無断欠勤とは、従業員が事前の連絡なしに個人の都合で会社を休むことです。無断欠勤する従業員がいると、出勤している従業員の作業量が増え、作業効率や社内のモチベーションの低下につながります。無断欠勤に対する正しい対応方法を理解し、このような事態を防ぎましょう。今回は、従業員が無断欠勤してしまう原因と対応方法、そのような従業員を解雇する場合の手順と注意点について解説します。
労務管理に便利なクラウド型勤怠管理システムAKASHIの資料はこちら>>従業員が無断欠勤してしまう原因
従業員の自己管理不足によるもの
寝坊や二日酔いなど、仕事を休む正当な理由ではない事情で無断欠勤するケースがあります。夜更かしやお酒の飲み過ぎで寝坊してしまうと正直な理由を上司に伝えにくく、結果として無断で欠勤してしまう例は少なくありません。企業側は、従業員本人のだらしなさや責任感の欠落から連絡を怠って休んでしまう場合もあると認識しておきましょう。
セクハラやパワハラなどを受けている
セクハラやパワハラなどが原因で無断欠勤しているケースもあります。この場合、まずはハラスメントの事実の有無を確認することが重要です。もしも実際に職場の環境に問題が生じていたら、無断欠勤はやむを得ないと判断される可能性があります。ハラスメントの事実が確認できなかったり、欠勤を認めるほど深刻ではなかったりする場合は、出勤命令を出すなどの対処を検討しましょう。
精神疾患により連絡ができない
精神疾患により連絡ができず無断欠勤していることも考えられます。精神疾患には適応障害・自律神経失調症・ストレス障害・うつ病などさまざまな種類があり、それぞれ症状は異なります。場合によっては眠れなかったり、食欲がなく疲れやすかったりといった辛い身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じ、欠勤の連絡ができないこともあるのです。
急病・事故などにより出勤できない
怪我・急病・事故などで即時に適切な連絡を企業にできず無断欠勤してしまう場合もあります。このようなケースは正当な理由による欠勤に該当するので、まずは従業員の状況を確認し健康状態の回復を優先しましょう。必要に応じて休暇制度や休職制度の利用を提案することも必要です。
無断欠勤をする従業員への対応方法
安否確認をする
無断欠勤を行う従業員に対しては、まずは本人に連絡をとり安否の確認を行いましょう。上述したとおり、無断欠勤の理由として急病や事故などの緊急事態の可能性も考えられます。そのため、まずは本人に連絡をして安否の確認を行うことが最優先です。従業員の無事を確認できたら、連絡なく欠勤した理由を尋ねヒアリングできた内容を記録しましょう。
教育・指導を行う
無断欠勤をした従業員と連絡がとれ理由を確認できたら、状況に応じて教育や指導を行いましょう。教育や指導といった手順を省くと、企業側が無断欠勤を黙認したと捉えられてしまうため注意が必要です。教育や指導で従業員に行った注意事項は書面で残しておきましょう。
状況に応じて懲戒処分をする
従業員に非のある無断欠勤に対して改善が見られなければ、まずは懲戒処分を検討します。行える懲戒処分の代表的な種類は以下のとおりです。
- 顛末書
- 出勤停止
- 減給
指導や教育などの働きかけを行っても改善が見られない場合には、徐々に重い処分を検討することが必要です。ただし、法的に無効にならないように慎重に手続きを進めなければなりません。例えば、無断欠勤を頻繁に繰り返していても、無給などの処分を行うことは認められません。
無断欠勤者と対応について話し合う
無断欠勤した従業員と今後の対応について話し合います。軽い処分として顛末書から始めて、出勤停止や出社命令などを経て減給に至っても改善がないようであれば、さらに進んだ対応をとらなければなりません。具体的には、休職や場合によっては解雇という選択肢も検討する必要があります。企業側が一方的に判断するのではなく、当事者と話し合いを行いましょう。
解雇を検討する
最終的な対処としては解雇が挙げられます。解雇にはいくつか種類がありますが、無断欠勤を理由とする場合は普通解雇が一般的です。普通解雇を行うための要件は以下のとおりです。
- 就業規則などに根拠となる定めがある
- 解雇権濫用に当たらない
- 解雇事由が法令に違反しない
- 解雇予告または解雇予告手当の支払いをする
解雇権濫用は、明確な理由が不足する解雇や社会的に考えて過度な解雇処分を指します。普通解雇を行うには客観的に見て合理的な理由があり、社会通念上相当な処分である必要があるのです。加えて、結婚・妊娠・育児・介護による休業取得を理由とする解雇や、国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇は法令で認められていません。解雇を検討する際は、上述した要件を満たしているか確認しましょう。
無断欠勤をする従業員を解雇する手順
【手順1】出社命令を出す
無断欠勤をする従業員に対して出社命令を出しましょう。出社に応じてもらえたら、欠勤の原因を確認して客観的かつ合理的な理由を明確にします。内容証明郵便による出社命令の送付など、書面による記録を残すことも有効です。
【手順2】解雇予告をする
従業員を解雇する際は、労働基準法によって基本的に30日前に予告することが義務付けられています。ただし、30日分の賃金を解雇予告手当として支払うことで、事前予告なしに当日解雇することも可能です。もしも解雇予告日から実際の解雇日までが30日に満たない場合は、不足分の日数分の賃金を支払えば解雇できます。
【手順3】解雇通知書を受け渡す
解雇通知書を作成して本人に受け渡します。解雇通知書に記載する項目は以下のとおりです。
- 該当従業員を何日に解雇をするという文言
- 解雇の理由
該当の従業員を別室などに呼び出して、解雇を伝えるとともに解雇通知書を受け渡します。例えば、「残念ですが社内で話し合った結果、今日付けで解雇することにしました。」のような言葉で伝えましょう。解雇に至る経緯や企業側としての明確な意思、解雇する日付を相手に伝えるように意識します。
無断欠勤をする従業員を解雇する際の注意点
無断欠勤の証拠を揃える
無断欠勤を理由に解雇するのであれば証拠が必要です。具体的には、タイムカードや出勤簿などの勤怠記録が証拠となります。労務管理がずさんで勤怠記録がなかったために企業側が敗訴した事例もあるので、勤怠記録は必ず残しておきましょう。
企業側に原因がある場合や精神疾患がある場合は解雇できない
ハラスメントや長時間労働など企業の側に原因がある場合は解雇できません。また、無断欠勤の原因が従業員の精神疾患である場合も解雇はできないため注意しましょう。この場合は、従業員に休職を促しまずは治療に専念してもらう必要があります。万が一こうした理由があるのに解雇を行うと、不当解雇とみなされ多額の慰謝料支払いにつながる恐れがあります。
不適切な方法だと不当解雇とみなされる可能性がある
不適切な方法や理由での解雇は、裁判で不当解雇とみなされ慰謝料請求が発生する恐れがあります。金銭的なリスクだけでなく、企業の社会的イメージが損なわれる可能性も軽視できません。従業員を解雇する際は解雇する手順や法令を遵守しましょう。
関連記事:
まとめ
無断欠勤は企業にとって悩ましい問題ですが、メンタル疾患や事故の発生なども理由として考えられます。まずは無断欠勤について従業員を責めるのではなく、安否を確認して状況を正しく把握しましょう。無断欠勤が従業員の自己管理不足によるものと明確になり改善されなければ、懲戒処分などの対応を検討しなければなりません。解雇はあくまでも最終手段であり、判断は慎重に行う必要があります。さまざまな事態に備えられるように、日頃から勤怠管理などの記録は適切に管理しましょう。