
マイスター制度とは、高度な専門技術を持つ従業員を「マイスター(名人)」として認定し、技術継承や指導役を担ってもらう仕組みを指します。導入することによって、後継者の育成やマニュアル化しにくい技能の承継などが可能になります。一方、制度運用コストや新技術の革新が阻害されるといったデメリットも挙げられます。今回は、マイスター制度を導入することで得られる効果やデメリットなどについて解説します。
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ドイツ発祥の専門技能者育成制度
マイスター制度は、特定分野で高度な技能を持つ人材を育て、社会的に認定するドイツ発祥の制度です。「マイスター」は「親方」を意味し、熟練した技術者として高い評価を受けます。資格取得には職業訓練や実務経験に加え、厳しい試験への合格が求められるため、技術力だけでなく教育能力や経営知識の習得も欠かせません。この制度は職人の育成や技術継承に大きく貢献しており、その成果が認められて他国でも導入されつつあるようです。
マイスター制度の目的
マイスター制度は、産業の発展に必要な高度技術者を育成し、技能の継承と品質向上を目指す仕組みです。専門的な能力を持つ人材を計画的に育てることで、組織や産業全体の競争力強化に寄与すると考えられます。また、技能の公的認定を通じて専門職の社会的地位を高め、若手後継者が自分に合った分野で学び、専門職として成長できる環境を整える点も特徴です。さらに、地域特有の技術を次世代につなぎ、地域経済の活性化を促す効果も期待できるでしょう。
国内における企業の導入例
国内の企業でも、マイスター制度を参考にした社内認定制度の導入が進んでいます。製造業や伝統工芸、サービス業では、熟練従業員を社内マイスターとして表彰し、教育役に任命する例が増えているようです。例えば通信業界の販売代理店では、スタッフ育成のためにスキル体系を整備し、年4回の試験で能力を評価しています。飲食業では、厨房の衛生管理を担える専門スタッフを育成する体制を整えてきました。このように、社内マイスター制度は技術の継承や教育体制の強化に大きく貢献するでしょう。
マイスター制度を導入する際のポイント
次世代人材を見据えて長期的な育成を計画する
マイスター制度を導入する際は、即戦力ではなく、10年後の組織を支える人材を計画的に育てる長期的な視点を意識しましょう。また、制度運営には資金計画も欠かせないため、政府補助金や産業界の支援、教育機関自体の収益など、複数の資金源を確保する戦略が求められます。さらに、制度が現場文化に馴染むよう、職人同士の尊敬や相互協力を重んじる社内環境の整備も必要です。
公正で透明性の高い運営体制を考える
マイスター制度を運営する際は、公平さと透明性を徹底することが基本です。参加者の選抜基準や資格取得条件、評価方法を明確化することで、制度への信頼感を高めていきます。さらに、社内マイスターに必要なスキルや資質を具体的に示し、それに基づいた育成プログラムを設計することが重要となります。制度開始後は定期的な評価とフィードバックの反映を実施し、プログラムを改善するサイクルを確立することで、柔軟で効果的な運営が可能となるでしょう。加えて、成果や貢献度に応じた報酬制度を整えることで、社内マイスターの士気やモチベーション保持が期待できます。
社外マイスターによる技能習得
社外マイスターから技能を学ぶことは、組織内の技術力向上や人材育成において大きく貢献します。例えば、ものづくりマイスターは、厚生労働省が創設した制度で、建設業と製造業など129の職種を対象としています。認定には特級、1級、単一等級の技能士資格や、技能五輪全国大会での優秀な成績、15年以上の実務経験などが求められます。こうした要件を満たす人材は、ものづくり分野で高い技能を持つ専門家として認定されます。社外のものづくりマイスターの指導を受けることで、組織の技術力向上や若手育成に寄与すると言えるでしょう。
マイスター制度のメリット・デメリット
メリット1:技術継承による次世代育成
熟練職人の技術を次世代へ受け継ぐためには、計画的な教育体制が不可欠です。属人的な指導に頼らず、順序立てて技能を伝えられる環境を整えることで、技術のばらつきが生じにくくなる点は大きな利点と言えるでしょう。また、指導を担う職人が専門職として評価されることで社会的地位が向上し、若手の職人離れを防ぐ効果も期待できます。近年は多くの分野で高度技能者が不足しているケースは少なくありません。計画的な育成を進めることで、重要なノウハウを組織的に継承し、企業の競争力向上にも貢献すると考えられます。
メリット2:生産性の向上
豊富な経験と高度な技術を持つ職人が指導役となることで、組織全体の技能や知識がより効率的に共有されます。これにより、作業の合理化が進み、生産効率が向上するでしょう。また、技術レベルを資格化することで従業員が自身の成長を実感しやすくなり、学習意欲や業務への取り組み方も前向きになります。個々が明確な目標に向かって努力する過程で、技能や知識が自然に蓄積され、組織全体の技術の底上げにつながるのです。
デメリット1:導入には手間がかかる
計画的な人材育成を進めるには、制度設計や評価基準の策定、試験・認定プロセスの構築など、具体的な枠組みを整える必要があります。専門知識や外部からの助言も必要なため、想定以上の時間がかかる場合もあるでしょう。また、組織内での周知や教育活動も欠かせません。関係者への説明や意識啓発、教育プログラムの開発など、情報共有やスキル習得の取り組みには労力が必要です。さらに、従来のOJT中心の職人育成とは異なり、学問と実技の両面から体系的に育成する仕組みとなるため、従業員にとっても新しい環境への適応が求められるでしょう。したがって、すぐに結果を求める場合にはそぐわないかもしれません。
デメリット2:新技術の習得が遅れる
技術やノウハウを重視した既存の育成では、新しい技術や知識の習得が後回しになる可能性があります。経験豊富な職人や専門家が自身の技術を後継者に伝えることに重点が置かれるため、既存のプロセスや方法が固定化しやすく、変革や新しいアイデアの導入が滞る可能性があります。それだけでなく、学習やトレーニングに時間と労力を費やす必要があるため、業務効率に影響を感じたり、そのため一部の従業員の気力が低下することも考えられます。このことから、企業による支援や、フィードバックを通じて従業員が目標を達成しやすい環境を整えることが重要です。
まとめ
マイスター制度は、高度な技術を持つ人材を計画的に育て、技術継承や生産性向上を促進することが可能な仕組みです。熟練者のノウハウを次世代に継ぐことで組織力アップにつながりますが、導入には時間や手間がかかる難点もあります。それでも、適切に運営することで次世代人材の育成や業績向上に大きく貢献するでしょう。
