働き方改革関連法でフレックスタイムの清算期間が3ヶ月に延長され、企業は制度の導入を進めやすくなりました。フレックスタイム制では、時間外労働の扱い方が通常の働き方のものと異なるため、注意が必要です。今回は、清算期間などの用語の意味や、フレックスタイム制下での残業時間・時間外労働の取り扱い、導入の注意点について解説していきます。
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フレックスタイム制とは、一定期間についてあらかじめ決められた総労働時間の中で、労働者が日々の始業・終業時刻や労働時間を自ら決めることができる制度です。
フレックスタイム制に関する用語説明
まずは、フレックスタイム制の説明に欠かせない用語を確認します。
- 清算期間
- 法定労働時間
- 総労働時間
- 実労働時間
- 時間外労働
フレックスタイム制において労働者が労働すべき時間を定める期間を指します。例えば、清算期間を1ヶ月とし、清算期間中に労働すべき時間(総労働時間)は155時間といった形で利用されます。今回の法改正により、清算期間の上限が1ヶ月から3ヶ月に変更になりました。
労働基準法で定められた労働時間の制限時間を指します。週の法定労働時間は、40時間以内となっています。
企業が清算期間内に労働すべきであると定める時間です。いわゆる所定労働時間です。総労働時間は、「清算期間の暦日数÷7×40時間」で求められる時間以下でないといけません。したがって、例えば清算期間を1ヶ月に設定すると、月の暦日数が31日の場合は177.1時間、30日の場合は171.4時間となります。
実際に労働者が労働した時間を指します。
法定労働時間を超える分の労働を指します。例えば、歴日数が31日の月に180時間労働した場合、2.9時間の時間外労働となります。
フレックスタイム制下の残業時間の取り扱いについて
フレックスタイム制では、その性質上、残業時間を日単位で考えることができません。そのため、フレックスタイム制適用時の残業時間は、清算期間における総労働時間に対する実労働時間の超過で考えます。具体例として、次の場合を見てみましょう。
- 清算期間:1ヶ月、総労働時間:155時間、実労働時間:170時間の場合
残業時間は、実労働時間から総労働時間を引いて、170時間-155時間で15時間です。1日の労働時間の多寡にかかわらず、1ヶ月の残業時間が15時間と計算されることになります。
ここで注意すべきポイントとして、法定内残業と法定外残業の区別があります。総労働時間を超えているが法定労働時間を超えていない残業時間分が法定内残業で、法定労働時間を超えてしまっている時間外労働分が法定外残業です。法定内残業では残業代の割増率が1.0倍ですが、法定外残業では残業代の割増率が1.25倍になるので、残業代を計算する上で非常に大切です。
例えば、次の場合を考えてみましょう。
- 清算期間:1ヶ月、暦日数31日で法定労働時間:177.1時間、総労働時間170時間、実労働時間:180時間の場合
残業時間の合計は、実労働時間から総労働時間を引いた、180時間-170時間=10時間です。そのうち、時間外労働となる法定外残業は、実労働時間から法定労働時間を引いた、180時間-177.1時間=2.9時間です。対して法定内残業は、残業時間の合計から法定外残業時間を引いた、10時間-2.9時間=7.1時間です。
この例では残業時間の計算は比較的単純ですが、計算が特殊な場合もあるので、次節で解説していきます。
フレックスタイム制下の時間外労働の取り扱いについて
清算期間が1ヶ月以内の場合
清算期間を通じて法定労働時間を超えて労働した時間が法定外残業時間となります。
- 実労働時間:180時間、法定労働時間:177.1時間の場合
法定外残業時間は、実労働時間から法定労働時間を引いた、180時間-177.1時間=2.9時間です。
清算期間が1ヶ月超3ヶ月以内の場合
この場合、少し計算が特殊になります。法定外残業時間は、以下の2つの労働時間の合計となります。
- 1ヶ月ごとに週平均50時間を超えた労働時間
- 清算期間を通じて法定労働時間を超えた労働時間(上記1.でカウントした労働時間を除く)
