着替えや仮眠も?!
―「労働時間」の範囲、徹底解説!

2016年12月6日

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労働基準法では労働時間の上限を定め、この上限を超えて労働者を働かせる場合には、使用者は割増賃金を支払わなければならないと規定しています。このことから、どのような業務に従事している時間が「労働時間」に該当するのか、その範囲が重要となります。

今回は、労働時間の判断基準や、具体的に労働時間としてみなされる業務について、過去の判例などをもとに説明します。

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労働時間の一般的定義

労働基準法上の労働時間に該当するかどうかという判断基準は、最高裁判所の判例において示されています。この判例では、「労働時間」について、以下のように定義されています。

「労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。労働基準法上の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。」

すなわち、ある業務に従事している時間が労働基準法上の労働時間かどうかを判断するには、使用者の指揮命令下に置かれている時間かどうかという点がポイントとなり、これは就業規則等の規定にかかわらず客観的に決定されます。

このことから、労働者の労働時間を計算する際には、単純に就業規則等で規定した就業時間で計算するのではなく、労働者の作業内容に応じて、その作業に要した時間を労働時間に加算するかどうかを判断していく必要があるといえます。

労働時間とみなされる作業

上記で説明したとおり、労働時間の判断基準としては、使用者の指揮命令下に置かれているかどうかがポイントとなります。それでは、具体的にはどのような作業に従事している時間が労働時間とみなされるのでしょうか。

以下では、実際に労働時間に該当する作業について説明します。

始業前の準備、終業後の片付け

先述の最高裁判例では、本来の業務の準備作業や後片付けについて、事業所内で行うことが使用者によって義務づけられている場合や現実に不可欠である場合には、原則として使用者の指揮命令下に置かれたものと評価され、労働基準法上の労働時間に該当すると判断しています。

着替え

先述の最高裁判例では、作業開始前の着替えの時間について、使用者から事業所内において行うことを義務づけられている場合などは、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価でき、社会通念上必要と認められるものについては労働時間に該当すると判断しています。

手待ち時間

手待ち時間とは、使用者からの命令があればただちに業務に就くことができる態勢で待機している時間のことをいい、具体的には以下のような時間のことを指します。

  • 店員が顧客を待っている時間
  • ビルの管理・警備業務中などの夜間の仮眠時間
  • 電話番の時間

労働基準法では、一定の時間を超えて働く労働者に対して、労働時間の途中に休憩時間を与えなければならないことが定められています。手待ち時間については、それが休憩時間なのか労働時間なのかという点が争点となります。

店員が顧客を待っている時間

過去の判例では、勤務時間中の客の途切れた時などを見計って適宜休憩してよいとされている時間について、いわゆる手待ち時間であって休憩時間ではなく、労働時間に当たると判断しています。

夜間の仮眠時間

こちらも過去の判例で、「24時間勤務の途中に与えられる連続8時間の「仮眠時間」は、労働からの解放が保障された休憩時間とはいえず、実作業のない時間も含め、全体として使用者の指揮命令下にあるというべきであり、労働基準法上の労働時間に当たる」として、仮眠時間が労働時間であると認められています。

電話番の時間

昼休み中に電話番や来客対応をさせることについて、厚生労働省は「明らかに業務とみなされる」として、労働時間に含まれると示しています。

勉強会・研修

勉強会や研修に参加している時間についても、労働時間として認められる場合があります。過去の判例では、労働者が月に1~2回程度、少なくとも20分以上を費やして開催される研修会に参加していた時間を時間外労働時間であると認め、会社に対して割増賃金を支払う義務があると判断しています。

勉強会や研修については、参加が義務づけられている・欠席による罰則などがある・出席しなければ業務に最低限度必要な知識が習得できない、といった場合には、労働時間として認められる可能性があるといえます。

健康診断

健康診断に関しては、厚生労働省が公式の見解を示しています。これによると、職種に関係なく定期的に行う「一般健康診断」は、業務遂行との直接の関連において行われるものではないことから、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきとしつつ、受診に要した時間の賃金を支払うことが望ましいとされています。

なお、法定の有害業務に従事する労働者が受ける「特殊健康診断」は、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断であることから、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間に該当し、賃金の支払いが必要であるとされています。

労働時間とみなされない時間

以下のような作業に要する時間については、労働時間とみなされないため注意が必要です。

通勤

通勤自体は働くために必要な作業となりますが、通勤時間は「使用者の指揮命令下に置かれている時間」としては判断されません。

作業後の入浴

労働安全衛生規則では、「事業者は身体または被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、洗眼、洗身もしくはうがいの設備、更衣設備または洗濯のための設備を設けなければならない」ことを定めています。ただし、入浴時間などについての規定はなく、入浴時間については使用者の指揮命令下にあるとはいえないと解されています。
厚生労働省の通知では、坑内労働者の入浴時間について、通常労働時間に算入されないと示されています。

まとめ

労働者の勤怠管理を行うにあたっては、どの作業に従事している時間が労働時間に該当するかをきちんと理解したうえで、労働時間に該当する時間を適切に管理・記録することが欠かせません。パソコンやスマートフォンなどのデバイス上で打刻を行うことのできるクラウド型勤怠管理システムを使用することで、実際に作業に従事する前後に打刻を行うことができ、より実態に即した労働時間を記録することが可能となります。

労働時間の管理漏れや、それに伴う残業代の未払いを防止するためにも、勤怠管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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