スキルマップとは、従業員の能力やスキルを客観的な基準によって数値化し、可視化した評価のことを指します。スキルマップを導入することによって、従業員のスキルを正確に把握することができるため、業務に合った適切な人材配置が可能になります。適切な人材配置を行った上で、求められるスキルに達していないスキルがあれば、個人の状況に合わせた最適な訓練の機会を設けることも可能になります。スキルマップの作成によってどのような効果を期待するかで、設定するスキルや項目が変わるため、スキルマップを作成する際は、方針や目的を定めるようにしましょう。
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スキルマップとは
従業員が持つ能力やスキルを客観的な指標で数値化し、可視化した評価のことです。業務に必要な能力・スキルに関する項目を一覧化することで、各従業員の業務遂行能力が一目でわかる仕組みとなっています。「力量表」「力量管理表」「技能マップ」「能力マップ」など企業によって呼び方はさまざまです。海外企業では「スキルマトリックス(Skills Matrix)」と呼ばれることが一般的です。能力・スキルの評価方法は数字による段階評価であったり、「〇△×」などの記号であったり企業によって異なります。
スキルマップが注目される背景
スキルマップの概念そのものは古くから用いられていましたが、先行きが不透明で将来の予測が困難とされる「VUCA時代」に突入したことで再び注目されるようになりました。成果主義の評価基準への移行や、デジタル化への急速な加速によって、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。変化に対応するためにも従業員のスキルを適切に把握し、公平な人事評価を行うことが必要です。そのためのツールとして、スキルマップを導入する企業が増えつつあります。
スキルマップが適している業界
スキルマップは、以下の業界に適しています。
- 製造業
高度な技術力や専門性が求められる製造業において、従業員のスキルを一覧で確認できるスキルマップは有効なツールと言えるでしょう。生産管理スキルやベース加工スキル、検査スキル、部品の取り付けスキル、精度の測定スキルなどの評価項目が用いられます。品質の高い製品をつくるために、加工や組み立てといった各業務フローに必要なスキルを有する人材を配置します。 - IT業界
最先端のシステムやツールを導入する機会が多いIT業界では、定期的なスキルの見直しが行われます。各従業員が現在持っているスキルを把握することで、足りないスキルを習得できる研修を実施したり、効果的な人材配置によって生産性の向上を図ったりできるでしょう。
スキルマップの目的
従業員のスキルの把握
個々の従業員の現在の業務内容に関するスキルレベルを把握することがスキルマップの目的のひとつです。従業員のスキルを可視化することで、不足するスキルに関する教育計画を立てられ、能力向上を図れます。特定の従業員にスキルが偏らないようにすることで属人化の予防も可能です。また、従業員のスキルを一覧で確認することで、適切な人材配置が即座にできるようになります。
従業員のモチベーションの向上
誰がどのレベルのスキルを有しているか共有することでお互いに競争心が芽生え、モチベーションの向上が期待できます。従業員全体のスキルが上がれば、将来的に企業全体の生産性の向上も見込めるでしょう。このように、スキルマップは従業員のスキルを把握するだけでなく、動機付けも目的としているのです。スキルマップは印刷して事業所の目立つ場所に貼り出したり、共有サーバーを介して従業員がいつでも閲覧可能な状態にしたりしておく必要があります。すべての従業員にスキルマップの概要を定期的に周知することも大切です。
公平な人事評価の実現
評価者の負担を軽減し、公平な人事評価を実現することもスキルマップの目的です。客観的な基準によって数値化したスキルマップを人事評価に反映することで、評価の公平性が実現できます。特定の管理職者が評価を行う場合、個人の主観が入り従業員間で不公平感が生まれる可能性があるでしょう。しかし、スキルマップに基づき業務に必要なスキルを満たした人が評価される仕組みにすれば、多くの従業員から理解を得られます。
スキルマップを作成する際のポイント
方針や目的を定める
スキルマップを効果的に運用するためには、作成前に方針と目的を定めることが重要です。まずは評価を行う人物と定量的な目標を決めましょう。スキルを評価する人は上司の場合もあれば、メンバー内の担当者が行う場合もあります。客観的で一元的な評価を行う場合は上司、高い理解度で詳細に振り返りを行う場合はメンバー内の担当者が適しています。定量的な目標は、製造業であれば目標の生産個数が挙げられるでしょう。高い品質を保ちつつ目標の生産個数を達成するために必要なスキルを洗い出すことでスキルマップを作成できます。
現場の従業員にヒアリングする
現場の従業員にヒアリングをすることもポイントのひとつです。上層部だけで決定すると、高すぎるノルマを設定してしまう可能性があります。現場の意見を取り入れ、適切なノルマと必要なスキルを決定するようにしましょう。また、現場の従業員にヒアリングすることで「自分たちが尊重されている」と感じ、モチベーションやエンゲージメントの向上にもつながります。
定期的に更新する
評価項目を定期的に見直して更新することもスキルマップを作成するうえで重要なポイントです。技術や顧客のニーズ、経済環境は日々変化するため、定期的にスキルマップを見直し常に最新の常態に保つように心がけましょう。更新する際も現場の従業員にヒアリングし、積極的に意見を取り入れる必要があります。
評価後のアクションを決めておく
スキルマップを作成・運用した後は効果測定を行い、評価します。評価後にどのようなアクションを起こすか決めておくようにしましょう。たとえば、スキル不足が明らかになった場合は研修を実施する、スキルマップが形骸化してしまった場合は活用しやすい形式に変更する、などが挙げられます。作成して完了とするのではなく、得られた効果や明らかになった課題について対処することが大切です。
まとめ
今回は、スキルマップの概要や目的、作成する際のポイントについて解説しました。スキルマップを活用することで、個々の従業員が持つ業務に必要なスキルを一目で把握できます。従業員も自分のスキルを確認できるため、モチベーションの向上にもつながります。人事評価に反映すれば、多くの従業員が納得のいく公平な人事評価が実現可能です。この機会に、スキルマップを導入してみてはいかがでしょうか。