人権デューデリジェンスとは?必要性と企業事例について徹底解説

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人権デューデリジェンスとは、企業が自らのビジネスにおいて、人権に関するリスクを評価し管理するためのプロセスを指します。人権に配慮していない場合、従業員のモチベーションが低下し、離職率の増加につながってしまうため、企業は人権デューデリジェンスに取り組む必要があります。味の素株式会社株式会社ファーストリテイリングなど、様々な企業で人権デューデリジェンスの取り組みが行われています。

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人権デューデリジェンスの必要性が高まっている

人権デューデリジェンスとは

企業が自らのビジネスにおける人権リスクの有無を調査して予防策や改善策を講じ、結果を検証し公表するまでの一連のプロセスを「人権デューディリジェンス(Due Diligence)」と言います。人権リスクとは企業活動によって個人や集団の人権が侵害されるリスクのことです。企業と従業員との直接的な雇用関係だけでなく、サプライチェーン・地域社会・環境にも生じる可能性があります。人権リスクが生じれば、法令違反による罰金や損害賠償金の支払い、ブランド価値の低下、外国からの輸入停止などによる経済的損失は計り知れません。人権リスクの発生を予防するためにも企業は人権デューデリジェンスを行い、日頃から対策を講じておくことが重要です。

人権リスクの具体例

人権リスクの具体例は、以下のとおりです。

  • 差別(男女で異なる昇格基準を採用するなど)
  • ハラスメント(パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなど)
  • プライバシー侵害(従業員の私生活・家族・住居・通信への違法な干渉)
  • サプライチェーンにおける劣悪な労働環境・児童労働・強制労働
  • 事業を展開する地域社会における土地の奪取・強制立ち退き・弾圧
  • 企業活動による環境汚染・森林破壊

従来は環境問題は人権問題と切り離して考えられていましたが、気候変動により多くの人権に影響があるという分析が進むにつれ、人権リスクのひとつとして議論されるようになりました。

人権デューデリジェンスが注目される背景

2011年に国連人権理事会にて「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択され、人権デューデリジェンスが注目されるきっかけとなりました。この行動指針は人権侵害からの保護は国家の義務であり、人権の尊重は企業の責任であるとしています。また、企業が絡んだ人権侵害状況に対処するためにデューデリジェンスを実施して行動すべきであると言及しました。以降はグローバルで人権リスクに関する取り組みが進み、日本でも政府が2020年に「ビジネスと人権に関する行動計画」を策定・公表するなど人権デューデリジェンスを推進しています。

人権デューデリジェンスを実施する流れ

人権方針を策定する

企業として人権を尊重するという方針を明確にして行動指針を定めましょう。まずは、自社が人権を重視して企業活動を進めることを社内外に宣言してください。次に、国際的ルールも意識して、自社がどのように人権尊重を捉えているかを示します。加えて、従業員・取引先・関係者にどのような行動を期待するかを明示することも大切です。

人権リスクを特定して優先順位を決める

続いて、企業における人権リスクを特定して、それぞれの優先順位を決めましょう。手順としてはビジネス工程を可視化して、人権リスクの洗い出しを実施します。次に、社内外で発生する人権リスクが明確になったら、優先的に対応すべき問題を考えてください。人権へのネガティブな影響の規模や回復するまでの困難度から重要度を分析します。

人権リスクへの対策を実施する

明確になった人権リスクへ対策を実施しましょう。具体的には以下のような対策が考えられます。

  • 教育や研修を実施する
  • 社内制度を整備する
  • 行動規範やガイドラインを作成する

人権リスクの負の影響を全社に共有して、横断的にこうした取り組みを進めましょう。担当部門や責任者を明確にして、対策を実施する姿勢が大切です。

継続的にモニタリングする

人権リスクへの対策を実施したら、継続的にモニタリングをしましょう。人権リスクへの対策は一時的な対応ではなく、継続的に改善する取り組みが重要です。実施した対策について分析をしてPDCAを回しましょう。なお、定量的にトラッキングできる指標を設定しておくと、効果的なモニタリングを実施できます。

人権デューデリジェンスの企業事例

味の素

味の素グループはUNGPsや人権尊重に関するグループポリシーなどに基づいて、人権尊重の実践に取り組んでいる企業です。具体的には全事業の原材料調達・生産・販売に関する国別人権リスク評価の4年ごとの実施に加えて、評価結果を起点とした人権デューデリジェンスプロセスが推進されています。味の素グループはライツホルダーとの対話を最も大切にされており、深掘性と網羅性の二軸を中心とした取り組みが進められています。

ソフトバンク

ソフトバンクでは「ビジネスと人権に関する指導原則」に従って、人権デューデリジェンスのプロセスが実施されています。例えば、ハラスメントや差別などを中心とした人権に関する研修や啓発コンテンツの配信、相談窓口の設置などはソフトバンクの取り組みの具体例です。また、従業員との人事面談施策やアンケート調査も定期的に行われており、問題が見られた場合には救済措置を講じているといいます。

ANA

ANAグループは人権デューディリジェンスの仕組みが構築されている企業で、あらゆる事業と事業展開国を対象としたリスクの影響度評価が実施されました。その結果として取り組むべき人権テーマを明確にしており、お客さまやグループの従業員の人権尊重・従業員や外国人労働者の労働環境のさらなる整備・サプライチェーンマネジメントの強化などに対策が実施されています。また、人権については知見ある方々から定期的にアドバイスを得ている点もポイントです。

まとめ

事業を展開していると、さまざまな人権リスクも生じてしまうものです。差別・ハラスメント・プライバシー侵害などは誰もが関係のある人権リスクであり、対策として人権デューディリジェンスの必要性が高まっています。人権に配慮がない企業は従業員が離れていってしまうだけでなく、社会的な評価も大きく下がってしまうでしょう。事業に関わるすべての方が気持ちよく働けるように、人権デューディリジェンスを実施されてみてはいかがでしょうか。

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