BPOとは、企業活動における業務プロセスを一括して外部に委託することを指します。BPOを活用することで、自社が強みを持たない業務を委託し、コア業務に経営資源を集中させることができるため、生産性の向上につながります。また、自社よりも優れた専門性を持つ事業に委託することで、本来見えていなかった課題やプロセスの無駄を発見することも可能になります。しかし、BPOの活用によって、社内に対象業務のノウハウを蓄積することが困難になるだけでなく、情報漏洩のリスクも増加してしまいます。
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業務プロセスを一括して外部委託すること
「BPO」は「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の頭文字を取った略語で、企業活動における一部の業務プロセスを一括して、継続的に専門企業へ外部委託することです。BPOのサービスを提供する企業を「BPOベンダー」や「アウトソーサー」といい、欧米の企業がインドなどのベンダーを積極的に活用することで急速に発展してきました。従来は専門性の高い業務プロセスを国内のベンダーに委託するのが主流でしたが、インターネットなどの発展に伴い、現在では海外のベンダーにオフショアで委託するケースも一般的です。人件費の安い国にオフショアで委託するBPOは、大幅なコストダウンを実現する手法として注目を集めています。
BPOが活用される業務領域
BPOの対象となる業務領域は、企業の利益に直結するコア業務ではなく、以下のようなノンコア業務が一般的です。
- IT・運用保守・Web
- データ入力・マニュアル作成・翻訳
- 総務事務・人事労務
- ヘルプデスク
- コールセンター
- 受付
- 人材採用
これらの業務は企業運営には必須ですが、単純作業も多く手間やコストがかかります。一般事務のような毎月繰り返し行われる定型業務は、BPOを導入することで工数を削減し、業務効率化を実現することが可能です。なお、ここで挙げた業務は一例で、さまざまなBPOベンダーの登場によって、幅広い業務領域でBPOが導入されています。
アウトソーシングやBPRとの違い
BPOと混同されがちな取り組みに、「アウトソーシング」と「BPR」があります。そもそも、業務プロセスを一括外部委託するBPOは、アウトソーシングの一種です。しかし、いわゆるアウトソーシングは業務プロセスに含まれる一部の単純作業を切り出して外部委託するのに対し、BPOは企業活動における一部の業務プロセスを一括して外部委託する点が異なります。業務の企画設計、施策実行、分析改善などをまとめて外部委託するため、委託する業務範囲が広いのも特徴です。例えば、人事部門や総務部門など、特定の業務を請け負っている部門単位で、一括して外部委託するケースもあります。一方、BPRは「Business Process Re‐engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」の頭文字を取った略語で、全社目標の達成に向けて既存の業務や組織、事業戦略などを再構築することです。既存業務の効率化や最適化など業務改善を目的としたBPOに対し、BPRは既存業務を抜本的に見直す業務改革を目的としています。
BPOによって得られる効果
時間やコストを削減できる
いままで社内で行っていた業務プロセスを外部委託することで、時間やコストを削減できます。例えば、人事や総務などのノンコア業務にBPOを導入すれば、毎月固定でかかっていた人件費やシステム利用料を委託費用に代替することが可能です。一定の人件費やランニングコストを抑えられるだけでなく、人材の育成コストや、業務システムの構築・管理コストなどを大幅に抑えられます。既存の定型業務にかかっていた手間や稼働も削減できるため、業務効率化も期待できるでしょう。
外部の優れた知識や専門性を活用できる
BPOを導入し業務プロセスを一括外部委託することで、外部のベンダーが保有する優れた知識や専門性を間接的に活用できます。企業活動のすべての業務プロセスにおいて、高度な知識や専門性を獲得することは簡単なことではありません。BPOベンダーは専門分野に特化し優れたノウハウを有しているため、BPOを導入することで業務品質の向上も期待できます。加えて、外部委託する過程でBPOベンダーは業務フローの見直しを行うため、いままで属人化していた業務や無駄な業務が可視化され、さらなる効率化を実現することも可能です。なお、情報の収集や高度な分析を伴う知的業務のアウトソーシングを「KPO(Knowledge Process Outsourcing:ナレッジ・プロセス・アウトソーシング)」といいます。
コア業務にリソースを集約できる
バックオフィスなど定型的なノンコア業務にBPOを導入することで、企業の収益を生み出すコア業務にリソースを集中できます。競争を勝ち抜き、企業活動で利益を出し続けるためには、ヒト・モノ・カネの経営資源を重要な業務に集約することが重要です。しかし現実では、多くの企業が利益を生み出すコア業務に付随するノンコア業務に多くのリソースを奪われています。BPOを導入すれば、リソースを奪われがちなノンコア業務を専門企業に一任することが可能です。結果として、BPOは生産性向上および業務効率化を実現し、余ったリソースをコア業務に集約することで、企業価値の向上にもつながります。
BPOの注意点
人材やノウハウを社内に蓄積できない
費用対効果の高いBPOですが、導入にはいくつか注意点もあります。BPOには外部の優れた知識や専門性を活用できるというメリットもありますが、裏を返せば社内に優秀な人材や優れたノウハウを蓄積できないということです。業務プロセスを一括して外部委託するBPOは、社内から特定の業務を切り離すことを意味します。専門性の高い業務を外部企業が一括で請け負うため、業務フローなどがブラックボックス化してしまうケースも珍しくありません。アウトソーシング全般にいえることではありますが、業務を企画・運営するのはあくまで委託企業であり、さらなる品質向上や業務効率化を実現するためBPOベンダーの力を借りる、という前提を忘れないようにしましょう。
管理コストやランニングコストがかかる
BPOには一定の管理コストやランニングコストがかかる点にも注意が必要です。委託費用が毎月かかるのはもちろん、BPOベンダーの管理コストも無視できません。特に、物理的な距離が離れた海外のベンダーにオフショアで委託する場合は注意が必要です。情報共有や進捗管理など、一時的にコストが膨れ上がってしまう恐れもあります。さらに、BPOの契約は比較的長期間のケースが多く、中途解約する場合は解約金が発生することもあるため気をつけましょう。短期的に判断するのではなく、長期的な視点でBPOの費用対効果を評価することが重要です。
情報漏えいのリスクがある
BPOベンダーは、厳格な情報セキュリティ管理基準を設けているのが一般的です。しかし、外部の企業が情報を取り扱う以上、情報漏えいのリスクがつきまとうことは否定できません。コンプライアンスが重視される現代では、情報漏えいは企業の存続もかかわる重大インシデントです。BPOを導入する場合は、BPOベンダーとの間で情報セキュリティに関する基本方針を規定し、誰が・いつ・どのような情報を扱ったのかがわかるような仕組みを構築することが求められます。
まとめ
今回はBPOについて解説しました。BPOは、企業活動における一部の業務プロセスを一括して外部委託することです。例えば、人事や総務といったノンコア業務にBPOを導入している企業も少なくありません。急激な変化や激しい競争に晒される市場環境において、継続的に成長し続けるには、利益に直結するコア業務にリソースを集中することが重要です。ノンコア業務を外部委託するBPOは、生産性向上や業務効率化を実現し、経営資源をコア業務に集約することで、結果的に企業価値の向上にもつながります。