客先常駐とは?労働時間の管理を怠ると偽装請負の可能性もあるので注意

2021年8月9日


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客先常駐とは、従業員が籍を置く企業ではなく、客先のオフィスや作業場に常駐して働く勤務形態を指します。客先常駐社員に対しては、社内で統一している勤怠管理システムが使用できなかったり、自社と客先で所定労働時間が異なったりすることがあるため、労働時間の管理が複雑になります。客先常駐社員の労働時間の管理が適切に行われていないと、偽装請負と判断されかねないため注意しましょう。今回は、客先常駐の意味や労働時間管理の方法、所定労働時間が異なる場合の対応、偽装請負を防止するためのポイントについて解説します。

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客先常駐とは?

客先常駐とは、所属する企業のオフィスではなく、顧客企業に常駐して働く勤務形態を指します。特に、IT業界で客先常駐は一般的な働き方として広く認知されており、顧客企業に出社することが常態化し、自社に行く機会がほとんど無いというITエンジニアもいるほどです。また、客先常駐をする従業員は正社員として雇用されている者のほか、フリーランスとして個人で仕事を受注する場合もあります。

客先常駐が行われている職種

客先常駐が行われている代表的な職種には、以下のようなものが挙げられます。

  • エンジニア
  • 事務職
  • 税理士
  • 産業医
  • コンサルタント
  • 人事

客先常駐と聞くと、エンジニアのイメージがありますが、現代ではさまざまな職種で客先常駐の仕組みは活用されています。たとえば、近年では企業の部門をまるごとアウトソーシングする動きが活発であり、バックオフィス業務などを他社に委託している企業もあります。このようなケースでは、業務を受託した企業の従業員が、事務職として客先常駐することになるのです。ほかにも、プロジェクトの実施期間中だけコンサルタントが常駐するケースや、医師や税理士が顧客企業に常駐して業務を行うケースも、客先常駐となります。

客先常駐の雇用形態

  • 請負契約
  • 請負契約とは、「業務受託者が、発注された業務を完成させることを約束し、業務発注者は完成された仕事の結果に対して報酬を支払う契約」です。請負契約では、従業員への指揮命令権は所属企業に属するので、一般的には所属企業の指示に従い仕事を進め、完成品を発注者に納品するという働き方になります。請負契約は、システム開発や建築業などでよく行われており、成果物に対して責任を負う点が大きな特徴です。働いた時間に対してではなく、納品した成果物に対して報酬が支払われるのです。従って、仕事が未完成であったり、発注者の要求水準を満たしていなかったりする場合は、受託者は報酬を請求できません。

  • 準委任契約
  • 準委任契約も、請負契約同様、「業務の一部を外部に発注する際に取り交わされる契約」のことをいいます。ただし、準委任契約の場合、契約期間内に依頼された業務をしっかり行うことが報酬の支払い条件になるため、技術の提供を行えば、成果物に対する責任を負いません。この点において、請負契約とは異なるといえるでしょう。準委任契約においても、従業員に対する指揮命令権は、所属する企業にあります。準委任契約が用いられるのは、完成品や成果物の存在しない業務や事務処理を目的とした業務などを委託する場合です。

客先常駐が行われる理由

上記のように、請負契約も準委任契約も、基本的には受託者側で業務を行えば良く、客先常駐が絶対条件になっている訳ではありません。ただし、業務内容によっては発注者側のオフィスで業務を進めた方が、効率が良いこともあるため、そのような場合に客先常駐が行われる傾向があります。たとえば、システムの保守・運用業務においては、トラブルが発生したときにすぐに対応できることが重要視されますし、プロジェクトチームに外部の専門家を参加させたい場合なども、プロジェクト期間中は発注元企業に出社したほうがコミュニケーションなどの面で便利です。
このように、客先常駐は、スキルが高い人材を自社内に確保できるという点が大きなメリットです。人材が欲しいなら、直接雇用すれば良いのではないかと思うかもしれません。しかし、専門スキルを持った人材を正社員雇用するには莫大なコストがかかり、プロジェクトが終了したからといって簡単に解雇することもできません。客先常駐であれば、優秀な人材に必要な期間だけ働いてもらうことができるので、さまざまな企業のニーズにマッチするのです。

客先常駐の問題

客先常駐では、受託者側の従業員が、発注者側の企業で勤務します。一方で、従業員の所属や指揮監督権は受託者側に所属するため、受託者は普段姿を見ることの無い従業員の管理責任を負っていることになります。このような場合は、どのような問題が発生するのでしょうか。

