福利厚生とは企業が従業員に対して通常の賃金・給与に加えて支給する非金銭報酬のことです。主なものとしては家賃補助や交通費補助などがあげられますが、近年はそれらに加えて、社員にプラスとなる効果を期待してユニークな福利厚生を設けている企業が増加しています。ユニークな福利厚生があることで採用の強化が期待できる等、他社との差別化が図れるでしょう。今回は、福利厚生の目的や種類、ユニークな福利厚生の例、ユニークな福利厚生を導入する際のポイントについて紹介します。
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福利厚生の目的
福利厚生の目的は大きく分けて、採用促進と離職防止の2つです。近年の新卒・中途採用は労働人口の減少も影響し、なかなか優秀人材の確保が難しい現状です。また、求職者の傾向として応募先の選定基準の一つとして福利厚生を確認する方が増加しています。同業他社との競争に勝ち抜くには、独自の福利厚生を導入して差別化を図ることが有効です。さらに、離職率の防止にも福利厚生は役立ちます。ワークライフバランスを重視し、働きやすい環境整備の一環として福利厚生を活用すれば早期退職を防ぎ定着率の向上にも繋がります。
福利厚生の種類
- 法定福利厚生
法律によって企業が必ず取り入れなければならない福利厚生です。企業は原則として、従業員の社会保険料の一部または全額を負担する義務があります。負担した額が法定福利日として計上される仕組みです。負担する社会保険料は原則、以下のとおりになります。
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
- 子ども・子育て拠出金
- 雇用保険
- 労災保険
従業員が怪我または病気の際に手当等を給付する制度です。費用は、従業員と企業が折半して支払う仕組みで、企業の負担分が福利厚生に該当します。
40歳以上になったら加入する保険のことです。一定の条件を満たすと1~3割負担で一定の介護サービスが受けられます。介護保険は、2種類あり40歳~64歳までが加入できる保険の支払いを従業員と企業が折半して負担する仕組みです。企業の負担分が福利厚生に該当します。
従業員が高齢化して働けなくなったり、病気などで障害または亡くなってしまったりした場合に給付される保険です。従業員と企業が折半して支払う仕組みで、企業の負担分が福利厚生に該当します。
主に、児童手当の財源にあたる一部として納めるものです。厚生年金保険加入者を従業員に持つ企業は、子ども・子育て拠出金の支払い義務が発生します。企業が全額負担し、負担分が福利厚生に該当します。
従業員の雇用継続が困難な場合や育児休業した場合などに、失業手当や育児給付金などを給付する制度です。支払いは従業員と企業双方が支払う義務があり、企業の負担分が福利厚生に該当します。雇用保険は、所定労働時間が1週間で20時間以上、31日以上の雇用見込みがある人材の雇用を行った企業すべてに加入義務が発生します。
従業員が通勤時または業務中に怪我や病気、亡くなってしまった際に給付される保険です。保険料は企業が全額負担し、負担分が福利厚生に該当します。従業員を1人でも雇用している企業は、原則労災保険に加入する義務が発生します。
- 法定外福利厚生
法律で義務化されていない福利厚生のことで、企業が自由に定める独自の施策になります。内容は様々ですが、厚生労働省で以下の8種類に分類されています。
- 住宅関連
- 健康・医療関連
- 育児・介護支援関連
- 慶弔・災害関連
- レクリエーション関連
- 自己啓発・能力開発関連
- 形成関連
- その他
従業員が住宅の購入・賃貸契約する際の負担金額を軽減する目的で生まれた福利厚生です。法定外福利厚生の代表的な施策の一つで、社員寮や住宅手当の支給、持ち家補助などの施策を導入しています。
従業員の健康管理や健康維持を目的として生まれた福利厚生です。2015年から従業員へのストレスチェックが義務化され、社会全体でメンタルヘルスケアを重視する傾向があります。主な例としては、健康診断・人間ドック費用の補助、メンタルヘルス相談などが挙げられます。
女性の社会進出が当たり前となった現代では、重要が高まっている福利厚生です。家庭と仕事の両立を可能にする手厚い支援が様々用意されています。具体例として、社内に託児施設の設置、子供が病気をした際に休暇をとれる看護休暇などが挙げられます。
お祝い事や災害による被害にあった場合に給付される福利厚生です。主な例としては、結婚・出産お祝い金、災害見舞金などが挙げられます。
