労働基準法では、休職について明確に定義されておらず、休職を制度として導入するかどうかは企業の裁量に委ねられています。休職中は一般的に無給扱いになることが多く欠勤と混同されがちですが、企業からの業務免除の有無が区別のポイントです。今回は、一般的な休職制度の内容と給与や手当支払いの有無、休職と欠勤の違い、休職トラブルの対処法について解説していきます。
労務管理に便利なクラウド型勤怠管理システムAKASHIの資料はこちら>>一般的な休職制度の概要
休職制度とは
休職制度は、業務外の要因によって一時的に働けなくなった労働者に対して、解雇を一定期間猶予する制度です。労働基準法による規定はないため、企業によっては制度そのものがない場合もあります。いずれにせよ、労働協約や就業規則などの「休職に関する事項」に休職に関する対応を明記しなければなりません。
休職・復職は労働者が提出した医師の診断書などの資料を基に企業が判断します。休職中の労働者は企業に定期的に病状の連絡・報告をする義務があり、復職後は原則として休職前の職務に戻りますが、状況に応じて配置転換が考慮されることもあります。なお、企業は復帰を急かさないようにしつつ、労働者に休職期間の範囲を伝え、無期限に労働義務を免除できるわけではないことを示さなければなりません。
給与や手当支払いの有無
休職中は労務の提供をしていないため、給与は支給されません。ただし、条件によって手当は受給可能です。病気やケガによる休職は最長1年6ヶ月間給与の3分の2の金額が「傷病手当金」として支給されます。対象となるのは健康保険加入者で以下の条件を満たす人です。
- 現在、病気やケガにより休職中で給料の支払いを受けていない
- 医師から働けない状態と診断されている
- 連続で3日以上休んでいる
なお、事業主から報酬の支給を受けた場合や、障害年金、老齢年金を受給している場合は支給額が調整されます。
また、業務中や通勤途中の病気やケガによる休職は平均賃金の80%が労災補償として受給できます。さらに、身体障害が残った場合は障害補償、死亡した場合は遺族に年金または遺族補償が支給されます。対象者は雇用形態に関わらず業務や通勤による病気やケガをしたすべての労働者です。
AKASHIで勤怠実績の集計作業をゼロに!残業申請もWebで完結可能です。
資料ダウンロードはこちら>>
休職と欠勤の違い
休職とは
休職は労働者の都合で長期的に仕事を休むことです。休職には以下のような種類があります。
- 病気休職
- 事故休職
- 起訴休職
- 調整休職
- 依願休職
業務外の傷病のため長期間仕事を休むことを認めるものです。
傷病以外の私的な障害によって長期間仕事を休むことを認めるものです。
労働者が刑事事件で起訴されたことを理由に就労を禁止するものです。この場合、裁判が確定するまでは解雇をしないという約束事にもなるため、導入時には注意しなければなりません。
他の制度との調整を図るためのもので、出向休職や組合専従休職などがあります。
家事都合や自己啓発の研修・海外留学・ボランティア活動などによる一定期間の休職です。
なお、休職期間が終了しても職場復帰できない場合は、自然退職または解雇となるのが一般的です。
欠勤とは
一方、労働義務がある日に自分の都合で仕事をしなかった場合は欠勤になります。休職と異なり労働義務が免除されているわけではありません。欠勤が一定期間連続した場合に休職に入る仕組みの企業が多いため、欠勤と休職とを混同しやすい傾向があります。しかし、前述のとおり休職制度の導入は企業の自由であり、欠勤が連続しても休職に移行できない場合もあるため、就業規則をよく確認しておきましょう。
特に覚えておきたいのは、欠勤は労働契約に基づく労務の提供を履行していないため、契約違反にあたるということです。欠勤も休職も会社を休むという点で共通していますが、欠勤は労務提供の不履行をやむを得ず認められるのに対し、休職は制度として就労が免除されるという点で異なります。また、欠勤の場合はノーワーク・ノーペイの原則に従い賃金が支払われませんが、休職の場合は企業によって対応が異なります。欠勤は人事評価にダイレクトに響いてしまう点も休職との違いです。やむを得ず欠勤する場合は職場にきちんと連絡を入れ、可能であれば有給休暇や病気休暇、生理休暇として申告すると良いでしょう。
休職中にお金を受け取れる制度
- 傷病手当金
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
- 労災保険
- 障害年金
傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。被保険者が病気や怪我を理由に会社を休み、事業主から十分な給与が受けられない場合に支給されます。傷病手当金の支給を受けるための条件は以下の通りです。
労災保険とは、労働者が業務上の理由や通勤によって負傷・病気・死亡した場合に、被災労働者や遺族を保護するため必要な保険給付を行う制度です。正社員だけでなく、パートやアルバイトなどの非正規雇用の方も適用を受けられます。企業は労働者を1日・1人でも雇用している場合、労災保険への加入が義務となっております。その際、他の社会保険とは違い、保険料は全額事業主が負担しなければなりません。
障害年金とは、病気や怪我によって生活や仕事などが制限されるようになった場合に支給される年金で、現役世代の方も含めて受け取ることができます。
障害年金は、生活を支えるために設けられた制度であり、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」に分類されます。なお、病気や怪我で初めて医師の診療を受けたとき、国民年金に加入していた場合には「障害基礎年金」が、厚生年金に加入していた場合には「障害厚生年金」が請求できます。
もっと勤怠管理をラクにしませんか?
「AKASHI」の資料・事例集をダウンロード >休職トラブルの対処法
休職と復職を繰り返す社員への対応
社員が休職と復職を数年間繰り返している場合について考えてみましょう。企業側は退職させたくても、就業規則に休職可能数のみしか記載されていない場合は休職期間に関してトラブルが生じる可能性があります。この場合、出勤を挟む前後の休職期間は休職を通算できる規定にする、休職期間の限度日数そのものを考慮するといった対応が必要です。
医師は職場復帰可と診断したものの、企業側は復帰を拒みたい場合の対応
医師が就労できると判断した場合、企業側が拒めるかどうかは判断が難しいケースです。職場復帰を拒む場合は一般的に「解雇」扱いになるので、後々トラブルにならないように就労規則と照らし合わせて本人とよく話し合うことが重要です。
AKASHIで勤怠実績の集計作業をゼロに!残業申請もWebで完結可能です。
資料ダウンロードはこちら>>
まとめ
ここまで、休職と欠勤の違いについて解説しました。休職は労働義務を免除されますが、欠勤は労務契約に基づいて契約違反にあたります。休職制度の導入は義務付けられていないものの、トラブルを防ぐためにも労働協約や就業規則などの「休職に関する事項」にて休職の対応を明記しておきましょう。