ジョブクラフティングとは、従業員が自らの仕事を主体的に再設計し、やりがいや意義を高める手法を指します。業務内容の見直しや人間関係の構築、仕事に対する認知の変化を通じて、業務効率やモチベーションを向上させます。主体性を重視しながらも、上司やチームとの連携が重要で、個人の変更が組織全体に与える影響を考慮する必要があります。今回は、ジョブクラフティングの意味、効果や注意点について解説します。
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ジョブクラフティングとは
ジョブクラフティングとは仕事に対するやりがいや満足度を高めるために、従業員それぞれが仕事に対して工夫する取り組みを言います。「工夫」の内訳は大きく「作業クラフティング」「人間関係クラフティング」そして「認知クラフティング」の3種類です。それぞれ作業内容に関する工夫、周囲の人間とのかかわり方の工夫、仕事の目的や意味のとらえ方の工夫などと定義されています。
ジョブデザインとの違い
同じビジネス用語には「ジョブデザイン」という似た用語もありますが、ジョブクラフティングとは行動する対象が異なります。ジョブクラフティングは従業員自身が主体性をもって現在の状況や考え方をアップデートする取り組みを指す言葉です。一方、ジョブデザインは組織や経営者が業務の設計を考え、それを従業員に実施してもらうという違いがあります。
ジョブクラフティングの進め方
ジョブクラフティングを進めるには、以下の流れが代表的です。
- 現状におけるタスク内容の洗い出し
- 多角的な視点からの自己分析
- 業務のアプローチ方法を検討
- 業務への取り組み姿勢や人間関係の見直し
- 実践および修正の実施
ここで重要なのは、上記のプロセスを繰り返し実施すると効果が高まる点です。従業員が抱えるタスクや周囲との関係性は日々移り変わるため、定期的にジョブクラフティングを実施する機会を設けましょう。
ジョブクラフティングのメリット
ワークエンゲージメントが高まる
ジョブクラフティングの目的でもある、仕事に対するやりがいや満足度を高めることは、組織への信頼や愛着が増すきっかけにつながります。これに加え、自身が行う業務の重要性や価値を客観的に把握できると、より熱心に業務を継続できて離職率が低下する効果も期待できるでしょう。
生産性が向上する
ジョブクラフティングの取り組み方の一つである「作業クラフティング」は、現状の作業内容やプロセスを振り返り、タスクの優先順位やスケジュール管理などの修正や改善を図るものです。個人単位ではそれほど大きな影響はないと感じるかもしれませんが、従業員一人ひとりが意識することで組織全体の生産性が向上する可能性があります。
コミュニケーションが活性化する
ジョブクラフティングは主体性をもち企業活動に従事するという目的が根底にあります。その目的を達成するためには同じ組織に属する周囲の人とのコミュニケーションが必要不可欠です。報連相はもちろん、新たなアイディアが積極的に飛び交い、活気のある職場の雰囲気の醸成につながるでしょう。
ジョブクラフティングの注意点
従業員の主体性を大切にする
ジョブクラフティング導入の初期段階では、研修やグループワークなどを通じて意味や目的を従業員に理解してもらうステップが重要です。ただし、組織はあくまでもサポートに徹し、自発的に従業員が思考・行動できるように導く必要があります。「やらされている」「指示された」と従業員側が受け取ってしまうと、それはジョブクラフティングとして成功とは言えません。企業や組織としての理想やビジョンをただ押し付けるのではなく、「現状をどのように改善したら成長できるだろう」などと業務への取り組み方やモチベーションの改革を従業員が意識するための後押しが求められます。
仕事が属人化しないように対策する
ジョブクラフティングでどのような業務内容・プロセス・マネジメント方法が改善されるのか、どのようなメリットが生まれるかは人によって異なります。そのため、その変更点が周囲に周知されていないと、ジョブクラフティングを実施するたびにブラックボックス化してしまい、属人化を招きかねません。ジョブクラフティングの取り組み自体は個人単位で行われるものですが、属人化を防ぐには工夫が求められます。例えば、変更点をチームやプロジェクト内などで周知したり、フィードバックを得たりする機会を作ると、属人化を防止できるでしょう。
結果を忘れずに共有する
ジョブクラフティングは一度実施した内容を継続するだけではなく、改善やアップデートが必要になるケースもあります。属人化の話にも通じますが、現在の取り組みでどのような変化があったのか、周囲の従業員や上司へ共有しフィードバックやアドバイスを得る機会を作ると、より多角的な視点からの意見を得られます。このような機会は従業員にとって新たな刺激を感じられて、周囲との連帯感を強めるきっかけにもなるはずです。ジョブクラフティングでは自主性を尊重する視点は重要ですが、その一点を重んじるばかりに周囲の方との連携が疎かな状況になるのは避けましょう。
まとめ
ジョブクラフティングは組織が従業員に向けて業務を指示するだけの取り組みではありません。現在の業務の目的や改善点、企業内で成長できるポイントなどを、従業員に主体的に考えて行動してもらうための手法です。ただし、従業員に任せきりにはせず、導入時にはジョブクラフティングの実施に合わせた環境整備やサポートを組織が行うことは忘れないようにしましょう。
