クラッシャー上司とは、部下を叱責したり、行き過ぎた指導をしたりして、部下に過剰なストレスをもたらす上司のことを指します。クラッシャー上司は、叱った相手にストレスを与えるだけでなく、その光景を目の当たりにしていた周りの従業員にまで気を使わせてしまい、職場全体の雰囲気を悪化させます。また、クラッシャー上司の存在が世間に知られると、企業の評判も悪くなってしまいます。クラッシャー上司を減らすためにも、企業はコンプライアンス研修を実施し、部下への接し方や言動を見直す機会を与えましょう。
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クラッシャー上司とは
度を越えた厳しい言動で部下を精神的に追い詰め、休職や退職に追い込んでしまう上司のことです。精神科産業医の牛島定信さんと教え子である松崎一葉さんが名付けました。一般的なモラハラ・パワハラ上司との違いは、業績の面で社内から高い評価を得ている点です。部下にも自分と同じように結果を出させようとして、執拗に叱責したり、成果に対してほめずに次から次へと課題を与えたりして精神的に追い込みます。
クラッシャー上司の特徴
- 他人への共感性が欠如している
自分の言動によって相手がどのような気持ちになるか想像することができません。クラッシャー上司は共通して他人への共感性が欠如しています。 - 自分が正しいと思い込んでいる
問題を指摘しても、クラッシャー上司の自覚が全くなく悪びれることもありません。自分の言動はすべて正しいと思い込んでいて、部下の成長のためには必要なものであると考えています。 - 完璧主義
クラッシャー上司は優秀で高い業績を残している点が特徴です。自分がそうであるように部下にも完璧を求める傾向にあり、自分の意にそぐわないことがあれば執拗に責め立てるのです。 - 承認欲求が強い
「賞賛されたい」「承認されたい」といった承認欲求が強すぎるあまり仕事にすべてを注ぎ込んでクラッシャー上司となってしまう人も少なくありません。
クラッシャー上司が生まれる背景
利益を最優先する企業において、優秀なクラッシャー上司は処罰や指導しない傾向にあります。また、クラッシャー上司と同じ価値観や性質を持つ幹部が上層部に多いことも背景の一因です。クラッシャー上司が生まれるのは個人だけの問題ではなく、組織全体の問題とも言えるでしょう。 また、日本の雇用は雇用してから仕事を与える「メンバーシップ型」が主流です。ジョブ型は自分の担当する仕事の範囲が明確であるのに対し、メンバーシップ型は曖昧なため上司の命令を断りにくい状況が生まれます。その結果、次々とノルマを課して無理難題を突き付けるクラッシャー上司が生まれてしまうのです。
クラッシャー上司の問題点
職場の雰囲気が悪化する
クラッシャー上司が度を越えた叱責や指導をしている光景を目の当たりにした周りの従業員も委縮して職場の雰囲気が悪化します。若手社員がアイデアを出すことがなくなるため、イノベーションを起こせなくなるでしょう。 職場における多様性が脆弱化し、企業自体が時代の変化に対応できなくなるリスクもあるのです。
従業員の成長の妨げになる
クラッシャー上司は部下を成長させるつもりで叱責や指導しているかもしれません。しかし、上司は自分の視点のみで物事を判断しているため、 部下の能力が正当に評価されなくなります。職場全体でその上司のもとでは正当に評価されないという認識が高まり、部下を含む多くの従業員の成長を妨げることになるでしょう。
離職率が上がる
精神的に追い詰められた部下が次々と辞職することで、離職率が上がります。優秀な人材の流出も避けられないでしょう。 離職率が高いと会社の評判も悪くなり、応募者が減ることで人手不足に陥るおそれがあります。
クラッシャー上司への対策
相談窓口を設置する
企業内に相談窓口を設置しましょう。相談方法は対面による面談だけでなく、メールや電話、社内インラネットなど、プライバシーを確保した上で相談しやすい環境を整備することが重要です。 適切な対応を行うために、専門知識や資格を有している担当者を配置します。相談窓口の存在や利用方法はすべての従業員に周知しましょう。相談窓口が機能するように、相談を受けた後の事実確認や、行為者・相談者への措置・フォロー、再発防止策の策定といった体制を整えておくことが重要です。
社内アンケートを実施する
アンケート調査によって、クラッシャー上司の存在の有無や従業員の意識を把握しましょう。紙や電子ファイルだけでなく、アプリで実施できるものもあります。アンケート実施後は内容を精査し、クラッシャー上司の存在が確認された場合、早急に事実確認を行い適切に対処することが重要です。アンケートは定期的に実施し、度を越えた指導をさせないようにするための抑止力としても活用しましょう。
研修を行う
どのような言動がパワハラに該当するのか、そのような言動を行った場合の罰則の内容について定期的に研修を行いましょう。クラッシャー上司は自分の言動は問題ないと思い込んでいるため、適切なコミュニケーションの取り方や部下指導の方法をケーススタディで体得させることが重要です。すべての従業員に研修を実施し、パワハラを起こさせない共通の概念を組織全体に浸透させましょう。
まとめ
今回は、クラッシャー上司の概要とその問題点、対策について解説しました。クラッシャー上司は高い業績を残す優秀な人材であるため、企業が放置していることも少なくありません。しかし、精神的に追い込まれた部下たちが次々と休職や退職をしてしまうと人材不足に陥ります。まずは相談窓口の設置と社内アンケートの実施によってクラッシャー上司の存在の有無を確認することが重要です。パワハラを起こさせない共通の概念を組織全体に浸透させるために、定期的な研修も実施しましょう。