働き方改革関連法では、要件を満たす労働者に対して、有給休暇の時季を指定して年5日以上取得させることが義務付けられました。それに伴い、もう一つ義務付けられたものが年次有給休暇管理簿の作成です。各事業場は有給休暇の時季と日数、基準日をまとめて保存しておかなくてはなりません。今回は、年次有給休暇管理簿の意味と記すべき内容、管理の対象となる要件、保存期間について説明していきます。
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2019年4月に行われた法改正にともない、年次有給休暇が10日以上発生する労働者を雇用しているすべての事業者に、年次有給休暇管理簿の作成が義務付けられました。年次有給休暇管理簿の作成は、企業内における有給休暇の取得状況を的確に把握し、年5日という有給休暇取得義務を高い割合で達成することが主な目的です。
法改正以前は、多くの企業が有給休暇の残日数で取得状況を判断していました。しかし、残日数の確認だけでは年度ごとの取得状況を正確に把握することは困難です。年次有給休暇管理簿の作成は、事業者の事務作業にかかる負担を軽減するとともに、労働者が有給休暇を申請する際に、取得状況をすぐ把握できるという利点が見込まれています。
年次有給休暇管理簿は、労働者名簿、または賃金台帳とあわせた調製も可能です(労働基準法第55条の2)。ただし、2ヶ所以上の事業拠点を持つ企業は、全ての事業拠点から年次有給休暇管理簿を随時確認できるような体制を整えておきましょう。労働基準監督署による査察を受けた際、必要に応じて有給休暇の取得状況を提示できないと、罰則を受ける可能性があります。
年次有給休暇管理簿は、パソコン上でデータとして管理しても問題はありません。紙媒体を用意しておくか、オンラインストレージサービスや社内ネットワークなどでデータの共有を行いましょう。
記すべき内容
年次有給休暇管理簿に記載が義務付けられているのは、基準日と日数、時季です。掲載作業は事業者が担当し、労働者ごとに個別で掲載、管理する形式が望ましいとされます。労働基準法第24条の7により、事業者は有給休暇を付与した時点で、基準日(第一および第二基準日を含む)、日数、時季を記載した年次有給休暇管理簿の作成を行わなくてはなりません。第一および第二基準日を含む各項目の説明は以下のとおりです。
基準日
基準日とは、有給休暇の取得権が発生した日のことです。労働基準法第39条では、雇い入れから6ヶ月後に最初の有給休暇を付与し、以降は1年ごとに基準日を更新すると規定しています。法定基準どおり、もしくは第一基準日から1年以内の基準日は第二基準日と呼称します(労働基準法第24条の5)。法定基準よりも前倒しで有給休暇を認めている場合は、付与日数が10日以上に到達した日付が第一基準日となります。
入社から6か月以内に10日未満の有給休暇を付与した場合は、取得数が10日に到達した時点を第一基準日として見なすことができます。ただし、労働者側の要望で有給休暇を付与した場合は、年5日の有給休暇取得義務から労働者が前倒しで取得した日数分を差し引く必要があります。
有給休暇の残日数がない、有効期限を超過したなどの理由で繰り越す有給休暇日数がない場合は、年次有給休暇管理簿に今年度の日付のみを記載します。前年度から繰り越す場合は、今年度、前年度分を両方とも記載する必要があります。
日数
日数とは、労働者が取得した有給休暇の日数のことです。事業者は、取得された有給休暇の日数を年次有給休暇管理簿に記載する義務があります。有給休暇は、取得期間が半日以上1日未満である場合、半日分として記載します。数時間単位での有給休暇取得は記載義務がなく、取得日数の一部として計上することはできません。なお、取得日数を数える上で取得事由に関する規定はありません。
時季
時季とは、実際に有給休暇を取得した日付を指します。実際に記載するときには、具体的な取得日を記載する必要があります。全休か半休かをあわせて表記する様式を採用すると、資料としての正確性を向上させられます。
管理の対象となる要件
事業者は、年次有給休暇を10日以上付与できる労働者を対象として、個別に年次有給休暇管理簿を用意し年5日の有給休暇を取得させることが労働基準法第39条第7項で規定されています。管理対象とする上で正規雇用者かどうか、管理監督者かどうかは不問であり、所定の条件を満たす労働者は一律に管理対象となります。
なお、労働基準法で定められた基準日より前に付与している場合は、付与日数が10日に到達した時点から管理対象となります。具体例として、入社当日に有給休暇を10日付与した場合、入社当日を基準日として労働者に年5日の有給休暇を取得させる法的義務が生じます。
保存期間
一度作成した年次有給休暇管理簿は、事業者が有給休暇を与えた期間および期間満了から3年間にわたって保存し続ける必要があります。有給休暇を取得しやすい社内体制を構築することが目的であり、帳簿の保存が目的ではありません。
なお、作成および保管を怠ったことに対する罰則は規定されていませんが、労働者へ適切に有給休暇を取得させていない事業者には罰則が科されることがあります。罰則が科され得る事例、および罰則内容は以下のとおりです。
- 年10日以上の有給休暇を付与するべき労働者に対して年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金を科されることがあります(労働基準法第39条第7項)
- 労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科されることがあります(労働基準法第39条、但し第7項を除く)
- 使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合には30万以下の罰金を科せられることがあります(労働基準法第89条)
罰則規定に関しては労働基準法第119条および120条に記載されています。労働基準法第39条に係る罰則については、対象となる労働者1人につき1件の違反として数えます。
まとめ
働き方改革関連法の改正により、年次有給休暇が10日を上回る労働者に対して事業者は、基準日から1年以内に5日の有給休暇の付与が義務付けられました。事業者は年次有給休暇管理簿の様式と必要性を把握し、労働者が適切な形で有給休暇を取得できる社内体制を構築しましょう。
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