退職金前払い制度とは?退職金前払い制度のメリット・デメリットについて

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退職金前払い制度とは、通常退職時に支払う退職金を、在職期間中の給与に退職金相当額を上乗せして支払う制度のことを指します。退職時に一千万円を超えるような高額な退職金を一括で支払うのは企業にとって負担となってしまいますが、退職金前払い制度を導入することによって分割で支払うことが可能になります。しかし退職金が事前に支払われるため、従業員は勤続年数や退職金の額などを気にせずに働くことができ、転職が容易になってしまうといったデメリットも挙げられます。

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退職金前払い制度とは?

給与や賞与に上乗せして退職金を前払いする制度

退職金前払い制度とは、退職金を在職中の給与や賞与に上乗せして分割支給することで前払いする制度のことです。この制度における退職金は、退職によって一度に支払いを受ける給与ではないため退職所得ではなく、給与所得に該当します。ただし、この制度に移行する前の過去勤務期間に係る一時金を事業主が実際に退職するまで据え置いて支給する場合は、退職所得とすることが可能です。

確定拠出年金との違い

確定拠出年金とは、拠出された掛金とその運用益との合計額をもとに将来の給付額が決定する年金制度のことです。掛金を事業主が拠出する企業型DC(企業型確定拠出年金)と、加入者が自ら拠出するiDeCo(個人型確定拠出年金)の2種類があります。退職金前払い制度は退職金の一部が毎月給与に上乗せして支払われるのに対し、確定拠出年金の給付金は原則60歳から支給されるという点が大きな違いです。また、前払いされた退職金は給与として扱われるため所得税の対象となりますが、確定拠出年金は非課税となります。

退職金前払い制度が注目を集める背景

そもそも退職金前払い制度は、働き方の多様化に対応するために生まれました。従来は、新卒で採用された企業で定年まで働くことが一般的でしたが、近年は転職を繰り返すなかでキャリアアップしていく働き方が浸透しつつあります。その結果、勤続年数に応じて算定された退職金が退職時に支払われるという制度は時代にそぐわなくなりました。雇用の流動化や成果主義の導入、退職給付債務の削減などに対応する手段のひとつとして、退職金前払い制度が注目されるようになったのです。

退職金前払い制度のメリット

現金流出リスクを防いで資金繰りが安定する

高額の退職金を一括に準備せずに済むことで、従業員が退職した際の現金流出リスクを防いで資金繰りの安定を図れます。退職金を一括で支払うためには、従業員に対する債務と見なされる「退職給付引当金」を準備しなければなりません。このお金は貸借対照表で負債と表記するため、金額が大きければ大きいほど融資の際の与信審査で不利になる可能性が高まります。しかし、退職金を分割して前払いすることで「退職給付引当金」が不要になり、貸借対照表上の負債を減らすことが可能です。また、退職金を毎月の給与の一部として前払いすることで、貸借対照表に必要経費として表記できます。給与の支払い後の現金は資産として表記できるため、金融機関から企業の支払い能力が評価されやすくなるのです。

採用活動においてアピールになる

給与の中に退職金の一部を組み込むことで、給与水準を高く見せられます。求人情報に前払い退職金をプラスした額を記載できるため、求職者に競合他社よりも好待遇の印象を与えられるでしょう。その結果、求人の応募率増加につながり、優秀な人材を確保しやすくなるのです。企業の中には、退職金前払い制度を選択制にしているところもあります。選択制にすることで、すぐに給与をアップさせたい従業員のモチベーション向上を図れます。このように、退職金前払い制度を一斉導入するのではなく、選択制にすることも有効です。求人情報に退職金前払い制度を選択制にしている旨を記載すれば、採用活動において効果的なアピールができるでしょう。

給与や賞与が増える

退職金がプラスされることで給与や賞与が増えることは、従業員にとって最大のメリットとなります。毎月の生活資金や投資に活用でき、労働へのモチベーションにもつながるでしょう。退職金が減額される不安がなくなる点もメリットです。退職金を一括で受け取る場合、企業の業績や政策により変動するリスクがあります。前払い制度であれば、確定した金額を毎月受け取れるため、減額されることはありません。万が一、自己都合退職した場合でも前払いで支払われた分の退職金は受け取れていることになります。

退職金前払い制度のデメリット

社会保険料や労働保険料の負担が増える

前払い退職金は給与として扱われることから、社会保険料や労働保険料が高くなってしまう点がデメリットです。従業員数や前払いする金額にもよりますが、年間数十万円から数百万円のコスト増となるのは大きな負担となります。年間の前払い退職金額をあらかじめ決め、給与とボーナスそれぞれの上乗せ分を試算してバランスを考えることが重要です。

離職率が上昇する恐れがある

給与の一部として退職金を支払うことで、勤続年数や退職金を気にせず気軽に転職する従業員が増え、離職率が上昇する恐れがあります。優秀な人材が流出してしまう可能性もあるでしょう。また、前払い退職金制度では懲戒退職者に対して退職金の不支給や返還を求められません。従来の退職金制度では、就業規則に明記することで懲戒退職者に対して退職金の不支給や減額ができます。対して、前払い退職金制度では懲戒退職者に対してペナルティを科せられないことから不祥事の抑止力になりにくい点もデメリットとなるでしょう。

税制上の優遇措置を受けられない

一括で受け取る退職金と異なり、所得控除や分離課税など税制上の優遇措置を受けられない点は従業員にとって大きなデメリットです。支払う社会保険料が増え、税制上の優遇措置を受けられない結果、従来の退職金を一括で受け取るよりも受け取れる総額が減ってしまうことになります。とはいえ、従業員は、社会保険料を多く支払うことで将来受け取れる年金が増える可能性があると捉えることもできるでしょう。

まとめ

ここまで、退職金前払い制度の概要やメリット・デメリットについて解説しました。退職金を給与の一部として前払いすることで、企業には現金流出リスクを防いで資金繰りが安定させられる、採用活動でアピールできるなどのメリットを得られます。従業員は給与や賞与が増えて資金に余裕が生まれる点がメリットです。一方で、社会保険料の負担の増加や離職率の上昇のリスクなどのデメリットもあります。働き方の多様化に対応するためにも、メリットとデメリットを踏まえて適切に退職金前払い制度を導入しましょう。

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目次

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