判例から見る、過労死事件が企業に与える影響

2016年12月2日

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2014年に過労死等防止対策推進法が成立しましたが、今なお過労死の発生は後を絶ちません。従業員の過労死が発生した場合、企業は多額の損害賠償義務を負う可能性があるとともに、企業イメージの悪化に伴う業績悪化の恐れもあるなど、過労死事件が企業に与える影響は非常に大きなものだといえます。

今回は、過去の判例等から、過労死事件が企業に与える影響について解説します。

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過労死とは

過労死等防止対策推進法では、「過労死等」について、下記のとおり定義しています。

  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  • 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

厚生労働省が公表した「過労死等の労災補償状況」によると、2015年度に労災認定された脳・心臓疾患による死亡件数は96件、精神障害による自殺(未遂も含む)件数は93件となっています。

政府は、将来的に過労死等をゼロにするため様々な取組を行っていますが、最近でも長時間労働等を背景とした過労自殺が報道されて世間の大きな話題になるなど、今なお過労死の発生は後を絶ちません。

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過労死の裁判例・事例

従業員の過労死が発生した場合、労災として認定されるだけでなく、裁判によって企業の民事上の責任が問われ、企業に多額の損害賠償責任が認められる可能性もあります。

以下では、企業や社会に大きなインパクトを与えた過労死事件の判例等を紹介します。

(1)「過労自殺」が初めて認められた最高裁判例

まず紹介するのは、大手広告代理店A社で起きた過労死事件の最高裁判例です。この判例は、「過労自殺」という概念が注目されるきっかけとなりました。

事案の概要
慢性的な長時間労働に従事していた大手広告代理店A社の新入社員がうつ病に罹患して自殺したことについて、遺族が会社に対して損害賠償を請求したもの。

裁判の結果
裁判所は、従業員が自殺したことについて、長時間労働によるうつ病の発症、うつ病罹患の結果としての自殺という因果関係を認めました。
また、死亡した従業員の上司は、その従業員が恒常的に長時間労働に従事していたことや、健康状態が悪化していたことを認識していながらも、その負担を軽減させるような措置を取らなかったとして、企業側の安全配慮義務違反を認めました。
この裁判では、最終的に、会社が遺族に対して約1億6,800万円を支払うという内容で和解が成立しています。

裁判のポイント
この判例は、業務とうつ病の発症および自殺についての因果関係を認め、企業側の民事上の損害賠償責任を認めた初めての最高裁判例として、高く注目を集めました。
過重労働に起因する過労自殺に対する企業責任のあり方について、多くの企業が考え直すきっかけとなった事件であるといえます。

(2)損害賠償をめぐり、企業の役員個人にも責任が認められた判例

続いて紹介するのは、居酒屋チェーンを運営するB社で起きた過労死事件の判例です。この判例は、過労死を生み出す制度を作り長時間労働を放置してきたとして、会社だけでなく役員個人にも賠償責任が認められたケースとして注目を集めました。

事案の概要
恒常的な長時間労働を行っていたB社の新入社員が、就寝中に急性心不全を起こして死亡したことにつき、遺族が会社と社長ら取締役4名に損害賠償を請求したもの。

裁判の結果
裁判所は、B社の賃金体系として初任給の額に月80時間分の残業代があらかじめ組み込まれていたことや、残業時間の上限を定める労使協定で「1年のうち6ヶ月は月100時間の残業を可能」としていたことなどから、社内制度の必然的な結果として全社において常に長時間労働だったことを認めました。
このような状況を踏まえ、長時間労働の問題を放置したのは役員の悪意または重大な過失であるとして、従業員の自殺について役員は個人として責任を負うと認定しました。
裁判所は、会社と役員に対して遺族への計約7,860万円の支払いを命じ、判決が確定しています。

裁判のポイント
この判例は、長時間労働の問題を放置していた個人の責任が、大企業において初めて認められたものとして注目を集めました。雇用者側が従業員の労働に対し責任を負っているということを改めて認識させ、過重労働防止対策をとるように多くの経営陣に警鐘を鳴らす結果となったといえます。

(3)「ブラック企業」のイメージを植え付けた過労死事件

最後に紹介するのは、居酒屋大手チェーンC社で起きた事例です。この事件によりC社には「ブラック企業」というイメージが定着してしまい、業績悪化という結果をもたらしました。C社は、今なおそのイメージ払拭の途上にあります。

事案の概要
居酒屋大手チェーンC社の従業員が長時間労働により自殺したことにつき、遺族が会社や当時の社長等に損害賠償を求めたもの。

事案の経過
訴訟が提起された当初、C社は「道義的責任はあるが、法的責任はない」として強気に争う姿勢を見せていました。しかし最終的に、会社や当時の社長等が法的責任を認めて謝罪するとともに、約1億3,365万円の賠償金を支払う内容の和解が成立しています。 この和解では、C社が過重労働の再発防止策に取り組むことも内容に盛り込まれました。現行の時間外労働に関する規定を「低減するよう努める」と明記するとともに、正社員を募集する際には「基本給と深夜手当を分けて提示する」とした上で、実労働時間や休日・休暇の取得状況、離職率などを事前に説明することを掲げ、労働環境の改善に取り組む姿勢を見せています。
C社の方向転換の背景にあったのは、企業イメージの悪化に伴う業績悪化であるといわれています。従業員の過労自殺が明るみになって以降、C社が経営する居酒屋への客足は遠のき、C社は創業以来初めての赤字となりました。また、C社に入社を希望する社員が減少し、人員確保が困難になったことから、数十店の店舗を閉鎖する事態となっていました。 この事件は、過労死事件が企業に対して金銭面でのインパクトを与えるのみならず、企業イメージの悪化をもたらし、さらにそれが致命的な業績の悪化にもつながる恐れがあるということを示しているといえるでしょう。

まとめ

過労死の発生が企業に与える影響は甚大なものであり、各企業においては過労死防止のために対策を講じることが欠かせません。過労死を引き起こす大きな要因の一つとして長時間労働の問題があり、長時間労働の削減は喫緊の課題であるといえるでしょう。

過労死の原因となる長時間労働削減のため、従業員の労働時間の適正な把握や労働環境の改善など、各企業において従業員の適切な労務管理に取り組むことが大切です。

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