HCM(Human Capital Management)とは、従業員の能力や経験を「人的資本」としてとらえ、その価値を最大限に引き出すための管理手法を指します。似た表現としてHRMがありますが、HRMは人材そのものを資源とするのに対し、HCMは人材の持つ資本価値の最大化に焦点を当てます。HCMを導入することで、適切な人材の発掘や配置、計画的な人材育成が可能となり、企業の生産性向上や持続的な成長に寄与します。今回は、HRMとの違いや導入メリットについて解説します。
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従業員を「資本」と考える
HCMは日本語に訳すと「人的資本管理」という意味になり、それぞれの従業員が持つ経験や技能・スキルなどを「資本」ととらえる考え方を指します。それぞれの人材が持つ能力や長所は異なり、それぞれが最高のパフォーマンスを発揮できるようにマネジメントを行うことが主な目的です。また、HCMの理念に基づいて、人材にまつわる情報を的確に管理し、運用を遂行するために作られた人材管理システムのことを「HCM」と呼ぶケースもあります。
「HRM」との違い
HCMと近い理念を持つ手法として、「HRM」というものもあります。HRMは日本語では「人的資源管理」と呼ばれ、HCMでは「資本」として扱っていた人材の経験・技能・スキルを企業の「資源」としてとらえる考え方を指します。具体的には、企業にとって有用な資源を持つ「人材」を育成・成長させることが主な目的であり、採用や教育・部署の配属・キャリアアップなどのサポートや支援を行い、人材の管理を目指します。
近年重視されている背景
では、なぜHCMの理念が近年企業にとって重要視されているのでしょうか。まず、これまでの企業経営における人材の考え方は、人材を画一的で人数やコストとしてとらえているケースが一般的でした。そのため、企業が目指すのは「効率的で生産性の上がる働き方」となり、すべての従業員に対して同じプロセスを進める手法となっていました。
ところが、日本は長年人材不足の懸念があるなかで、転職市場の活性化やジョブ型雇用など人材が流動的になりやすい環境に変化しつつあります。そこで、従業員のエンゲージメント向上や人口流出の防止を期待できるマネジメント手法が求められた結果、従業員一人ひとりの個性や長所を重要視するHCMの手法が、持続的な人材育成を期待できると注目を集めているのです。
HCMを構成する要素
組織・人材管理
適材適所の配置や最大限のパフォーマンス発揮を目指すには、まず人材分析を始めることが重要です。各従業員のスキルや勤務状況などのデータから、もっとも価値を見出せる働き方や成長のためのプロセスを決定します。また、やりがいやモチベーションを向上させるための育成の実施も、企業に対して信頼感やエンゲージメントを保ち業務を行うためには非常に重要な要素です。
待遇・就業管理
各従業員の勤務状況や有給取得状況、健康状態などの基本的な管理を行います。これに加え、適切な福利厚生や休暇、就労環境を正当に付与できているか、という視点からマネジメントを行うことも含まれます。これらの判断が適切に管理されることで、従業員は企業への信頼感や透明性を得られるようになるでしょう。
報酬・評価管理
給与やボーナスなどの報酬や、目標の達成度などによって人材の評価を行う体制を整えることも人材管理には重要です。これらの要素は従業員にとって特にモチベーションややりがいに直結する要素であるため、適切な評価設定のもとに給与やボーナスの金額設定や管理を行うプロセスが確立されると、従業員からの企業満足度の向上が期待できるでしょう。
パフォーマンス管理
従業員一人ひとりがパフォーマンスを効率よく発揮するために、従業員個人の目標と企業側の目標をすり合わせましょう。企業全体の目標と個人目標を可視化すると、おのずと優先順位をつけることが容易になり、企業内変革や人材育成をスムーズに実行できるようになります。また、適切な人材配置が行われることで、個人の業務効率化やパフォーマンス管理が進むでしょう。
HCMを導入することで期待できる効果
タレントマネジメントの強化
これまでの画一的な人材育成の方法では、「この企業は自分には合わない」と感じた従業員はエンゲージメントやモチベーションの低下により、離職を選択するケースも少なくありませんでした。人材の確保が容易ではなくなっている現代の社会構造では、人材の流出を防ぐために従業員一人ひとりに寄り添った目標設定やキャリア支援が求められます。タレントマネジメントを強化することは、従業員のエンゲージメントやモチベーションを向上させ、結果的に企業全体を活性化し生産性を向上させることが期待できるでしょう。
適切な人材獲得と人材配置
自社の人材を分析し、パフォーマンスの最大化を図るということは、これから採用したいと考える人材の理想像やビジョンが明確になるということでもあります。採用段階で企業側のターゲット層が明確である場合、求職者とのミスマッチが軽減され、マッチング率の高い人材獲得に期待が持てるようになります。
また、採用後の企業内での立ち位置も明確になるため、迷いなく人材配置を実施できることにもつながります。
人事業務の効率化
人材獲得が円滑に進むようになれば、人事業務の負担も減少します。また、HCMには人材の定着や離職防止といった側面もあるため、定期的な採用活動を実施せずとも人材の確保を担保できるようになり、在籍している従業員の支援に力を入れることができるようになるでしょう。
まとめ
人材のスキルや業績を資本の一つととらえ、それぞれの従業員の個性や強みを生かしたマネジメント方法を実施することにより、人材流出を防止し企業への帰属意識を高めることが期待できるようになります。人材不足が大きな課題となっている近年の日本では、人材の獲得はもちろんのこと、中長期的な人材育成の計画を実施し、企業力を高めるマネジメント方法の導入がさらに重要視されるようになるでしょう。