フレックスタイム制では、法定労働時間を超えた分の労働時間を翌月に繰り越すことが可能ですが、労働者を繁忙月などに極端に多く働かせることを防ぐため、1月あたりで週平均50時間を超える分は時間外労働として法定外残業時間に数えられます。この労働時間は各月で計算され、各月の法定外残業時間となります。
この労働時間は、清算期間の最終月の法定外残業時間となります。
次の具体例を元に、法定外残業時間を計算してみましょう。
- 4月~6月の3ヶ月が清算期間で、実労働時間が4月:225時間、5月:170時間、6月:150時間である場合
まず、上記1.の「1ヶ月ごとに週平均50時間を超えた労働時間」を求めます。歴日数は4月:30日、5月:31日、6月:30日なので、各月の週平均50時間の労働時間は、4月:214.2時間、5月:221.4時間、6月:214.2時間となります。このうち、実労働時間が超過しているのは4月の10.8時間分だけですので、4月の法定外残業時間が10.8時間となります。
次に、上記2.の「清算期間を通じて法定労働時間を超えた労働時間」を求めます。4月から6月までの歴日数の合計は91日ですので、法定労働時間は520時間です。この事例における3ヶ月の実労働時間の合計は545時間ですので、実労働時間から法定労働時間を引き、さらに1.でカウントされた法定外残業時間を引いた、545時間-520時間-10.8時間=14.2時間が2.の法定外残業時間となります。これは最終月の6月の法定外残業時間に数えられます。
したがって、各月の法定外残業時間は、4月:10.8時間、5月:0時間、6月:14.2時間となります。
フレックスタイム制下の残業代の計算方法
フレックスタイム制下の残業代を求めるための計算式は、以下のとおりです。
- 残業代=1時間当たりの基礎賃金×残業時間×割増率
- 法定外残業(月60時間以下):25%以上
- 法定外残業(月60時間超):50%以上
- 法定休日に労働した場合:35%以上
- 深夜労働:25%以上
計算式においての「1時間当たりの基礎賃金」とは、月の基本給と諸手当の合計額を月平均所定労働時間で割って算出した金額をいいます。ただし、残業手当や家族手当などの法令で定められた手当は除外されるので注意が必要です。次に「残業時間」は、実労働時間の合計のうち総労働時間を超過した分を指します。
また、代表的な「割増率」については以下のとおりです。
例えば、月60時間以下の法定外残業に加えて深夜労働が生じた場合には、25%+25%=50%の割増率が適用されるため注意しましょう。
フレックスタイム制導入の注意点
労使協定の届出が必要な場合
従来は、フレックスタイム制を行うにあたって、就業規則への規定と労使協定で所定の事項を定めることが必要でした。今回の法改正で清算期間が3ヶ月以内に延びたことに伴い、清算期間が1ヶ月を超える場合には労働協定を所轄労働基準監督署長に届出する必要があるというルールが策定されました。違反した場合には罰則もあるので注意しましょう。清算期間が1ヶ月以内の場合は届出不要です。
特例措置について
週の法定労働時間が40時間から44時間に伸びるという特例措置があります。対象となるのは、業種が、商業、映画・演劇業、保険・衛生業、接客・娯楽業で、常時労働者の人数が10人未満の事業場となっています。ご自身の企業が当てはまるかチェックしてみてください。
時間外労働の上限規制について
時間外労働は、2019年4月(中小企業は2020年4月)から上限規制が強化されます。具体的には、時間外労働は月45時間以内、年360時間以内となります。特別な事情がある場合は、年6回まで上限を超えることができ、年720時間まで時間外労働ができるようになる特別措置もあります。これは、フレックスタイム制でも当てはまるので、注意しましょう。
まとめ
今回は、フレックスタイム制の残業時間について説明してきました。法定内残業と法定外残業(時間外労働)の違い、時間外労働の取り扱いについて注意しながら、フレックスタイム制の残業時間を管理するようにすると良いでしょう。
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