勤怠管理が難しい

客先常駐で働く従業員は、専ら発注者側の企業における勤務となるため、受託者側にとっては、自社の従業員にも関わらず、適正な勤怠管理が困難になるという問題が発生します。自社オフィスに出社するのなら、管理者が目視で従業員の状態を確認できますが、客先常駐ではそうはいきません。場合によっては従業員の自己申告に頼らなければならないでしょう。また、自社では残業をさせない方針でも、顧客企業ではそうではないかもしれません。このような場合に、知らないうちに従業員が働きすぎていないか、注意する必要があります。

自社との繋がりが薄くなる

客先常駐が常態化している職種では、所属元の企業へ出勤するタイミングは多くありません。そのため、所属元の企業との繋がりや帰属意識が薄くなる恐れがあります。従業員が働き方に満足しているうちは問題ありませんが、所属元との繋がりが弱い状態が続けば、ちょっとした不満でもすぐに離職してしまう可能性があります。そのため、普段からチャットツールなどを使って、定期的に従業員とコミュニケーションを取り、福利厚生や研修制度を充実させるなど、従業員が自社に所属するメリットを意識して作ることが大切です。

現場の従業員と待遇が異なる

コロナ禍では、発注側企業の正社員は全員テレワークが許可されているにも関わらず、常駐している受託者側の人には許可されなかったという事例があります。このように、客先常駐社員は、発注側企業の従業員と同じように出社・勤務している場合でも、明確な待遇の違いがある場合が少なくありません。客先常駐社員の雇用契約は、所属企業と結んでいるため、常駐先で気持ちよく働けるようにするためには、所属企業がしっかりと労働環境を整えることが大切です。

偽装請負とみなされないために

偽装請負とは、請負契約のように見せながら、実態は労働者派遣を行っている状態を指します。客先常駐は、一見すると労働者派遣のようですが、労働者派遣を行う場合は、労働者派遣法に基づいた派遣元(受託者)と派遣先(発注者)における責任や指揮命令権の所在を守らなければなりません。しかし、現場の認識や請負契約が曖昧だと、当人たちも知らないうちに偽装請負になっているケースもあるため、注意が必要です。

偽装請負とみなされるケース

代表的な偽装請負には、主に以下の4つのパターンがあります。

  • 代表型
  • 本来、請負契約における指揮命令権は所属企業にありますが、発注者側企業が常駐社員に対して自社社員のように業務の指示や労働時間の管理を行っているパターンです。

  • 形式だけ責任者型
  • 受託者側の企業は、責任者を設置しているものの、発注者側の企業が細かく指示を下すため、結局は発注者企業の言いなりになっている場合です。

  • 使用者不明型
  • 同じ仕事の発注が繰り返し行われ、従業員の使用者が分からなくなるケースです。

  • 一人請負型
  • 労働者と労働契約は結ばずに、個人事業主として請負契約を結び、業務の指示や命令をして自社社員のように働かせるパターンです。

偽装請負とみなされないためのポイント

  • 使用者が自ら現認する
  • 客先常駐している従業員がいる場合、使用者は定期的に様子を確認しにいきましょう。偽装請負の発生を未然に防ぐためにも、常駐先で細かい業務の指示や残業命令などを出されていないか、従業員の労働内容が契約通りに行われているかどうか細かくチェックしましょう。

  • 請負契約を明確化しておく
  • 請負契約の内容を明確にしておきましょう。受託者側企業と発注者側企業における契約の認識が曖昧である場合、思わぬ勘違いから偽装請負が発生しかねません。現状と契約内容に差異が発生していないか良く確認しましょう。

自社と客先常駐で労働時間が異なる場合

たとえば、所定労働時間が7時間である労働者が客先常駐する際、その常駐先企業の所定労働時間が8時間であるときは、どのように対応すればよいのでしょうか。この場合は、たとえ常駐先であっても7時間勤務すればよいとされています。この労働者が労働契約を結んでいるのは所属企業なので、常駐先の労働時間に合わせる必要はありません。もし常駐先企業に合わせて8時間勤務しなければならない場合は、1時間分を残業代として支給する必要があります。
ちなみに、労働者派遣の場合は、このような所定労働時間の差は発生しません。なぜなら、労働者派遣契約の段階で、派遣労働者が働くべき時間や報酬について定められているからです。

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まとめ

客先常駐は、優秀な人材を期間限定で確保できる、発注者側の企業にとってはとても便利なシステムです。一方、受託者側にとっても、勤務場所や設備を用意する必要が無い点でメリットがあります。
しかし、偽装請負の問題が顕在化するように、客先常駐という働き方には注意しなければならないポイントがいくつもあります。問題が発生すれば、自社だけの問題ではなく、相手側企業や労働者にも迷惑が掛かってしまうので、しっかりとルールを認識する必要があるでしょう。

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