トライアル雇用とは、安定的な就労が困難な求職者について、企業が一定期間試行雇用した場合に助成が受けられる制度です。求職者と企業が相互理解を深めることで、ミスマッチを防ぐことができます。今回はトライアル雇用のポイント、その種類、労働条件と受給額、メリットとデメリットについて解説していきます。
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トライアル雇用とは
トライアル雇用とは、ハローワークなどが紹介する労働者に対し、企業が原則として3ヶ月間の試行雇用をしたのちに採用の可否を決める制度です。求職者は、仕事内容や職場環境などについてトライアル期間中に確認できるため、自分に合った職場かどうか十分に検討することが可能です。また、企業にとっても、求職者にどのような能力や適性があるか把握してから採用できるのも大きなメリットでしょう。トライアル雇用にはさまざまなコースが設けられており、それぞれ要件も異なりますが、基本的には就業経験が少ない方や就労にブランクのある方、障害がある方などが対象です。求職者の業務遂行可能性の見極めや企業と求職者の相互理解の促進などを通じて、早期就職の実現や雇用機会を創出することがトライアル雇用の目的なのです。
トライアル雇用と試用期間の違い
試用期間とは、採用した従業員の適性やスキルなどが企業とマッチするかどうかを見定める期間を指します。トライアル雇用とよく似ていますが、契約の種類が異なるので注意しましょう。まず試用期間の場合、継続雇用を前提とした雇用契約を締結しなければなりません。「試用」とはいっても、勤務開始後15日を経過すれば解雇予告手当を支払う義務も発生するため、いつでも辞めさせられる訳ではありません。試用期間中に解雇する場合であっても、労働契約法16条に基づき、客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性がなければならないのです。例えば、能力不足を理由に試用期間を打ち切り解雇するためには、その能力不足な点が採用時には想定できないレベルのものであったり、教育を施しても解決できないものであったりしなければなりません。一方、トライアル雇用では、トライアル期間終了後に採用をお断りする場合であっても、これは有期雇用契約の満了として扱われます。そのため解雇にはあたらず、企業が法的な責任を問われることはありません。
トライアル雇用の対象者
トライアル雇用制度で最も代表的な「一般トライアルコース」の対象者の要件は以下です。
- 紹介日前2年以内に、2回以上離職又は転職を繰り返しているもの
- 紹介日前において離職している期間が1年を超えているもの
- 妊娠、出産又は育児を理由として離職したものであって、紹介日前において安定した職業に就いていない期間が1年を超えているもの
- 紹介日においてニートやフリーターなどで55歳未満であるもの
- 紹介日において就職支援に当たって特別の配慮を有するもの(※生活保護受給者・母子家庭の母等・父子家庭の父・日雇労働者・季節労働者・中国残留邦人等永住帰国者・ホームレス・住居喪失不安定就労者・生活困窮者)
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トライアル雇用の種類
一般トライアルコース
職業経験・技能・知識などを理由に安定的な就職が困難な求職者を対象に、ハローワークなどの紹介によって企業が一定期間試行雇用した場合に助成金が受けられるコースです。助成金の支給額は支給対象者1人につき月額4万円、期間は最長3ヶ月間です。ただし、対象者が母子家庭の母や父子家庭の父の場合、支給額は1人につき月額5万円にアップします。
新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース
新型コロナウイルス感染症の影響で離職したのち、これまで経験のない職業への就職を希望している求職者を対象にしたコースです。無期雇用へ移行することを前提に、原則3ヶ月間の試行雇用を行えます。求職者が一週間の所定労働時間が30時間以上の無期雇用を希望する場合に、新型コロナウイルス感染症対応トライアルコースが適用されます。助成金の支給額は月額最大4万円、期間は最長3ヶ月間です。
そのほかのコース
- 障害者短時間トライアルコース
- 若年・女性建設労働者トライアルコース
- 新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース
障害者短時間トライアルコースは、障害者の方の雇用時の所定労働時間を週10時間以上20時間未満として、期間中に20時間以上を目指すコースです。助成金は支給対象者1人につき月額最大4万円、最長12ヶ月間支給されます。
35歳未満の若年者や女性を一定期間の試行雇用を行う中小建設事業主に対して助成するコースです。若年・女性建設労働者トライアルコースの利用にあたっては、一般トライアルコースなどのトライアル雇用助成金の支給決定が要件になっています。助成額は支給対象者1人につき月額最大4万円で期間は最長3ヶ月間、トライアル雇用の助成金額に上乗せされます。
新型コロナウイルス感染症の影響で離職していて、これまで経験のない職業に就くことを希望している求職者が、週20時間以上30時間未満の短時間労働での無期雇用への移行を目指す場合のコースです。助成金の支給額は月額最大2.5万円、期間は最長3ヶ月間です。
トライアル雇用のメリット・デメリット
メリット1:ミスマッチを防止できる
トライアル雇用を活用すれば、企業と従業員のミスマッチを防止できます。従来の採用活動では、履歴書・職務経歴書・面接など限られた情報から求職者と自社の適性を見極めなければなりません。求職者側からしても必要としている企業の情報をすべて入手することは難しく、職場の雰囲気や人間関係などに不安を抱えたまま入職するケースも少なくないでしょう。一方、トライアル雇用であれば、求職者に一定期間職場で業務を体験してもらうことで、業務を続けられそうか判断することが可能です。企業としても、求職者が実際に職場で働く姿を見られるので、安心して採用の可否を決められます。
メリット2:採用コストを抑えられる
トライアル雇用で人材を雇用すれば、採用コストを抑制できます。まず、トライアル雇用では主にハローワーク経由で求職者と接点を持つため、募集自体のコストがあまりかかりません。そして、トライアル雇用ではそれぞれのコースが求める条件を満たす企業に対して助成金が支給されます。採用にかかるコストを軽減しながら、労働意欲のある人材を探すことが可能なのです。
デメリット1:育成に時間がかかる
トライアル雇用の対象者は主に就労に長期間のブランクがある方や就業経験が不足している方などです。一般的な中途採用などと比較すると未経験者からの応募も少なくないため、教育や指導には通常以上に時間がかかることが想定されます。新卒の従業員を育成する際のような丁寧なカリキュラムが必要とされるかもしれません。場合によっては業務だけでなく、社会復帰をサポートする役割を、企業が担う可能性もあると認識しておきましょう。
デメリット2:手続きに手間がかかる
トライアル雇用の助成金を受給するためには手続きが必要です。まず、ハローワークと相談して採用計画を作成し、厚生労働省に段階に応じた書類を提出しなければなりません。例えば、申請書類や計画書、終了報告書など、いくつかの書類の作成が必要です。単に条件に該当する従業員を採用すれば、自動的に手続きが行われる訳ではないので注意しましょう。
まとめ
雇用問題は多くの企業が抱える課題です。少子高齢化の影響もあって労働人口は減少しており、人材の確保に難しさを感じる企業は少なくありません。また、手間とコストをかけて採用した人材が、なかなか定着しないといったミスマッチの問題も軽視できません。さまざまな要因から課題が多い人材採用ですが、トライアル雇用などの優れた制度も用意されています。トライアル雇用にはさまざまなコースが用意されているので、企業や求職者のニーズにマッチする制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。