会的責任の履行や訴訟リスク回避につながります。一方で、再就職先が見つからない可能性があるといったデメリットもあります。今回は、アウトプレースメントを導入するメリット・デメリットなどについて解説します。
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アウトプレースメント導入の目的
アウトプレースメントは、企業が人員削減を行う際、退職者の再就職支援を通じてトラブルを未然に防ぐことが目的です。十分な説明や配慮がないまま退職を進めると、従業員との信頼関係が損なわれ、最悪の場合は訴訟に発展するおそれがあります。こうしたリスクを回避し、企業の存続と円滑な運営を実現するために、再就職支援サービスの導入が検討されるのです。
アウトプレースメント導入の背景
アウトプレースメントを導入することで、企業は社会的責任を果たすことができます。企業の都合による解雇に際し、再就職支援やメンタルヘルスケアなどを行わずに退職させることは、企業側の都合による無責任な行為と受け取られ、従業員や世間からの信頼や企業イメージの低下につながりかねません。従業員のキャリアを支援することで、企業イメージの向上と責任ある対応が可能になるでしょう。
アウトプレースメントの利用条件
アウトプレースメントを導入するには、主に以下3つの条件を満たす必要があります。
- 企業が人材紹介会社と契約していること
アウトプレースメントの契約は、求職者ではなく企業と人材紹介会社の間で結ばれます。そのため、再就職支援サービスを提供するには、企業が紹介会社と正式に契約を締結していることが前提です。 - 会社都合の退職で、企業から提案があること
この制度は、企業の人員整理など会社都合による退職が前提です。自己都合退職の場合には基本的に適用されません。さらに、アウトプレースメントは企業が費用を負担するため、対象者への提案も企業側から行われる必要があります。 - 労働者本人が利用を希望していること
再就職支援は労働者の意思に基づくものであり、本人の同意がなければ利用することはできません。企業から提案があったとしても、強制的に受けさせることはできないため、本人の希望が必須となります。
アウトプレースメント導入のメリット・デメリット
メリット1:従業員の円満な早期退職が期待できる
1つ目のメリットは、会社都合の退職に対する従業員の不満や不安を軽減し、円満な早期退職につなげやすくなることです。企業が再就職支援を提供することで、訴訟リスクや労働紛争の回避にもつながります。また、従業員にとっても、手厚いサポートを受けながら新たなキャリアを築くことができるため、心理的負担を軽減し、スムーズな転職を実現しやすくなるでしょう。
メリット2:企業イメージを守る
2つ目のメリットは、従業員への誠実な対応を企業は示し、企業イメージの悪化を防ぐ効果が期待できることです。経営悪化などによるやむを得ないリストラであっても、退職までのサポートが不十分だった場合「無責任な会社」といったネガティブな印象を与えかねません。退職者への再就職支援を通して、社会的責任を果たす姿勢を示すことが、社内外からの信頼維持になるでしょう。
デメリット1:コストが高額になる傾向がある
アウトプレースメントは、従業員1人あたり50~100万円程度の費用が発生する傾向があり、導入には一定のコストがかかるため、リストラ人数が増えるほど企業の経済的負担は大きくなります。コスト削減を目的とした人員整理で、かえって出費が増える可能性もあるため、費用対効果を十分に検討する必要があります。
デメリット2:従業員に同意を得られない可能性がある
アウトプレースメントはまだ認知度が高くない仕組みであるため、制度に馴染みのない従業員から利用を拒否されるかもしれません。また、制度を理解したうえで、あえて利用しないという判断をする可能性も考えられます。そのため、コストをかけて導入しても活用されず、運用次第では結果的に効果を得られない可能性がある点は事前に考慮すべきでしょう。
アウトプレースメント実施の流れ
面談やカウンセリング
初期段階では、退職対象の従業員に対してアウトプレースメントの内容や支援方針について説明を行います。その後、本人の理解を得たうえで支援スケジュールを作成し、自己分析や目標設定を支援します。ワークシートの活用により、再就職に向けた心構えや方向性を明確にしていくのが一般的な流れです。
履歴書作成・面接などの指導
次のステップでは、履歴書や職務経歴書の作成に加え、面接対策などの指導を実施します。キャリアカウンセラーのサポートにより、書類作成の基本から選考を意識した効果的な表現まで学ぶことができるため、内定獲得の可能性が高まります。実践的な内容が中心となるため、再就職活動に向けた準備が着実に進められるでしょう。
フィードバックを得る
履歴書作成や面接指導の後は、キャリアカウンセラーによるフィードバックを通じて、改善点を明確にします。書類の表現や面接時の受け答えについて客観的な意見を得ることで、再就職活動の精度が高まり、自信を持って次の選考に臨めるでしょう。こうした継続的なサポートが、アウトプレースメントの大きな特長です。
企業紹介・情報提供
アウトプレースメント会社は、提携する転職エージェントを通じて再就職先候補の紹介やマッチングを行います。企業の特徴や求人条件、求められる人物像などを事前にリサーチし、従業員に対して詳しく情報提供を行うのが一般的です。採用条件の確認や交渉も代行されるため、退職から入社まで安心して進められ、転職に対する不安も軽減されるでしょう。
フォローアップ
アウトプレースメントでは、従業員が再就職した後もサポートが続きます。例えば、新しい職場に馴染めない、業務に不安があるといった相談に対し、キャリアカウンセラーが面談や助言を行います。こうした継続的な支援が、再就職後の不安を軽減しスムーズな職場定着となり、企業としても誠実な対応として評価されやすい取り組みといえるでしょう。
まとめ
アウトプレースメントは、企業が退職者の再就職を支援する仕組みです。円満な退職や社会的責任の果たし方として活用されることもありますが、費用負担や従業員の同意が得られないといった難しさもあるようです。導入にあたっては、目的や状況に応じて、慎重に検討していくことが求められるでしょう。
