被保険者賞与支払届の書き方や注意点まとめ!


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すべての事業主は、従業員に賞与を支払った後には、「被保険者賞与支払届」を年金事務所または事務センターに提出するよう義務付けられています。支払届の書き方は難しいものではありませんが、支払いから提出までの期限が短いことや、従業員の年齢・就業状況などによって対応が異なるため、注意が必要です。今回は、賞与にかかる保険料や、被保険者賞与支払届の書き方、従業員別に注意すべきポイント、賞与不支給の場合の対応について解説します。

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被保険者賞与支払届の提出を忘れずに

賞与にも社会保険料がかかる

企業には、従業員に支払う給与から所得税や社会保険料を天引きし、従業員の代わりに国に納める源泉徴収義務者としての業務があります。毎月の給与から天引きするのは、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料や、所得税、住民税などです。これらの天引きされる金額は、毎月の給与をもとに算出された「標準報酬月額」に基づいて計算されますが、標準報酬月額には賞与は含まれていません。そのため、賞与は賞与で、社会保険料などを天引きしなくてはならないのです。
「被保険者賞与支払届」は、このような賞与にかかる社会保険料を確定させるために必要です。被保険者賞与支払届を提出した後に、管轄の年金事務所または事務センターから「保険料決定通知書」が送付されてくるため、企業はその保険料を納めるという流れになっています。

  • 対象になる賞与ってどんなもの?
  • 「労働基準法の施行に関する件」法第24条関係では、「賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであつて、その支給額があらかじめ確定されていないものである。」と定められています。つまり、賞与とは、個人の成績や企業の業績に応じて、定期給とは別に支払う「特別な給与」であるということです。これらの条件を満たしていれば、俸給、期末手当、年末手当、決算手当など、名称に関わらず賞与として扱われます。
    また、厚生年金保険法、健康保険法においては、賞与は、労働の対償として3カ月を超える期間ごとに支払われるものとされています。そのため、年4回以上支払われる給与や、労働の対価ではなく恩恵的に支給される結婚祝金、出産祝い金、大入り袋などは、賞与に含まれません。

  • 賞与にかかる税金・保険料
  1. 健康保険料
  2. 健康保険料は、賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額(標準賞与額)に保険料率を掛けて計算します。給与のときのように「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」によるのではなく、標準賞与額に直接保険料率を乗じます。また、企業が加入する健康保険が、協会けんぽか自社で運営する健康保険組合かによって保険料率や労使折半の割合が変わるので注意しましょう。なお、標準賞与額の上限は、健康保険では年間累計額573万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額)です。

  3. 厚生年金保険料
  4. 健康保険料と同様に、標準賞与額に保険料率を掛けて計算します。厚生年金基金に加入している場合の保険料率は、基金ごとに定められている免除保険料率(2.4%~5.0%)が控除されるので注意しましょう。
    なお、厚生年金保険の保険料率は、年金制度改正に基づき2004年から段階的に引き上げられてきましたが、2017年9月を最後に引上げが終了し、保険料率は18.3%で固定されています。また、標準賞与額の上限は、厚生年金保険については、1ヶ月あたり150万円となります。

  5. 介護保険料
  6. 賞与にかかる介護保険料も、標準賞与額に保険料率を掛けて算出します。保険料率は、健康保険料率とともに毎年改定されます。介護保険料は40歳以上65歳未満が対象なので、それ以外の年齢の従業員の賞与にはかかりません。

  7. 子ども・子育て拠出金
  8. 社会保険料(雇用保険を除く)は基本的に労使折半になりますが、使用者側はこれに加えて、給与の場合と同様に子ども・子育て拠出金を全額負担しなければなりません。そのため、若干使用者側の方の負担が大きくなります。賞与の場合は標準賞与額に0.36%を乗じた金額(2021年2月時点)となっています。

  9. 雇用保険料
  10. 雇用保険料は、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料とは違い、賞与額に直接保険料率を掛けて算出します。雇用保険は、失業保険ともいわれるように、事業の種類ごとの失業率の高さなどに応じて保険料率が決まります。また、従業員と企業の負担割合が違う点にも注意しましょう。

  11. 所得税
  12. 賞与にかかる所得税は、賞与から社会保険料を差し引いた金額に税率を掛けることで算出されます。
    なお、住民税は賞与から控除されることは無いので注意しましょう。住民税の税額は、前年の所得に基づいて確定しており、それを12分割して毎月の給与から納めているため、ボーナスからは控除されません。

被保険者賞与支払届の提出

  • 期限
  • 被保険者賞与支払届の提出期限は、賞与支給日から5日以内です。

  • 提出先
  • 提出先は、どの健康保険に加入しているかによって変わります。

  1. 協会けんぽ(全国健康保険組合)加入の場合
  2. 協会けんぽの場合、提出先は日本年金機構です。健康保険分も厚生年金分も、管轄の年金事務所または事務センターに提出します。

