管理職に深夜手当は必要?

2022年5月13日


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労働基準法では、管理監督者に就く従業員には時間外労働や休日労働の規定が適用されないことになっています。そのため、管理監督者に対しては、残業代や休日手当の支払い義務は発生しません。一方で、企業内において一定の役職を担う従業員を管理職と呼ぶことがあります。こうした管理職には、残業代や休日手当、深夜手当も支払われないのでしょうか。今回は、管理職の割増賃金に関する規定の内容、管理職の深夜手当についての考え方、管理職における深夜手当の計算方法について解説します。

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管理職に割増賃金は支払われるの?

そもそも管理職とは

一般に管理職というと、部長や課長など企業内で一定の責任を持つ立場にある人を指します。企業によっては、店長やチームリーダーのようなマネジメントを行うポジションを管理職と呼ぶ場合もあるでしょう。しかし、必ずしも管理職が管理監督者とイコールという訳ではありません。労働基準法における「管理監督者」とは、「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされています。一般労働者とは働き方も待遇も異なる、「経営者側の人間」ということを覚えておきましょう。
管理監督者に該当するか否かについては、大まかには以下の4点について判断基準が示されています。

  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること
  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること
  • 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
  • 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

このような判断基準を踏まえると、役職名が「○○長」だとしても、「管理監督者」に該当しない場合は少なくありません。役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって総合的に判断することが必要です。

管理職でも割増賃金が必要なケース

労働基準法第41条2号では、労働基準法に定める労働時間、休憩及び休日に関する規定に対して、管理監督者を適用除外対象としています。よく「管理職には残業代は出ない」と言われることがありますが、これはこの法律の条項を根拠にしているようです。しかし、管理監督者の要件を満たさない限りは、いくら管理ポジションであっても一般の従業員と同様に割増賃金の支払いは必要なので注意が必要です。
最近では、働き方や待遇は一般従業員と同程度であるにもかかわらず、管理監督者として扱われる「名ばかり管理職」が問題視されています。単に店長やマネージャーであるというだけで、長時間労働を強いられたり、割増賃金が支払われなかったりするケースはいまだに後を絶ちません。このような状況は労働基準法に違反した不法行為となるので気を付けましょう。

管理監督者でも深夜手当は支給される

上述の通り、管理監督者には時間外労働に対する割増賃金は支給されません。それでは、深夜手当の場合はどうなのでしょうか?
深夜手当については、労働基準法第37条第4項に定められており、原則として午後10時から午前5時までの労働に対しては25%以上の割増賃金の支払いを義務付けています。深夜に業務をした場合は、管理監督者にも労働時間に応じて割増賃金を支払わなければなりません。いくら労働時間の規定が及ばない管理監督者であっても、深夜にまで及ぶ労働は通常業務とはいえないからです。

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管理職の割増賃金に関わる判例を見てみよう

不法行為をするつもりがなくても、企業側に「管理監督者」についての認識が足りない場合もあります。「名ばかり管理職」の問題はこうした認識不足から生じることが少なくありません。管理職と管理監督者の違いについてしっかりと認識を深めるためにも、過去の判例を確認しておきましょう。

レストラン「ビュッフェ」事件

レストラン「ビュッフェ」事件は、レストランの店長が運営会社に対し、残業手当の支払いを求めた裁判です。運営会社は店長を管理監督者であるとみなし、残業手当を支払っていませんでした。この店長は、コックやウエイターなどの従業員を統括する立場であり、従業員の採用や材料の仕入れ、売上金の管理にも携わっていたそうです。
大阪地方裁判所は、店長の業務内容を考慮しても、経営者と一体的な立場にあるとはいえないと判断し、この店長は管理監督者には該当しないと判決を出しています。

彌榮自動車事件

彌榮自動車事件は、タクシー会社の係長と係長補佐が所属会社に対し、残業手当の支払いを求めた裁判です。
原告2名の主な業務には、タクシー乗務員の出勤確認や運行業務の管理、外部からの苦情処理であり、会社が定めた勤務形態に従い、一カ月の勤務時間は約270~290時間にも及んでいました。給与については一定額で、運営会社は2名を管理監督者とみなしていたため、残業手当は支給されていませんでした。
京都地方裁判所は、原告2名とも管理監督者に該当しないと判決を出しています。会社が定めた業務や勤務時間に従事していたため、業務への裁量権が無かったことが大きな理由です。また、会社の営業方針を決定する会議へ出席していないことなどから、経営に関わる立場にもなかったと判断されました。

国民金融公庫事件

国民金融公庫事件は、金融機関の支店業務役であった職員が、時間外労働分の賃金が未払いであることを不服として起こした裁判です。労働基準法では、都市銀行以外の金融機関において、支店長の職位は管理監督者の範囲に含めて差し支えないと規定されていることから、割増賃金の支払い対象外とされていました。
しかし、原告である職員の場合は、経営者側と同等の権限を有しているとまでは判断されず、管理職には属さない補佐的な役割であると指摘されています。
東京地方裁判所は、原告は支店長ではあるものの、管理監督者には該当しないと判決を出しています

管理監督者の労働環境を考えよう

管理職の労働時間の把握は義務化されている

2019年4月に施行された改正労働安全衛生法により、労働者の労働時間把握が義務化されました。この法律は、一般の従業員はもちろんのこと、管理監督者も対象となっています。労働時間の把握方法として、タイムカードやコンピューターなどの電子機器を用いた客観的な記録方法が求められます。また、労働基準法第109条に基づき、労働時間の記録に関する書類について3年間の保管義務があります。

年次有給休暇は管理監督者にも認められている

労働基準法第39条では、労働者へ与える年次有給休暇について規定しています。この法律は、管理監督者にも適用されるため、勤務年数に応じた年次有給休暇を与えなければなりません。さらに、年に10日以上の有給休暇がある管理監督者は、年5日以上の有給休暇取得義務の対象者となります。

管理監督者にも健康的な働き方を

企業には、従業員の安全と健康を守る安全配慮義務があります。管理監督者であっても、長時間にわたる労働や思うように休暇が取れない状況は心身に悪影響を及ぼします。労働基準法41条の規定は、法定労働時間を超えていたとしても、時間外労働として取り扱わないということを定めているにすぎません。管理監督者にも所定労働時間を定め、実質的な労働時間を管理していく必要があります。

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まとめ

法律上定義されている管理監督者と、企業により基準の異なる管理職は本来区別されるべきです。しかし、企業によっては適切に解釈されず、同一視されることも少なくありません。本来は管理監督者に該当しないはずが、管理職だからという理由で不当な長時間労働を強いられる状況はあってはなりません。こうした名ばかり管理職のトラブルは裁判に発展する場合も多く、労働者側にも注意喚起がされています。自社が不名誉なトラブルに巻き込まれるのを防ぐためにも、「管理職と管理監督者の違い」について現場レベルで認識を深め、適切な労働環境を構築しましょう。

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