労働人口が減少していく中、企業が人材を確保するためには、多様な働き方を実現していくことが欠かせません。多様な働き方を実現するための一つの手段として、1週間の所定労働時間が短い「短時間正社員」制度を導入することで、これまで育児や介護等により就業が難しかった人を活用することが可能となります。
今回は、短時間正社員制度の概要やメリット、導入手順について解説します。
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短時間正社員とは、フルタイム正社員と比較して1週間の所定労働時間が短い正規型の社員で、次の(1)、(2)の両方を満たしながら働いている社員のことをいいます。
- (1)期間の定めのない労働契約 (無期労働契約 ) を締結していること
- (2)時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員と同等であること
これまで正社員は、1日8時間・週5日勤務といったフルタイム勤務を前提とされることが多くありました。しかし、正社員は必ずしもフルタイム勤務である必要はありません。
短時間正社員制度は、労働者を正社員として処遇しながら短時間の勤務を可能とすることで、企業と労働者の双方にメリットをもたらす新しい働き方の仕組みであり、多様な働き方が求められている現在、注目を集めている取組だといえます。
短時間正社員制度のメリット
短時間正社員制度を導入することで、労働者にとってはもちろん、企業にとってもメリットを得ることができます。
労働者にとってのメリット
- 自己啓発やボランティア活動などに必要な時間を確保することが可能となり、ワークライフバランスが実現する
- 子育てや介護などの理由からフルタイムで働けない人や、高齢者などフルタイムでの勤務を希望しない人にとって、就業の機会が広がる
- これまでパートタイムで働いていた労働者にとって、キャリア形成の実現や処遇改善、モチベーション向上につながる
企業にとってのメリット
- 意欲や能力を持った正社員を獲得できる可能性が広がり、将来の労働力不足に対応することが可能となる
- 社員の定着率やモチベーションが向上し、採用競争力の強化や生産性の向上につながる
- 高年齢者雇用安定法による「高年齢者雇用措置義務」や、労働契約法による「無期労働契約への転換ルール」に円滑に対応できる
また、社会全体にとっても、仕事と育児・介護の両立の実現を通じた少子高齢化への対応や、企業競争力の向上を通じた経済環境の改善など大きなメリットが得られます。
短時間正社員制度の導入手順
短時間正社員制度を導入する際は、以下のプロセスで進めるようにしましょう。
(1)短時間正社員制度の目的の明確化
まずは、自社においてなぜ短時間正社員制度を導入するのか、その目的を明確にします。
短時間正社員制度が解決する人材活用上の課題は、育児・介護が必要となった社員の離職防止や高齢者・パートタイム労働者の活用促進など多岐にわたります。
自社ではどのような課題を解決するために短時間正社員制度を導入するのかを具体化したうえで、それに沿った制度設計を行うことが必要です。
(2)短時間正社員に期待する役割の検討
次に、短時間正社員に期待する役割を検討します。ここでいう役割とは、職務内容や制度の適用期間、労働時間などのことを指しますが、この際、上記の制度目的や制度の対象者ごとに検討することが重要です。
例えば、フルタイム正社員として働いていた人が育児のために短時間正社員制度を利用する場合、いずれはフルタイム正社員として復帰することが想定されます。したがって、職務内容はフルタイム正社員への復帰を念頭に置いて設定することになります。
(3)短時間正社員の労働条件の決定
続いて、短時間正社員の労働条件(人事評価、昇進・昇格、賃金、教育訓練)を決定します。労働条件の決定は、制度の根幹に関わる非常に重要な事項であるため、基本的な考え方について以下で詳しく解説します。
人事評価
人事評価の考え方として、成果目標の達成状況を評価する「業績評価」や、社員の能力や行動を評価する「能力評価」が挙げられます。
業績評価の場合、成果目標は短時間労働者の勤務時間を踏まえて決定することが大切です。すなわち、フルタイム正社員と比べるとこなせる仕事の「量」は減るため、これを踏まえた目標設定にします。一方、仕事の「質」の面では、原則としてフルタイム正社員と同様の目標を設定することになります。
能力評価の場合は、基本的に、同等の職種・職位のフルタイム正社員と同じ評価基準で評価することができます。
人事評価制度の構築方法については、下記の資料もぜひ参考にしてください。
昇進・昇格
昇進・昇格については、上記の人事評価を基に決定します。この際、単に短時間正社員であるという理由だけで短時間正社員の処遇を機械的に低位に位置づけることのないよう留意が必要です。
賃金
短時間正社員の基本給は、フルタイム正社員への支給額をもとに、労働時間に比例させて減額した額に設定します。例えば、フルタイム正社員の基本給が月額20万円であり、短時間正社員の労働時間がフルタイム正社員の7割である場合、短時間正社員の基本給は、20×0.7=14万円となります。
諸手当については、それぞれの手当の趣旨等を踏まえて個別に検討します。例えば、扶養手当や住宅手当などの生活関連手当については、フルタイム正社員と同じ基準で支給すべきだといえます。一方で、通勤手当や食事手当など労働日数や労働時間に応じて支給する手当は、実際の労働日数等に従って支給額を変更することができます。
教育訓練
短時間正社員への教育訓練は、それぞれの社員に期待する役割を踏まえて実施します。同じ職種や職位のフルタイム正社員がいる場合は、短時間正社員にも同等の教育訓練の機会を与えることが重要です。
(4)短時間正社員制度の導入・周知
短時間正社員制度の目的や短時間正社員の労働条件等が決定したら、いよいよ制度を導入します。短時間正社員制度を導入するにあたっては、制度について就業規則に規定することが必要です。短時間正社員の定義や対象者、就業時間、賃金等について、就業規則に定めるようにしましょう。
また、短時間正社員制度を適切に運用していくためには、制度導入の目的や制度内容等について社内に周知を行い、制度への理解を深めていくことも大切です。 就業規則の作成方法については、下記の資料もぜひ参考にしてください。
参考記事:
まとめ
短時間正社員制度には、柔軟な働き方を通してワークライフバランスを実現したり、個に応じたキャリア形成ができたりするといった労働者にとってのメリットだけでなく、労働力減少の中で有能な人材を確保できるという企業としてのメリットも存在します。
働き方改革の必要性が高まっている今、ぜひ短時間正社員制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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