過労死等防止の砦!
医師による面接指導を実施していますか?

2017年1月26日

過労死等防止の砦!医師による面接指導を実施していますか?

過重労働による健康障害を防止するため、企業には、長時間労働者に対する医師による面接指導を行うことが義務づけられています。

近年社会的に問題となる過労死等を防ぐためには、医師による面接指導を適切に行うことで労働者の健康状況を把握するとともに、医師の意見に基づいた必要な措置を講じることが欠かせません。

今回は、面接指導制度の概要や面接指導実施の手続きについて解説します。

 
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医師による面接指導とは

医師による面接指導とは、長時間の労働により疲労が蓄積して健康障害発症のリスクが高まった労働者について、医師が問診などにより心身の健康状況を把握し、これに応じて面接で本人に対する必要な指導を行うとともに、その結果を踏まえた事後措置を講じることをいいます。

近年社会的に問題となっている過労死等の原因には様々なものがありますが、とりわけ長時間労働は、脳・心疾患との関連性が強いという医学的知見が得られています。また、労災認定された自殺事案には、長時間労働であったものも多いといわれています。

長時間労働に起因する過労死等を防止するため、労働安全衛生法では、一定の要件を満たす長時間労働者に対して医師による面接指導を実施することを、企業に義務づけています。また、面接指導の対象とならない労働者についても、脳・心疾患発症の予防的観点などから、面接指導または面接指導に準じた必要な措置を講ずるよう努めることとされています。

 

医師による面接指導の制度概要

医師による面接指導の対象となるのはすべての事業場であり、企業規模は問われません。 企業は、次の(1)に該当する労働者に対して、労働者からの申出があった場合、医師による面接指導を実施しなければなりません。 また、(2)や(3)に該当する労働者についても、面接指導または面接指導に準ずる措置(面接指導等)を講じることが努力義務とされています。

面接指導の実施の義務

(1)時間外・休日労働時間が1ヶ月あたり100時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者(申出を受けて実施)

面接指導等の実施の努力義務

(2)長時間の労働(時間外・休日労働時間が1ヶ月あたり80時間超)により疲労の蓄積が認められ、または、健康上の不安を有している労働者(申出を受けて実施)
(3)事業場で定める基準に該当する労働者(事業場の規定により実施)
(3)の「事業場で定める基準」については、各企業が実情に応じて独自で定めることとなります。例えば、以下のような基準が考えられます。

事業場で定める基準の例

  • 時間外・休日労働が月100時間を超えた労働者および2~6ヶ月間の平均で月80時間を超えた労働者すべてに面接指導を実施する。
  • 時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者すべてに面接指導を実施する。
  • 時間外・休日労働が月45時間を超えた労働者で産業医が必要と認めた者に面接指導を実施する。

医師による面接指導の制度概要

医師による面接指導の制度概要

医師による面接指導は、上図のような流れで行います。それぞれのプロセスで留意すべき事項について、以下で解説します。

時間外・休日労働時間の算定

医師による面接指導を着実に行うためには、労働者一人ひとりについて、1ヶ月あたりの時間外・休日労働時間を正確に把握しなければなりません。勤怠管理システム等を活用し、全労働者の労働時間が一元的に管理できる体制を構築するようにしましょう。

なお、労働時間の算定は、毎月1回以上、一定の期日を定めて行わなければなりません。給与計算の締め日や月末等、労働者も把握しやすい期間で区切るとよいでしょう。

労働者からの申出・面接指導の実施

医師による面接指導は、労働者の申出により実施します。企業は、労働者から面接指導の申出があった場合、すみやか(概ね1ヶ月以内)に面接指導を行わなければなりません。

医師による面接指導を希望する労働者が適切に申出を行えるよう、労働者に対して制度の周知を行うとともに、申出の様式を整備するなど、労働者が申出を行いやすいような環境を整えることが大切です。

なお、医師による面接指導にかかる費用は企業が負担をしなければならないことにも留意しましょう。

医師からの意見聴取・適切な事後措置の実施

企業は、医師による面接指導を実施した後、それぞれの労働者の健康を保持するために講ずべき措置について、医師の意見を聴かなければなりません。また、医師の意見を踏まえ、当該労働者の業務内容の見直しや勤務地の変更、労働時間の短縮、深夜業の回数の削減など必要な事後措置を講じるようにします。なお、面接指導の記録は、企業において5年間保存することが義務づけられています。

ストレスチェックの結果による面接指導について

労働安全衛生法では、医師による面接指導の規定を2つ設けています。1つは今回解説した長時間労働者を対象とする面接指導であり、もう1つはストレスチェックの結果により高ストレス者と判断された労働者に対する面接指導です。

ストレスチェックについて必要な手続きなどについては、以下のURLからダウンロードできる「お役立ち資料」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

働き方改革関連法による変更点

2019年4月に施行された働き方改革関連法では、産業医の権限が強化されるようになりました。

労働者の健康確保対策の強化

過重労働やストレスなどが要因で過労死等の労働災害のリスクが高い労働者に対し、産業医による面接指導や健康相談が確実に行われる必要があります。労働者の健康管理上必要な情報の提供が事業者に対して義務付けられ、産業医から事業者に対する勧告手続きの強化も行われました。

産業医が活動を行う環境の整備

改正後は産業医の独立性や中立性が高められます。そこで、労働者の業務に関する情報等、必要な情報が提供される仕組みが強化されたり、衛生委員会に産業医学の専門的な立場から提案を行う権限などが明確化されたりしました。

まとめ

長時間労働に起因する過労死等から労働者を守る砦となるのが、医師による面接指導です。各企業においては、医師による面接指導の制度内容についてきちんと把握するとともに、労働者が適切に制度を活用できるよう、周知や環境整備を行うようにしましょう。

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