
アサーションとは、自分の意見や気持ちを相手の意見や感情を尊重しながら率直に伝えるコミュニケーションのことを指します。相互理解や心理的安全性を高め、ハラスメント防止や円滑な対話につながるため、企業で注目されています。身につけるポイントとしては、「私(I)メッセージ」で話す、相手を対等に扱う意識、非言語表現への配慮などが挙げられ、DESC法などのトレーニングも活用されます。今回は、アサーションが注目される理由や習得のポイントなどについて解説します。
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相手を尊重しつつ自分の意見を伝えるコミュニケーション
アサーションは、自分と相手の双方の関係性を重要視しつつ、適切な言葉や表現で自身の意見や主張を伝えるコミュニケーションの手法です。「自己主張」というと、どうしても自分の意見を押し通すようなイメージを抱くかもしれませんが、アサーションは自分と他者の双方を尊重し、対等な関係性のもと意思表示を行うことに大きな意義があるとしています。
アサーションの自己表現タイプ
アサーションのコミュニケーション方法を習得するためには、まずアサーションを用いた自己表現のタイプと、それに当てはまらないタイプを把握することが重要です。まず、「アサーションに当てはまらないタイプ」が以下の2種類に分類されます。
・アグレッシブ(攻撃的)タイプ
相手の気持ちを尊重することなく、自分の意見や主張を押し通そうとするタイプです。自己主張ができる点は評価できますが、相手の意見や姿勢を尊重しないことによって、周囲とのトラブルの原因になりかねません。また、相手が言葉を返そうとしてもさえぎったり否定的な言葉を投げかけるなど、相手を自分の思い通りに誘導させようとするケースもみられます。その背景には、「相手と自分の意見が異なることが怖い」「自分が間違っていることを認めるのは負け」という感情からくるものといわれています。
・ノンアサーティブ(非主張的)タイプ
相手の意見や気持ちを汲んで優先するあまり、自分の意見を主張することなく心の中に抑え込んでしまうタイプです。一見すると相手に寄り添っているように感じますが、このタイプに該当する人の根底には「人に嫌われたくない」「トラブルやもめごとに関わりたくない」「否定されたくない」という気持ちを抱えていることが多いようです。周囲との表面的なトラブルは起こりにくいものの、本人は周りに対して不満やストレスを抱えやすい傾向があります。
一方で、アサーションの手法を用いた自己表現の方法ができているタイプのことを「アサーティブタイプ」と呼びます。こちらは、アグレッシブタイプとノンアサーティブタイプの2種類の良い面をバランスよく取り入れ、積極的に意見を主張するだけでなく、相手の価値観や意見も同時に尊重するという、「アサーション」を取り入れたコミュニケーションがとれるタイプということになります。
アサーションが注目される理由
職場の人間関係を改善し離職防止に貢献
先に「アサーションに当てはまらないタイプ」を紹介しましたが、これらに該当するタイプの人たちは周囲に対して不満や否定的な気持ちを抱えています。それを表に出すのか、内側にため込むかの違いはありますが、どちらにしても周りとの円滑なコミュニケーションのやり取りが難しくなり、人間関係が悪化する要因となり得ます。自分の主張が伝わらない、相手を気にして何も言えないといったストレスを、アサーションを取り入れたコミュニケーションによって改善できると、組織内のどの立場であっても円滑なコミュニケーションをとれる関係性や環境が整うようになるでしょう。
メンタルヘルス対策に役立つ
特にアグレッシブタイプの従業員が周囲にいる場合、叱責や無理な要求をされるなど、相手を尊重しないやり取りを強いられる可能性があります。近年、このようなやり取りは「パワーハラスメント」として問題視されることもありますが、お互いを尊重しないコミュニケーションが続いていくと、よいメンタル状態を保つことが難しくなり、最悪の場合精神疾患などで休職や退職に追い込まれるケースもあります。アサーションのやり取りは相手を尊重することが前提としてあるため、自分の意見だけでなく相手の状況ややるべきことを判断することにつながり、良好なメンタルの状態を保ちながら業務をこなせるようになります。
意見を率直に伝えやすくなる
ただ上司から言われたとおりのことをこなすだけのような職場環境では、部下が「本当はこうしたい」と意見をしまい込んで業務を続けることになります。すると、上司や企業へのエンゲージメントや働くモチベーションが低下し、人材流出のきっかけとなるリスクもあります。とはいえ、なんでも言いたいことを言えばよいというわけではなく、「相手を尊重したうえで自分の意見を適切に言う」というアサーションを体現したコミュニケーションを上下関係問わずできるようになると、組織のどの立場にとっても風通しのよい職場環境や雰囲気づくりに貢献することができるでしょう。
アサーション習得のポイント
「私(I)メッセージ」で話す
会話を始めるとき、最初から相手を中心にした内容を繰り広げると、注意や指摘をされるのではないかと相手が身構えてしまう可能性があります。会話の冒頭で、「私はこう思う」という自分の意見を述べることから始めると、自身の伝えたいことが明確になり、相手側も話を聞き入れやすくなります。
言葉以外の表現にも注意する
会話を進めるとき、「どのような言葉選びをするのか」というポイントに焦点を当てられがちですが、態度や仕草など言葉以外で感じ取れる表現にも気を配る必要があります。例えば、何も言葉を交わしていないけれどもいつも不機嫌そうな人がいたら、多くの人は話しかけづらいと思うでしょう。いつも笑顔でいる必要はありませんが、「話しかけづらそう」と思われるような態度や雰囲気づくりはしないことを意識するだけでも、周囲とのコミュニケーションが円滑にしやすくなるきっかけになるでしょう。
相手を尊重し対等に接する
既述のとおり、アサーションの手法は自分の意見と相手の意見をお互いに尊重したやりとりが原則です。上司や部下などの上下関係にとらわれず、自分の主張をしっかりと話したあとは、相手からの意見や意思を受け入れ、お互いに前向きにとらえられるような着地点を探していくことが重要です。
「DESC法」を活用する
DESC法とは、「Describe(描写する)」「Express(説明する)」「 Specify(提案する」「Choose(選択する)」の4つのステップを用いて、相手にネガティブな印象を与えずに自身の意見を主張できるコミュニケーションのフレームワークです。アサーションの手法を取り入れるための具体的なトレーニング方法として知られており、建設的かつ円滑なコミュニケーションがとれる力を育むことができます。
まとめ
アサーションは、単に自分の言いたいことを主張するためではなく、相手を思いやるコミュニケーションを前提として、周囲とのコミュニケーションを円滑にするためのフレームワークの一種です。相手の意見を受け入れたうえで、自分の主張もできるようになる「アサーティブ」な環境構築ができると、誰もが働きやすい職場に近づけることができるでしょう。
