リテンションボーナスとは、企業が優秀な人材の流出を防ぐために支給する報奨金を指します。リテンションボーナスは、従業員のモチベーション向上や離職率の低下につながる一方、短期的なインセンティブに頼ることで従業員のエンゲージメントが低下するリスクもあります。企業が効果的に活用するには、目的を明確にし、公平な基準を設定することが重要です。今回は、リテンションボーナスの仕組みやメリット・デメリットについて解説します。
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報酬金の支払い離職防止を目的とした施策
そもそも、「リテンション」とは人材の維持や定着を目的とした施策の一つであり、人材不足が課題となっている企業が多いなかで特に注目を集めている施策です。ジョブ型雇用や成果主義など、人材が流動的になりやすい社会構造に変化しつつある日本では、貴重な人材が離職などで流出してしまうことは大きな痛手といえるでしょう。企業が従業員をつなぎとめ魅力的な企業と感じられるようにするためには、「この会社で働きたい」という価値ややりがいを与えることが重要です。そこで、従業員を貴重な自社の資産であると定義し、人材の定着や維持を目指し、生産性を高めることを目標とするのが「リテンション施策」です。そのなかでも、特定の目標設定を達成した場合や、あらかじめ決められた期日まで在籍していた人材に対して、報酬金を支払う施策が「リテンションボーナス」と呼ばれています。
「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」
リテンション施策の方法は大きく2つに分けられ、リテンションボーナスが含まれる「金銭的報酬」と、もう一つの「非金銭的報酬」があります。
金銭的報酬はその名の通り、金銭にかかわるリテンション施策を指します。リテンションボーナスの他には、給与や報酬の向上が見込める個別の評価制度や、食事手当や家賃補助などを含む福利厚生、自社の株式を決められた価格で購入できるストックオプションなどが挙げられます。
一方、非金銭的報酬は直接的には金銭のやりとりはないものの、企業が働きやすさやモチベーションの向上などを提供する施策が該当します。具体的には、キャリア支援、職場環境の改善、資格取得支援などが代表的です。
リテンションボーナスの仕組み
ボーナスの支払いにともなう契約書を作成
まず、リテンションボーナスの支給を検討している従業員に対して契約書を作成します。この際に重要なのは、期限や目標などの何らかの条件をクリアした従業員が、報酬の支払いによって離職を検討するリスクが減るのかという点です。例えば、基本給が低いことを懸念している従業員にとって、企業が引き留めるために1度限りのリテンションボーナスを支給するだけでは、根本的な原因解決にはなりません。離職防止としてリテンションボーナスの支払いを検討する場合は、ボーナスの支払いによって離職リスクが軽減できるのかを慎重に検討する必要があるでしょう。
契約書の内容にならいボーナスを受け取る
契約書には、ボーナスの取得日やボーナスを支払う条件・根拠、金額などの規定を記載します。現金としてそのまま支給するケースが一般的ですが、株式報酬などと組み合わせてボーナスを支給する場合もあります。支給額の設定も企業によって異なりますが、対象の従業員における基本給をパーセンテージに当てはめる場合もあれば、固定給をあらかじめ規定しておくケースもあります。
また、離職防止を目的とする場合は、期日前に正当な理由で離職に至った場合は、ボーナス取得の資格を喪失する旨を記載しておきましょう。
リテンションボーナスのメリット・デメリット
メリット:金銭報酬というわかりやすい成果を得られる
人が働く意義として、給与や報酬の内容を重視している人は多いでしょう。報酬体系として成果が目に見えてわかりやすいという点が、大きなメリットといえます。また、前述した「非金銭的報酬」に含まれるリテンション施策は、改善や効果が目に見えるまでは時間がかかるケースもあり、すぐに報酬を提供したい場合は不向きであることもあります。一方で、リテンションボーナスをはじめとした金銭的報酬は、金額や対象者などの運用方法をあらかじめ決めておくことで、期日を決めてすぐに報酬を提供することが可能です。
デメリット:必ずしもモチベーションやエンゲージメント向上につながるとは限らない
リテンションボーナスは離職防止の一環として多くの企業で採用されることは確かですが、その効果が必ず発揮されるわけではありません。自社への定着率を高め、帰属意識を持ってもらうようにするためには、必ずしも金銭的報酬が必要であるとは限らない場合もあります。
前述の通り、離職を検討する従業員がどのような不満や課題があるのかによって、リテンションボーナスの効果は大きく変わります。最悪の場合、「理由も聞かれずただ金銭だけを渡された」と捉えられてしまい、モチベーションやエンゲージメントを低下させてしまう恐れすらあるのです。そのため、リテンションボーナスの支払いを検討する際には、対象の従業員と面談を行ったり就労状況の調査を行ったりするなど、従業員側の視点から状況を把握できるようにしておきましょう。
まとめ
従業員の離職を防止する施策として有効であるリテンションボーナスですが、リテンション施策は金銭的報酬だけではありません。従業員が自社にとどまりたい、ここで働いていたいと感じられるようになるには、金銭的報酬と非金銭的報酬のバランスが非常に重要です。従業員にとって働きやすい空間になるように、リテンション施策を検討するようにしましょう。