会社側の都合で従業員を休業させた場合、休業手当を支払う必要があります。経営不振や業績悪化も会社側の都合とみなされ、直近では、新型コロナウイルスが原因の場合も休業手当の支払いが必要になるケースがあります。今回は、休業手当の定義や種類、休業手当の計算方法、休業補償との違い、新型コロナウイルスが理由で会社を休んだ際の休業手当の有無について解説していきます。
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休業手当とは、雇用側の都合で従業員を休業させたときに支給される手当であり、雇用側の都合で従業員を休業させた場合、従業員の最低限の生活を保障するために平均賃金の6割以上が支給されます。従来は経営悪化やストライキなどで適用されるのが一般的でしたが、現在は天災による自宅待機や帰宅などの指示にも適用されます。ただし、以下の期間は適用されません。
- 休業期間中の休日
- 代休日
- ロックアウト
就業規則で土日や祝日が休日と定められている場合、期間中の休日分の手当は発生しません。
就業規則で定められている土日や祝日などに労働した代わりに取得する「休日」であるため、上記同様に手当は発生しません。
正当な理由によって雇用側が従業員に労務提供を拒否し工場や店舗を閉鎖した場合、休日同様に手当は発生しません。
休業手当の種類
- 産前・産後・育児の休業
- 業務上の負傷・疾病による休業
- 介護休業
産前については、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性が休業した際に手当が支給されます。休業を希望する場合は、自ら申告しなければなりません。一方、産後は自己申告の必要はありません。産後8週間を経過していない女性に対して、雇用側は申告の有無にかかわらず休業させる義務があります。ただし、6週間経過後、医師の許可を受けた女性は再び就業することが可能です。産前・産後・育児中に受給できる手当は以下のとおりです。
1. 出産育児一時金(出産時)
2. 出産手当金(産前42日~産後56日まで)
3. 育児休業給付金(産後57日~子どもが1歳になる前日まで)
業務中に負傷したり病気になったりした場合、その治療のために休業すると、労災保険の「休業保障給付」を受給することができます。
家族が要介護状態にあり休業する場合は、雇用保険の「介護休業給付」を受給することができます。
休業手当の計算方法
休業手当は平均賃金の6割以上の額とされています。平均賃金は、基本的に「3ヶ月間の賃金の総額÷3か月間の総日数(暦日数)」で算出することができます。
「3ヶ月間の賃金の総額」は、交通費や歩合給、残業代、皆勤手当などのすべての賃金が対象です。ただし、以下については総額から控除することができます。
- 結婚手当や退職金など、臨時に支払われたもの
- 半年に一回の賞与など、3ヶ月を超える期間ごとに支払われるもの
- 労働協約で規定されていない現物給与
- 雇用側の都合で会社が休業した期間
- 業務上の負傷・疾病によって休業した期間
- 産前・産後・育児によって休業した期間
- 介護による休業期間
- 試用期間
「暦日数」は、土日や祝日などの休日を含めたカレンダー上の日数を指します。以下の期間は暦日数から引かなければなりません。
休業手当と休業補償の違い
休業補償とは
休業補償とは、業務上の負傷・疾病によって働けなくなった従業員に対して労災保険から支払われる補償を指します。一方、休業手当は、雇用側の理由で従業員に労働環境が与えられなくなった際に雇用者が支払う手当です。従って、前者は労災保険、後者は賃金という扱いになります。休業補償は、休業後4日目以降に労災保険から平均賃金の8割が支払われます。賃金ではないため、所得税は発生しません。これらの制度は名称こそ似ていますが、支給理由や支給元は全く異なります。
適用条件の違い
休業手当の適用条件は以下のとおりです。
- 雇用側の都合による休業
- 業務上の負傷・疾病による休業
- 産前・産後・育児による休業
- 介護による休業
- 天災などによる休業
- 業務上の負傷・疾病によって労働できない場合
- 労働したにもかかわらず賃金を受け取っていない場合
一方、休業補償の適用条件は以下になります。
新型コロナウイルスが原因で会社を休んだ場合
休業手当
新型コロナウイルスの感染によって会社を休んだ従業員に対し、雇用側は手当を支払う必要はありません。この場合の休業は、雇用側の都合ではないからです。一方、感染が疑われる従業員に雇用側の判断で休むように指示した場合は雇用側の都合になるため、手当を支払う必要があります。なお、緊急事態宣言によって義務付けられた休業の場合は不可抗力のため、原則として支払い義務はありません。
傷病手当金
新型コロナウイルスに感染して会社を休んだ従業員は、休業手当は支払われなくても、被用者保険に加入していれば傷病手当金の支給対象になる可能性があります。傷病手当の支給対象になれば、新型コロナウイルスの感染によって労働ができなくなった日から3日経過後、直近12ヶ月の平均賃金の3分の2が補償されます。従業員が支給対象となりうる場合、雇用側はその旨を従業員に伝えると良いでしょう。
まとめ
「新型コロナウイルスに感染したかもしれない」という理由で自主的に会社を休んだ場合、休業手当は支給されません。一方で、雇用主が休むようにと指示を出した場合は雇用側都合と判断され、雇用主には手当を支給する義務が生じます。ただし、これはあくまでも法律に則った規定であり、今回のような未曾有の事態に必ずしも当てはまるとは限りません。政府からの最新情報を随時確認し、臨機応変に対応する必要があると理解しておきましょう。