  3. 協会けんぽ加入以外の場合
  4. 加入しているのが、自社グループで運営している健康保険の場合、各健康保険組合と日本年金機構の2ヶ所に提出する必要があります。

  • 提出方法
  • 提出方法には、e-Gov電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口持参などがあります。

被保険者賞与支払届で注意するポイント

年齢や就業状況での注意

  • 70歳以上の方
  • 70歳以上の従業員へ賞与を支給する場合、備考欄の「70歳以上被用者」に〇をし、本人確認の上でマイナンバーまたは基礎年金番号を記入します。また、協会けんぽが管掌した健康保険の高齢任意加入被保険者は、被保険者氏名欄の余白に「高齢任意」と記入します。

  • 中途入社した方
  • 年度途中で入社や退職した被保険者資格の標準賞与額は、保険者単位で算出します。同一の年度内で複数の被保険者期間がある場合、同一の保険者である期間に支払われた標準賞与額が合計です。退職した従業員分は、資格喪失月(退職月)の前月までの期間に支払われた賞与から被保険者賞与支払届を提出します。

  • 産前産後休業や育児休業中の方
  • 産前後休業や育児休業などの保険料免除期間に支払われた賞与も、年間累計額に含まれます。該当する従業員に賞与を支給する際、社会保険料は発生しませんが賞与支払届の提出は必要です。

こんなときどうする?

  • 退職当月に賞与が支払われる場合は?
  • 退職予定者に支払われる賞与からは、社会保険料を徴収するのでしょうか?この判断は、賞与の支給月が資格喪失月に該当するかどうかがポイントになります。「資格喪失日」は退職日の翌日になるため、月末に退職した場合、「資格喪失月」は賞与支給月の翌月になります。このような場合は賞与支給月が「資格喪失月」の前月に該当するので、保険料は徴収します。一方、賞与支給月と同月内に資格喪失日がある場合、保険料は徴収しません。

  • 支払予定が無いときは?
  • これまでは、予定されている賞与の支払いが行われなかった場合にも「被保険者賞与支払届総括表」の提出が必要でしたが、2021年3月末に廃止されました。かわりに、2021年4月より「賞与不支給報告書」が新設され、予定されている期日に賞与を支給しなかった場合、提出が必要になりました。

  • 提出が遅れるとどうなる?
  • 提出期日に遅れると、事業主へ督促状が送付され、延滞金と、場合によっては遅延理由書類の提出が求められます。延滞金は納付期限の翌日から、納付の日の前日までの日数に応じて変動し、保険料額に一定の割合を乗じて計算されます。

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被保険者賞与支払届の書き方

記載項目ごとのポイント

  • 事業所整理記号
  • 「適用通知書」や「保険料納入告知額・領収済額通知書」などに記載されている、事業所の新規適用時に付与される数字とカタカナ(漢字とひらがななどの場合もあり)を記入します。

  • 賞与支払年月日(共通)
  • 賞与を支払った年月日を記入します。年月日が1桁の場合、前に0を付け2桁で記入します(提出する被保険者賞与支払届が2枚以上の場合それぞれに記入が必要)。

  • 被保険者整理番号
  • 「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」や「健康保険被保険者証」などに記載された資格取得時に付与される被保険者整理番号を記入します。

  • 生年月日
  • 「該当する元号の番号(1.明治 3.大正 5.昭和 7.平成 9.令和)-生年月日」のように記入します。この際、年月日が1桁の場合は前に0を付け2桁とします。

  • 賞与支払年月日
  • 賞与を支払った年月日が上記の「賞与支払年月日(共通)」で記入した年月日と異なる場合のみ記入します。(同じである場合には記入不要)

  • 賞与支払額
  • 賞与を通貨のみで支払った場合、「ア.通貨」欄にその全額を記入し、「イ.現物」欄には0と記入します。賞与のうち、一部を食事や住宅、被服など、通貨以外で支払った場合、「イ.現物」欄に記入します。

  • 賞与額
  • 「賞与支払額」の「ア.通貨」と「イ.現物」の合計額から、1千円未満を切り捨てた額を記入します。

  • 個人番号(基礎年金番号)
  • 「70歳以上被用者」のみ、本人確認のうえで個人番号(マイナンバー)か基礎年金番号を記入します。

  • 備考
  • 様式に記載のとおり、「1.70歳以上被用者」、「2.二以上勤務」、「3.同一月内の賞与合算」のうち、該当箇所を〇で囲みます。

まとめ

賞与の支払いが不定期な企業や、初めて賞与の支払いを行う企業は、被保険者賞与支払届についてしっかりと認知してないことも多く、つい提出期限を過ぎてしまったという事態にもなりかねません。賞与の支払い月となって焦らないように、企業は準備しておくことが大切です。
また、休業中の従業員に賞与を支給する際にも賞与支払届の提出が必要になりますが、労働の対価として支払われたか否かという点で、賞与かどうかが異なるため注意しましょう。

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