リワークとは「retern to work」の略で、文字通り、休職者が復職するという意味です。うつ病などの精神面の不調を理由に休職した従業員に対する復職支援プログラムをリワーク支援と呼び、適切なリワーク支援を受けることで復職へのハードルを下げることができます。リワークへの理解を深め、休職者のスムーズな復職や再休職の予防に役立てましょう。この記事では、リワークの意味と効果、種類、取り組み内容について解説していきます。
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リワークとは
リワーク(Re-Work)は、うつ病や適応障害など精神的な不調が原因で休職している人に対して行われる、職場復帰と再休職防止を目的としたリハビリプログラムです。復職支援プログラム、職場復帰支援プログラムとも呼ばれます。
リワークは、主に医療機関や公共機関などで実施されており、期間はその人の回復状況により異なりますが、3~7ヶ月が目安といわれています。
休職者にとって、職場復帰はとても高いハードルです。通勤の負担や職場での緊張感が病状を再発させ、再休職になってしまう人も少なくありません。リワーク支援では、休職者に必要なさまざまな職場復帰プログラムが用意されており、体力と気力の回復や、休職に至った原因の自己認識、ストレス対処法の習得などを目指すことが可能です。
リワーク支援には種類がある
- 医療機関
- 就労移行支援事業所
- 障害者職業センター
精神科・心療内科で行うリワークプログラムは、病状の回復と再発防止を軸としています。医療行為の一環であり、医療スタッフによる心理的フォローを受けながら、復職の準備ができることが特長です。費用は保険適用となり、自立支援医療制度も利用できます。
就労移行支援事務所は、障害のある人が一般企業に就職するためのスキルを身に付ける施設ですが、休職者のためにリワーク支援を実施しているところもあります。働くための能力や体力を回復させるプログラムが充実しており、精神に障害がある人の就職、職場に定着するためのノウハウを豊富に持っていることが特長です。利用料は、前年度の世帯収入によって異なります。無料で利用できることもあるので、自治体の窓口に問い合わせてみましょう。
障害者職業センターは各都道府県に最低1ヶ所あり、職場への適応を目的としたリハビリが行われています。休職者だけでなく雇用事業主に対しても支援を行っていることが特長です。復帰後の労働環境調整について、雇用事業主・センター職員・主治医が連携して取り組む体制が構築されています。利用機関は最長3ヶ月で費用は無料です。ただし、公務員は利用対象ではないので注意しましょう。
企業がリワークを進める事例が増えている
令和2年「労働安全衛生調査」によると、メンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所の割合は 9.2%となっており、企業による休職者へのサポート体制の構築は大きな課題となっています。しかし、一度休職状態になってしまった従業員に対して、企業側が働きかける手段はそれほどありません。いくら有効な取り組みであっても、企業側からの過剰な働きかけは休職者にプレッシャーを与え、病状を悪化させる可能性があるからです。そこで、復職支援のプロフェッショナルである医療機関や福祉事業所に従業員のリワーク支援を任せることで、適切な距離感で休職者を支援することが可能です。リワーク支援を実施している事業所のなかには、企業担当者の相談にのってくれるところもあるため、問い合わせてみると良いでしょう。
リワークの始め方について
リワーク支援は復職を目指すためのものなので、本人の体調が安定し、復職が視野にはいっていなければ始めることはできません。主治医と相談して病状が回復または安定しているか、判断してもらいましょう。
主治医の許可が出たら、本人の意思に従って利用先を決めます。それぞれ費用の負担や対象者、プログラムの内容が異なるので、自身に合った施設を探すことが大切です。ここで企業側が利用施設を提案することも可能ですが、基本的には見学や体験を通して、休職者本人が通いやすい場所や受けたいプログラムを実施している施設を選びます。
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リワークでの主な取り組み内容をチェックしよう
オフィスワーク
復職後の業務を想定し、職場に近い環境で作業訓練を行います。パソコンを使った作業や軽作業など、職場で行っていた業務に近い作業を選び、仕事の能力や集中力を回復させていきます。
認知行動療法
認知行動療法とは、自分が抱える課題を具体化し、物の見方や考え方、行動などを少しずつ変えていくことで問題の解決を目指す心理療法です。
自分がどのような場面でストレスを感じるかを把握してその対処方法を身に付けられれば、同じような場面に遭遇した場合でもストレスコントロールができるようになります。
キャリアデザイン
リワーク支援には、これまでのキャリアを振り返り、今後どのような職業人生を送るか改めて考えるプログラムがあります。
自分のスキルや特性を見直し、今後どのような姿勢で仕事と向き合うか、キャリアを設計し直します。今まで抱いていたキャリア観を見つめ直す良い機会になるでしょう。
レクリエーション
リワーク支援では、グループでスポーツやゲームなどに取り組むプログラムもあります。レクリエーションはただの遊びのように思われがちですが、体力回復やストレス解消のほか、集団行動によるコミュニケーション力の向上にもつながります。
リワークにはさまざまな効果がある
生活リズムが整う
休職中は心身を休養させることが最優先です。時間に縛られず、無理のない生活スタイルで心身の回復を目指します。しかし、休職期間のなかで睡眠をはじめとした生活リズムが乱れることも多く、運動不足や人と接する時間の少なさが体力気力を低下させてしまいます。そこで、決まった日にちと時間にリワーク支援に通うことで、生活リズムを整え、復職に向けて心身の調子を整えることが可能になります。
セルフケアを習得できる
復職後は、基本的に休職する前と同じ環境で働くことが多いです。そのため、以前と同様の事象にストレスを感じ、症状が再発するリスクがあります。せっかく復職しても、再度休職する人も少なくありません。そのため、体調を崩してしまった原因を把握し、対処方法を身に付けることが大切です。
リワーク支援では、自己分析や自己理解、またストレス対処のスキルを学ぶプログラムが用意されています。それらを通してセルフケアができるようになれば、復職後もさまざまな課題に立ち向かう力になるでしょう。
復職の負担を軽減できる
リワーク支援では、職場に近い環境で作業や集団活動が行えます。一人で作業に取り組んで集中力を養ったり、グループで行う共同作業によってコミュニケーション力を向上したりすることが可能です。このようなプログラムを通して、休職中と復職後のギャップを埋め、復職時の心身の負担を軽減する効果があります。
まとめ
休職中、心身ともに症状が安定してくると職場復帰のことが気になり始めるものです。仕事に戻れる嬉しさとともに、以前のように働けるか不安に思うこともあるでしょう。
リワーク支援の利用は、復職に向けて心と身体の状態を整えられるメリットがあります。またストレスコーピングやセルフケアのスキルを習得できるため、再休職防止にもつながります。
休職中の従業員を抱える企業は、職場復帰のためのサポートにリワークの利用を検討してみてはいかがでしょうか。