現在の日本では新卒の新入社員の約3人に1人が3年以内に離職しています。新卒の新入社員に限らず、離職率の高さは採用や教育のコスト面などにおいて、企業にとって様々なデメリットがあります。そのようなデメリットを減らすため、新卒の新入社員が離職する原因をしっかりと把握し、離職を減らすための対策を行いましょう。今回は、新卒の離職率の現状と離職の原因、離職率が高いことによって生じる問題、新卒の離職に対して企業が行うべき対策について解説します。
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新卒の離職率の現状
厚生労働省は、令和2年度における新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者36.9%、新規大卒就職者31.2%であったことを公表しました。令和2年度における新規学卒就職者の離職率は、学歴別および卒業年別とも、例年に比べ低下しているとのことです。しかし依然として、入社後3年以内に辞めてしまう社員の比率は全体の30%以上を占めています。現状、新卒の新入社員の約3人に1人が3年以内に離職していることになります。
新卒が離職する主な原因
仕事を辞める理由はその人それぞれですが、新卒の離職理由には一定の傾向があります。離職する主な原因として、以下の理由が挙げられます。
- 職場の人間関係が好ましくない
- 労働条件が悪い
- 能力・個性・資格を生かせない
- 仕事の内容に興味を持てない
相談できる上司や同僚、先輩がいないなど周囲と円滑なコミュニケーションを取りづらい環境から仕事を辞めてしまう人も少なくありません。また、入社前にイメージしていた職場環境と異なり、思うように馴染めないケースもあります。
給与が低い、残業が多い、休日がとれないなど労働条件の悪さも離職の原因となっています。採用面接時に説明や確認を徹底し、少しでも改善に努めることが大切です。
分析が得意なのに全く関係ない業務を任される、積極的なコミュニケーションが苦手なのに営業職を任されるなど、能力や個性と合致していない業務内容の場合も離職につながります。専門的な資格を取得しているのに生かせない場合も離職のきっかけとなります。
新入社員だからといって誰にでもできる単純作業ばかり任せていると、モチベーションが低下して離職してしまう場合があります。意欲の高い新卒社員ほど自分の能力を発揮できないと不満に感じやすいことを留意しましょう。
新卒の離職率が高い業界
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」は、新卒の産業別就職後3年以内離職率のうち、離職率の高い上位5産業として以下を公表しています。
【高校】 | 【大学】 | ||
---|---|---|---|
宿泊業・飲食サービス業 | 61.1% | 宿泊業・飲食サービス業 | 51.5% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 56.9% | 生活関連サービス業・娯楽業 | 46.5% |
教育・学習支援業 | 50.1% | 教育・学習支援業 | 45.6% |
小売業 | 47.8% | 医療、福祉 | 38.6% |
医療、福祉 | 46.2% | 小売業 | 37.4% |
新卒の離職率が高いことで生じる問題
採用や教育のコストが無駄になる
新卒採用における1人当たりの平均採用コストは93.6万円とされています。採用コストには、求人媒体への掲載費用や自社の採用サイトの制作費などの外部コストに加えて、採用担当者の人件費やリファラル採用における社員へのインセンティブなどの内部コストが発生します。採用後は、人材を教育するためのコストも発生するのです。産労総合研究所の「2022年度の教育研修費用の実態調査」によると、2021年度の従業員1人あたりの教育研修費用は平均29,904円でした。早期離職によって、採用や教育コストが無駄になってしまうのです。
従業員のモチベーションが低下する
新卒として一緒に入社したメンバーが辞めてしまうと、既存の従業員のモチベーション低下につながります。早期離職が毎年繰り返される場合、連鎖して大量離職が起こる可能性も考えられるでしょう。社内の雰囲気の悪化や生産性の低下などのリスクも伴います。
企業のイメージが悪くなる
新卒の離職率が高いことで「ブラック企業」のイメージが定着します。その結果、採用活動を行っても必要な人材が確保できないだけでなく、消費者からのイメージも悪くなります。企業イメージが悪くなることで、事業存続に大きな影響を及ぼしてしまうのです。
新卒の離職への企業の対策
採用のミスマッチを防止する
会社説明会や面接などの採用活動内で、自社の良い面だけでなく入社後の厳しさなども伝えておく必要があります。面接では直接伝えづらいこともあるかもしれませんが、就業条件についてしっかり説明を行い、相互理解を深めておくことが重要です。
メンター制度を導入する
メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有する社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して行う個別支援活動のことです。キャリア形成上の課題解決を援助したり、職場内での悩みや問題解決をサポートしたりします。メンター制度を導入することで、「社内の人間関係がうまくいかない」「仕事がうまくいかない」など新入社員が抱える悩みの予防が期待できます。
社内コミュニケーションを改善する
気軽に相談や質問をしやすい雰囲気を作り、上司や先輩から積極的にコミュニケーションを図るようにしましょう。定期的な面談を行い、新入社員が率直な意見を言える場を設けることも重要です。部署内で相談しづらい内容に対しては、人事部などに相談窓口を設けることで社員が仕事上の不満を溜め込むことを防げます。離職のサインを見逃さず、手遅れにならないうちにフォローできるように努めましょう。
まとめ
ここまで、新卒の離職を防ぐ方法や、離職率が高い原因についてご紹介しました。新卒の離職率が高いと、採用や教育コストが無駄になるだけでなく、従業員のモチベーション低下や企業イメージの悪化などさまざまな損失を招きます。自社で長く働いてもらうためにも、採用のミスマッチを防止し、新卒社員が相談しやすい職場環境づくりを実践しましょう。