業務以外で従業員同士の親睦を深めるために行うイベント費用を負担する福利厚生です。主な例として、社員旅行や忘年会・新年会実施による補助などが挙げられます。
従業員の成長を後押しする福利厚生です。人材の成長は、生産性の向上にも繋がります。具体例としては、資格取得支援や海外研修制度などが挙げられます。
従業員の財産形成を支援する福利厚生です。資産形成・運用をサポートすることで、重要因又その家族の将来を安泰に繋げる効果が期待できるでしょう。具体例として、財形貯蓄制度やストックオプション制度などが挙げられます。
上記で挙げた以外にも、外食の際に利用できる食事券発行などの「食事関連」やテレワーク、フレックスタイム制といった「勤務時間関連」などを導入する企業も存在します。
福利厚生を導入するメリット
福利厚生の導入は離職率の低下に効果的です。実際に、離職率の高い企業が様々な福利厚生を導入した結果、人材定着率の向上に成功した事例もあります。仕事とプライベートを両立できることで、働く意欲を向上させます。また、採用活動においても福利厚生が充実していると求職者からの応募が増加するでしょう。特に、法定外福利厚生が充実していると他社との差別化が可能になり、応募率の向上が期待できます。
ユニークな福利厚生を参考にしよう
ゴーホーム制度:Chatwork株式会社
Chatwork株式会社では、従業員と家族との関係を大切にしてもらうため、実家に帰省する費用を1回につき14,000円支給するゴーホーム制度が導入されています。制度の導入は、社長と従業員の会話の中で最近帰省できていないことが話題となったのがきっかけです。職場から140㎞以上実家から離れている人が1月~12月末の間で最大2回使えます。
失恋休暇:株式会社チカラコーポレーション
株式会社チカラコーポレーションでは、失恋した場合に20代前半なら1日、20代後半なら2日、30代以上は3日の休暇が取れる失恋休暇を導入しています。社員の8割以上が女性の職場で恋愛に対する理解を示すため生まれた制度で、失恋した折を店長に報告すれば、翌日から休暇が取れる仕組みです。既婚者の場合は、離婚した際に取得可能で失恋よりも心の痛み度合いが高いとみなされ、通常日数からプラス1日加算されます。休暇は分けて取ることも可能で、取得回数に制限がないのも良心的です。
パパママサポーター制度:ヤフー株式会社
ヤフー株式会社では、「パパママプロジェクト」の一環で導入されているパパママサポーター制度という福利厚生があります。育休から復職した女性社員が、自身の経験を育児中の情報共有や相談できる場があればいいと考え発案されています。主な取り組みとしては、子育て中の従業員を対象とした座談会や交流会、個別の悩み相談などが挙げられます。
ユニークな福利厚生を導入する際のポイント
目的を明確にする
目的の明確化は非常に重要です。何の目的で導入するのか、導入することでどのようなメリットを生み出せるのかを整理してから導入するようにしましょう。独自の法定外福利厚生を導入したところで、利用されなければ廃止することになります。福利厚生の廃止は、従業員のモチベーションにも繋がりかねません。企業の現状を把握して慎重な検討が必要です。
ヒアリングを行う
従業員ごとに福利厚生に対するニーズも異なります。多様な人材を確保するには、幅広いニーズに対応する複数の福利厚生を用意しなければなりません。そのため、社内でアンケートを実施し、従業員の求めるニーズを把握しておきましょう。
周知を徹底する
実際に、制度を導入する際は従業員に対して導入目的や内容、利用方法などを周知しましょう。社内周知が行き届いていないと、利用率が上がらずに導入効果が期待できません。必要であれば、各部署の管理職を巻き込み周知と利用促進に協力してもらうことがおすすめです。
定期的に制度を見直す
福利厚生は導入がゴールではありません。導入後に、利用率や利用状況を分析して改善し続けることが大切です。制度そのものではなく職場環境に基づいて改善していくと利用率の向上も期待できるでしょう。なかなか利用率が上がらない場合は、別の制度を導入するといった柔軟な対応も必要です。
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まとめ
福利厚生は、優秀人材の確保や既存社員の早期離職防止などの観点から非常に重要です。法律で原則盛り込まなければならない法定福利以外にも、自社独自の法定外福利を導入することで、同業他社との差別化を図れます。しかし、導入目的が曖昧で社内周知が行き届いていないと利用率が上がらず、結果的に廃止しなければならない事態にも繋がります。まずは、目的を明確化し、従業員のニーズを把握してから有効な制度の導入を検討しましょう。