女性活躍推進法の施行により、日本の女性管理職は増加しているものの、他国と比べるとその割合はまだ低く、女性の社会的活躍には課題が残っています。女性もキャリアアップに熱心ですが、管理職になるにはハードルが高く、そのためには職場環境の整備や支援策の必要性があります。女性が管理職に就くことで、多様性や柔軟性が生まれ、生産性が向上することが期待できるため、積極的に女性管理職を増やす取り組みを導入しましょう。今回は、女性管理職の現状と女性管理職を増やすための取り組みやそのメリットを解説します。
労務管理に便利なクラウド型勤怠管理システムAKASHIの資料はこちら>>女性管理職の現状
女性管理職の割合は上昇傾向にある
2016年の女性活躍推進法の施行、ならびに2019年の同法改正に伴い、令和以降は女性管理職の割合が上昇傾向にあります。女性活躍推進法は正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、個性と能力を十分に発揮し、職業生活における女性の活躍を推進するための法律です。
厚生労働省による「2021年度雇用均等基本調査」によると、2006年時点では企業規模30人以上における課長相当職以上の女性管理職を有する割合は53.0%でした。一方、2021年度の調査結果では、57.6%です。
15年間で4.7ポイント増加しており、少ないながらも着実に女性管理職の割合が増加していることが見て取れる結果となっています。
企業規模が大きいほど女性管理職が多い
さらに、同調査の結果によると、企業規模が大きいほど女性管理職を有する割合が大きくなることがわかります。調査結果より、企業規模ごとの女性管理職を有する割合を整理すると下記のとおりです。
企業規模 | 部長相当職以上 | 課長相当職以上 |
---|---|---|
5,000人以上 | 78.7% | 86.0% |
1,000~4,999人 | 44.0% | 81.7% |
部長相当職以上の女性管理職を有する割合は、5,000人以上の企業と1,000~4,999人の企業では30%以上の差があり、企業規模が大きい大企業では上位の役職へ女性の登用が進んでいることが見て取れます。
産業別では医療、福祉が突出している
続いて、同調査で女性管理職の割合を産業別に見てみると、下記のとおりです。
産業 | 部長相当職以上 | 課長相当職以上 | 係長相当職以上 |
---|---|---|---|
医療・福祉 | 43.3% | 48.2% | 51.5% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 24.2% | 24.3% | 26.0% |
宿泊業・飲食サービス業 | 13.7% | 22.3% | 24.6% |
教育・学習支援業 | 17.2% | 19.8% | 21.6% |
医療・福祉の分野が突出して高く、係長相当職以上を管理職と定義すると、半数以上を女性が占めていることがわかります。
女性管理職を増やすための取り組み
社内風土や意識の改革を行う
女性管理職は増加傾向にあるものの、その割合はまだまだ低いのが現状です。女性管理職がなかなか増加しない原因としては、下記のものが考えられます。
- 出産や育児と管理職を両立しづらい雰囲気がある
- 前例となる女性管理職が少ない
- 管理職志向の女性が少ない
多くの女性は、出産や育児と管理職の両立がしづらい職場の雰囲気を感じ取っているようです。また、前例となる女性管理職が少ないことも、女性に管理職への挑戦をためらわせている原因となっています。さらに、管理職志向の女性が少ないのも大きな問題です。管理職になっても負担だけが増えると考え、そもそも管理職になりたがらない女性も多くいます。
このような課題を解決するには、社内風土や意識の改革が必要です。社内研修やメンター制度などで社員の意識を改革し、女性でも管理職になれる職場の雰囲気や、管理職になりたいという女性社員の意識を醸成することが重要です。
家庭と仕事の両立を実現できる制度を整備する
女性管理職が増加しない原因にもあげたように、多くの女性は結婚や出産をすると管理職を続けづらいと考えているようです。一般的に、女性はライフステージの変化による影響を受けやすく、結婚や出産に伴い退職する方も多くいます。ライフステージが変わった後も管理職としての職務を全うできるよう、家庭と仕事を両立できる制度を整備することが重要です。
具体的には、育児休業を取得しやすい職場環境を構築したり、育児をサポートするための福利厚生を充実させたり、育休後の復帰を支援する制度を導入したりするなどの施策が考えられます。また女性社員だけでなく、男性社員にも積極的に育休等を取得させるなど、職場の意識を高める施策も進めていきましょう。
柔軟な働き方を取り入れる
結婚・出産後も管理職を続けられるよう、柔軟な働き方を取り入れることも重要です。例えば、コロナ禍で一気に浸透したテレワークは、家庭を守る女性に取っては非常に有効な働き方といえるでしょう。出社を求める場合でも、保育園などへの子どもの送り迎えをサポートするため、時差出勤や時短勤務を許可するなどの配慮が必要です。男性社員も育児に参画しやすいよう、フレックスタイム制を導入するのも有効かもしれません。女性管理職が結婚・出産に伴い退職しなくても済むよう、柔軟な働き方を実現することが大切です。
女性管理職を増やすメリット
社員のモチベーションが向上する
性別に関わらず社員の能力を評価することは、透明性の高い公平公正な人事を意味します。女性であっても日頃の努力や能力が評価され管理職に抜擢されれば、社員のモチベーションは大きく向上するでしょう。努力や能力が評価された結果であれば、周囲の納得も得やすいはずです。
女性社員を積極的に管理職に登用することで、職場に多様性が生まれ生産性の向上も期待できます。また女性管理職の前例ができることで、他の女性社員もキャリアプランを描きやすいという点もメリットです。
優秀な人材を獲得し、流出を防止できる
女性が働きやすい職場は企業イメージの向上に直結するため、優秀な人材を獲得しやすくなります。女性管理職が活躍している職場であれば、採用市場においてキャリア志向の優秀な女性にも選択されやすいはずです。
女性が活躍する職場は、女性だけでなく男性にもメリットがあります。ライフステージの変化に伴う影響を受けやすい女性が活躍しているということは、柔軟な働き方が実現できているということです。柔軟な働き方は、ワークライフバランスを大切にする現代ではとても重視される傾向にあります。ワークライフバランスを取りやすい職場であれば、優秀な人材を獲得しやすく、人材の流出も防止することができるでしょう。
ESG投資で投資家から選ばれやすくなる
ESGを重視する投資家にとっては、企業における女性の活躍状況は非常に重要です。ESGとは、Environment・Social・Governanceの略語で、日本語では環境・社会・ガバナンスを意味します。ESG投資は非財務情報であるESG情報を投資の判断材料に組み込み、長期的な投資リターンの向上を実現する投資手法です。
女性取締役を有している企業は、そうでない企業よりパフォーマンスが良いという調査結果もあり、投資家は女性管理職の割合を重視する傾向にあります。女性管理職を増やすことで、ESG投資において投資家から選ばれやすくなるという点は大きなメリットです。
まとめ
女性管理職を増やす取り組みとメリットについて解説しました。女性管理職は増加傾向にあるものの、まだまだ少ないのが現状です。女性管理職を増やすことで「社員のモチベーションが向上する」「優秀な人材を獲得しやすくなる」「ESG投資で投資家から選ばれやすくなる」などのメリットがあります。当記事でご紹介した取り組みを参考に、女性管理職を増やす施策を積極的に導入してみましょう。