プレイングマネージャーとは、職場で業務を行う「プレイヤー」としての立場と、管理職である「マネージャー」を兼任する立場の人のことを指します。プレイングマネージャーには、現場の第一線で業務を的確に遂行する能力だけでなく、管理職として組織を引っ張り、部下を育成する能力が求められます。しかし優秀であるプレイングマネージャーは、部下に頼らずに自分で業務を抱えすぎてしまう傾向があり、組織全体としても悪影響を及ぼしてしまいます。そのため、業務の細かな洗い出しを行い、部下に任せられるものや効率化できる部分を整理していくことが重要です。
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プレイングマネージャーとは
プレイングマネージャーはいわゆる「選手権監督」を表す造語で、実務を行う「プレイング(Playing)」に管理監督者を表す「マネージャー(Manager)」を組み合わせた和製英語です。ちなみに、英語圏で「Playing Manager」と言うと、「遊んでいるマネージャー」という意味になってしまいます。正しくは「Player Manager」と言うため、気をつけましょう。選手権監督を意味するプレイングマネージャーは、現場の最前線で実務をこなしつつ、部下の指導や育成も同時に担う人材です。一般的な管理職は部下のマネジメントが主な仕事ですが、プレイングマネージャーは自らも実績を上げて組織に貢献する点が異なります。
プレイングマネージャーの役割
プレイヤー兼マネージャーであるプレイングマネージャーは、個人とチーム両方の目標を達成に導くのが役割です。一プレイヤーとして成果を出しつつも、チームを目標達成に導く役割も果たさなければなりません。そのため、自ら積極的に行動して周囲の信頼を獲得し、チームをまとめ上げ結束を高める役割が求められます。メンバー間の連携を促すのはもちろん、チームの管理監督者でもあるプレイングマネージャーは、チームと組織の架け橋を担うのも重要な役割です。プレイングマネージャーの仕事は、個人目標の達成だけでなく、チーム目標の達成や組織と現場の橋渡し、マネジメント、人材育成など、非常に多岐にわたります。
プレイングマネージャーが必要とされる背景
プレイングマネージャーが必要とされる背景には、景気後退の影響があります。バブル崩壊に伴う経営悪化により、人員削減に踏み切る企業が急増しました。売り上げに直結しない非生産層を中心にリストラを進めた結果、管理職の人数が大幅に減少します。その結果、マネジメントを行いつつ売り上げにも貢献するプレイングマネージャーが求められるようになったのです。また、IT化やグローバル化といった社会の変化も大きな影響を与えています。VUCA時代とも言える現代は社会経済環境が目まぐるしく変化しており、迅速な意思決定が求められるようになりました。現場を熟知しつつ経営層の意向も把握したプレイングマネージャーは迅速に意思決定を下せるため、その必要性は日増しに高まっています。その他には、成果によって評価する成果主義が台頭してきたことも、自ら成果を上げて業績に貢献するプレイングマネージャーが求められる要因です。
プレイングマネージャーに必要な能力
コミュニケーションスキル
プレイングマネージャーは自ら成果を上げるだけなく、チームを統率し目標達成に導き、部下の指導や育成も担います。チームのメンバーとは日頃から密にコミュニケーションを取って、目標の設定、将来的なビジョンの共有、業務進捗の管理、仕事に対する考え方の確認などを行わなければなりません。また、チームを代表するリーダーでもあるプレイングマネージャーは、他部署や他部門、取引先など、社内外のさまざまな方と触れあう機会があります。相手の話を理解しこちらの意見を伝え、ときにはより良い結果を導く交渉も必要です。そのため、プレイングマネージャーには高度なコミュニケーション能力が求められます。
マネジメント能力
管理監督者でもあるプレイングマネージャーは、人材や予算といったリソースをマネジメントする能力が求められます。プレイヤーとして優秀な人材が、必ずしもマネージャーとして優秀とは限りません。プレイングマネージャーは個人の業務を進めながらチームの目標を達成しなければならないため、組織を管理する能力が必要です。例えば、部下の能力を見極めて適切に人材を配置する、チームに割り振られた予算を整理し業務ごとに配分する、といった業務を行う必要があります。こういった業務を適切に行うには、人材や予算などのリソースをマネジメントする能力が必要です。
時間・タスク管理能力
管理職であると同時に一プレイヤーでもあるプレイングマネージャーは、高度な時間管理能力やタスク管理能力が求められます。なぜなら、プレイヤーとして個人の業務をこなしながら、チームの目標を達成に導く役割も担っているからです。プレイングマネージャーが担う業務は非常に多岐にわたるため、タスクの優先順位を明確化し重要度の高いタスクから優先して実施する、タスクを細分化して適性を見ながらチームのメンバーにタスクを割り振る、などの必要があります。また、自分自身の仕事が期限までに完了するのはもちろん、割り振ったタスクの進捗が遅れないよう、時間管理能力や進捗管理能力も必要です。
プレイングマネージャーの設置におけるデメリット
オーバーワークになりやすい
選手権監督であるプレイングマネージャーは、プレイヤーとしての業務とマネージャーとしての業務を両方こなす必要があるため、おのずと仕事量は多くなりがちです。仕事を抱え込みすぎてしまった結果、業務過多に陥ってしまう恐れもあります。そもそも、プレイングマネージャーに登用される人材は責任感が強く、自信に溢れる方が多いのも事実です。仕事を抱え込みすぎてオーバーワークにならないよう、部下にタスクを割り振ったり、こまめにスケジュール管理を行ったりする必要があります。上司や周囲がサポートする体制を構築し、必要に応じてプレイングマネージャーをフォローするのも大切です。
人事評価が難しい
プレイヤーとしての側面とマネージャーとしての側面を持つプレイングマネージャーは、個人目標やチーム目標といった複数の評価軸があるため、仕事に対する評価基準が曖昧になりがちです。例えば、プレイヤーとしての活躍が目覚ましく個人目標は達成したものの、チームとしての結果は一歩及ばずチーム目標は未達となった場合などは、会社としても判断が難しいところかもしれません。個人としても、チーム目標は未達でも個人としては結果を残しているので問題ないと考え、仕事の軸がぶれてしまう恐れもあります。プレイングマネージャーは正しい役割認識を持つこと、会社は期待する役割や評価基準を明確にし、フィードバックすることが大切です。
マネジメント不足になりやすい
プレイングマネージャーは自分自身も一プレイヤーとして業績に貢献する必要があるため、プレイヤーとしての側面が大きくなりすぎると業務のバランスが偏り、マネジメント不足に陥ってしまいます。そもそも、プレイヤーとして優秀な人材が、必ずしもマネージャーとして優秀とは限りません。さらに、プレイヤーとして優秀な人材は、マネージャーとして不足している部分を、プレイヤーのスキルで補っているケースもあります。マネジメント不足の状態が続くとチームがまとまらなくなる恐れもあるため、マネジメント手法を学ぶ研修を実施するなど、マネージャーとしてのスキルを磨く機会を提供しましょう。
まとめ
今回はプレイングマネージャーについて解説しました。いわゆる選手権監督を意味するプレイングマネージャーは、プレイヤーとして業務をこなしつつ、マネージャーとしてチームを牽引する人材です。現場を熟知し経営層の意向も把握したプレイングマネージャーは意思決定のスピードが速く、変化の激しいVUCA時代に対応しやすいメリットがあります。一方、オーバーワークに陥りやすい、人事評価が難しい、マネジメント不足に陥りやすい、といった点はデメリットです。