社内通貨は、企業が従業員向けに独自発行するポイント型の通貨を指します。導入することで、従業員のモチベーション向上や行動指針の浸透、社内コミュニケーションの活性化が期待できます。一方で、運用コストや利用されないリスクもあるため、目的の明確化や、付与・利用ルールの整備、管理ツールの導入などが重要です。今回は、メリット・デメリットや導入のポイントなどについて解説します。
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企業が従業員向けに独自発行する社内限定通貨
社内通貨とは、企業が自社の従業員向けに発行する社内限定の通貨を指します。給与とは別に、評価や表彰、お礼などの意味を込めて、ポイントや仮想通貨の形で付与されることが多いようです。通常、紙幣や硬貨のような実物ではなく、アプリやシステム上でポイントとして管理・やり取りされます。導入方法としては、企業独自のシステムを開発して通貨を発行する方法か、外部のサービスを利用して通貨を管理する方法が一般的です。
社内通貨を取得する代表的な方法
社内通貨を取得する主な方法は以下の通りです。
- 勤続年数が一定期間を超えたとき
- 役職に就いたとき
- 業績向上やインセンティブが発生したとき
- 社内コンテストなどで表彰されたとき
- 同僚や部下からのお礼を受けたとき
- 採用活動や広報活動に貢献したとき
これらは、業績や貢献度に基づく実績を反映しており、目に見えない貢献も社内通貨という形で評価されます。また、社内通貨の付与基準は目的に応じて設定されることもあり、例えば「コミュニケーション促進」「モチベーション向上」「経営理念や行動指針の浸透」などに基づく行動に対して、通貨が貯まる仕組みです。一般的に、貯めた社内通貨は現金や景品などに交換できます。
社内通貨が注目を集める背景
社内通貨が注目を集め導入が進む背景には、従業員に「自発的に業務を遂行してもらいたい」という企業側の意図があります。近年では、人事担当者や上司がポイントを付与するだけでなく、社員同士で贈り合う形式の社内通貨制度も広がりつつあるようです。具体的には、業績達成や社内コンペティションでの成果、日常のコミュニケーション向上に対して社内通貨が付与され、従業員のモチベーション向上に繋がっています。社内通貨制度は、2005年頃から一部の先進的な企業を中心に、導入が始まりました。支援ビジネスの発展により、現在では多くの企業で導入が進んでいます。社内通貨は社員同士の評価・感謝の表現を促し、モチベーションの向上にも影響するため、今後ますます注目を集めるでしょう。
社内通貨のメリット・デメリット
メリット1:社員のモチベーションが向上する
社内通貨を導入することで、日頃の掃除や挨拶、同僚や部下へのサポートなど、定量化が難しい社員の業務や努力に対しても評価を与えられるようになるため、評価軸の拡大に貢献します。その結果、普段目に見えない努力が評価されることで社員のモチベーションが向上し、意欲の低下や離職を防ぐ効果が期待できます。モチベーションの向上は個人のパフォーマンスだけでなく、チームや組織全体に良い影響を与えるでしょう。
メリット2:コミュニケーションが活発になる
社内通貨がきっかけとなり、社員同士のコミュニケーションが活性化するメリットもあります。例えば、社内SNSの「いいね」や「ありがとう」を言い合う文化を醸成し、社員が互いに評価できる仕組みを作り出せれば、日常的な情報やノウハウの共有が促進されるでしょう。このような行いを社内通貨で評価する仕組みを導入すれば、昇給や昇進に直結しない行動でも適切に評価されるようになるため、職場環境の改善や業務効率の向上に繋がります。
デメリット1:運用にコストがかかる
社内通貨の運用にはコストがかかります。例えば、外部サービスやツールの導入費用、運用担当者の人件費、景品の準備などにコストが必要です。これらのコストは、効果が得られなければ無駄になってしまう恐れがあります。そのため、導入前に目的と費用対効果をしっかりと検討することが重要です。また、導入後はサービスの浸透をサポートするサービスを活用し、無理のない運用が求められます。
デメリット2:使われず形骸化する恐れがある
社内通貨は、導入しても使われずに形骸化するリスクがあります。そのため、組織内に社内通貨を確実に浸透させるには、さまざまな工夫が必要です。制度を構築する際には、まず社内のニーズに合わせて設計し、従業員へ積極的に周知する活動が欠かせません。もし使う人がいなければ効果は得られず、コストだけがかかる結果になります。
社内通貨導入のポイント
導入の目的を明確にする
社内通貨を導入する際には、その目的を明確にすることが最も重要と言えます。「何のために導入するのか」「どんな課題を解決したいのか」を、しっかりと整理しておくことが成功への第一歩です。
目的が曖昧だと社内通貨が形だけのものになり、効果が薄れてしまう恐れや、社内通貨が利用されずに形骸化する可能性があります。また、社内通貨制度に多くのことに求めすぎると方向性がぶれてしまい、最終的に「何を達成したいのか」がわからなくなってしまうことも考えられます。
目的が明確であれば貯め方や運用ルールも自ずと決まるため、導入後も運用がスムーズに進むでしょう。
使いやすい制度を設計する
社内通貨制度を成功させるためには、従業員が使いやすいシステムを設計することが重要です。具体的には、ポイントを貯める機会や使用方法を多く提供し、従業員のモチベーションを高める工夫が求められます。例えば、貯める機会を多く提供することで、コツコツ貯める意欲を高めることが可能です。また、ポイントを一気に貯められる大きなチャンスを作ることで努力が促進され、制度への参加意欲はさらに高まるでしょう。そして、制度導入後は達成度を測定し、問題点を洗い出して改善することが大切です。最初はインセンティブ効果でモチベーションも上がりますが、次第に制度が当たり前になると形骸化してしまう可能性もあります。そのため、制度を柔軟に見直し改善を継続することが重要です。
自社に合ったシステムを導入する
社内通貨制度を導入するには、通貨管理用のアプリやシステムが必要です。自社でシステムを構築することも可能ですが、専用ツールを使えば初期費用を抑えて簡単に導入できます。システム選定時には使いやすさを重視し、自社の目的に合ったツールを選ぶことが重要です。また、外部システムを利用する場合は、導入コストやランニングコストだけでなく、従業員数が増加しても問題なく運用できるかどうかを確認しましょう。さらに、複数の業者から相見積もりを取得し費用や機能面を比較することで、最適なシステム選びが可能になります。これらの要素を踏まえた選定が、スムーズな導入・運用を実現するポイントとなります。
まとめ
今回は社内通貨について解説しました。社内通貨とは、企業が独自に発行する社内限定の通貨です。組織内のコミュニケーションを活性化し、社員のモチベーションを高めるために欠かせないものとなりつつあります。社内通貨を導入すると、従業員同士が互いに評価できる環境が生まれるため、隠れた努力や貢献を可視化することが可能です。従業員同士が認め合う環境は個人のモチベーション向上だけでなく、チームや組織全体のパフォーマンス向上にも繋がり、全社的に高い成果を実現する源泉となるでしょう。