営業などで外回りを行う職種では、始業の際に直接顧客先や作業現場に出向き、終業後は会社に戻らずに帰宅する、直行直帰という働き方がよく採用されます。直行直帰の場合、労働時間の管理は社員が管理監督者の指揮下に入ったかどうかを基準に行います。今回は、直行直帰の定義や、労働時間に含まれる場合と含まれない場合の例、労働時間の把握についての考え方、直行直帰の制度を導入する手順、直行直帰の際の労働時間の算出方法について紹介していきます。
労務管理に便利なクラウド型勤怠管理システムAKASHIの資料はこちら>>直行直帰の定義
直行直帰とは、会社に寄らず直接目的地へと出向き、仕事が終わっても会社に寄ることなく直接帰ることを指します。直行直帰を行うことが多いのは外回りの営業や出張などで、そのほかにもホームヘルパーやベビーシッター、家庭教師などの毎日異なる訪問先でサービスや作業を行う職種などが考えられます。
労働時間とは
直行直帰のどの部分が労働時間にあたるのかを考えるにあたっては、労働時間の定義を知っていることが重要です。労働時間の定義は労働基準法では明確に定められていませんが、行政解釈では、「労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間にあたる」とされています。つまり、使用者の指揮命令下にあるかどうかが、その時間が労働時間であるかどうかを決める基準となります。
直行直帰は労働時間に含まれる? 含まれない?
それでは、直行直帰はどの時間が労働時間に含まれ、どの時間が労働時間に含まれないのでしょうか。直行直帰の場合、使用者の指揮命令下にある状況というのは、社員が管理監督者の指揮命令下に入る状況を指します。そこで、社員が管理監督者の指揮下に入ったことを労働時間に含まれる基準として考えてみましょう。
労働時間に含まれる場合
- チームで集合して目的地に向かう場合
- 業務の目的地に直行する場合
集合場所で何かしらの業務を行ってから目的の現場に向かう場合、集合場所での業務開始から労働時間になります。また、チームの中に管理監督者がいて、集合した時点でその管理監督者の指揮命令下に入る場合は、その時点からが労働時間になります。
目的地に到着し、管理監督者の指揮命令下に入った時点からが労働時間になります。「管理監督者の指揮命令下に入った」とみなされるためには、以下の4つの条件が必要です。
- 集合が会社の指示であること
- 仕事のためのメンバーが集合し業務を開始したこと
- 管理監督者が具体的に指示命令を出している状態であること
- 集合してさらに移動するときはその間も準備作業等が行われていること
これらの条件がそろったとき、その時間が労働時間に含まれることになります。
そのほかにも、商談しながら昼食をとる場合や、直帰予定から急遽帰社命令が下ったときの出先から会社までの移動時間、取引先から別の取引先に移動する時間なども労働時間に含まれます。
労働時間に含まれない場合
- チームで集合して目的地に向かう場合
- 業務の目的地に直行する場合
チームで集合して目的地に向かう場合でも、そのチームの中に管理監督者がおらず、ただ集合して目的地に向かう場合は、集合場所から目的地への移動は労働時間には含まれません。
目的地に到着しても、管理監督者の指揮命令下に入っていなければ労働時間には含まれません。つまり、上記の4つの条件がそろっていなければ、その時間は労働時間に含まれないことになります。例えば、管理監督者がいても何も指示が出されていない場合や、直ちに仕事がスタートできない状態の時間は労働時間には含まれないことになります。
そのほかにも、外出中に私用で立ち寄った買い物や喫茶の時間、昼食時間、休憩時間は労働時間に含まれません。
労働時間の把握と事業外みなし労働時間制
直行直帰を認める場合も、原則として労働時間の把握は必要です。労働時間の把握は、業務遂行の裁量が小さい場合は容易であることが多いですが、業務遂行の裁量が大きい場合はしばしば大変困難となります。そのような際には、「事業場外みなし労働時間制」を適用することをおすすめします。この制度は、会社の外で仕事をする場合に、所定の時間労働したものとみなすという制度です。これを利用することで、実際の労働時間の算出が困難な場合の労働時間の計算が簡単になります。
直行直帰の制度を導入する方法
それでは、社員の直行直帰を認めるにあたり、どのようなシステムを作ればよいのでしょうか。おすすめの方法は、「直行・直帰届出書(直行・直帰申請書)」を導入することです。社員が直行直帰する場合、この届出書を記入してもらいます。そしてそれを管理者に提出してもらい、承認を受けます。届出書には、直行・直帰・直行直帰のいずれかを選択し、目的地への到着予定時刻とそこからの出発予定時刻、訪問の目的および行程等を記入してもらうようにしましょう。また、社員に対して、目的地に到着した時点で上司に連絡すること、直帰するときには出発時に上司に連絡すること、直行直帰の翌日には上司に業務内容および出先での業務時間の報告をすることを徹底します。
直行直帰の際の労働時間の算出方法
直行直帰を行う社員の労働時間を把握し、算出する際には、その時々の状況を考慮する必要があります。今回は原則的な算出方法をご紹介しますので、それぞれのシチュエーションに合わせてアレンジしてみてください。
まず、直行したときの始業時刻は、最初の訪問先への到着時間とし、直帰する時の終業時刻は最後の訪問先を出た時刻とします。そして、管理監督者の指揮命令下にあるかどうかを基準にして、社員からの連絡や報告を詳細に受けながら労働時間を把握するようにします。例えば、1日の行動計画が詳細にきまっている場合や、自社の関係者を訪問する場合、他社でのイベント参加等の場合は、あらかじめある程度の労働時間を見積もることができるため、それと社員の申告とを照らし合わせて労働時間を把握することができます。
一方、ルートセールスなど、どれだけ労働したかが把握できない場合には、「所定始業時刻に業務開始し所定終業時刻に業務を終了」と強制的に決めてしまう方法と、事業場外みなし労働時間制を導入する方法があります。前者の場合は、始業時刻と終業時刻から労働時間を算出し、後者の場合は、みなし時間で労働時間を計算します。ただし、事業場外みなし労働時間制を導入する際には、管理監督者が直行直帰する社員に対して事細かな指示命令をしたり、頻繁な報告・連絡を義務付けたりすることはできないので、その点のみ注意するようにしましょう。
まとめ
直行直帰をする場合、労働時間については「社員が管理監督者の指揮下に入ったかどうか」が基準になります。その基準に基づいて、直行・直帰届出書を活用しながら、労働時間を把握するようにしましょう。把握が困難な場合は、事業場外みなし労働時間制を適用することがおすすめです。労働時間の把握ができる場合は、社員の申告をもとに、客観的に労働時間の妥当性を判断しながら労働時間を算出するようにしましょう。
クラウド型勤怠管理システム「AKASHI」
勤怠管理システムを導入することで、効率的かつ確実に労働時間を管理することが可能となります。ソニービズネットワークス株式会社が提供するクラウド型勤怠管理システム「AKASHI」は、36協定設定、年休管理簿や労働時間の把握など、あらゆる法改正や複雑な就業ルールに対応する機能をフレキシブルに対応します。15年以上のノウハウを活かした充実のサポート体制で導入後も安心です。
今ならAKASHIのサービスを30日間無料でお試しいただける無料トライアルを実施していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。