ジョハリの窓とは、自己理解と対人関係の向上を目的とした心理学モデルのことを指します。自己認識と他者からの認識に基づき、「開放の窓」「盲点の窓」「隠蔽の窓」「未知の窓」の4つに分類されます。ジョハリの窓を活用することで、自己理解とコミュニケーションの向上が期待できます。今回は、ジョハリの窓の意味、4つの窓や効果や注意点などについて解説します。
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自己理解と対人関係の向上を目的とした心理学モデル
「ジョハリの窓」はアメリカの心理学者によって提唱された、自分自身の内面および他者との関係性を理解することで対人関係を円滑にするための心理学モデルです。どのように活用するのかというと、まず複数人で集まってディスカッションを行い、後述する「4つの窓」に当てはまる要素について意見交換をしながら自分の特徴や相手から認識されている内容を探っていきます。分析を進めていくと、自身が思っている自分と周囲から見た自分の印象が異なっていることも珍しくありません。このように、他者の視点から得られた気付きを把握することで、より深く自分自身を理解することがこのモデルの大きな特徴です。
「ジョハリの窓」の概念が世界的に知られるようになると、日本の企業でもリーダーシップやコミュニケーションスキル研修といった社員研修に活用されてきました。これに加え近年では就活のトレーニングにも活用されるなど、より実用的な自己分析の手段として取り入れられています。
性格や特徴を表す4つの窓
「ジョハリの窓」では、4種類の枠組みの中に自分自身の特性や傾向を適した領域に当てはめて、自己分析を進めます。4種類の窓は、以下の基準をもって振り分けます。
- 開放の窓(自分および他者が気付いている自分)
- 秘密の窓(自分だけが気付いており他者は気付いていない自分)
- 盲点の窓(他者だけが気づいており自分が気付いていない自分)
- 未知の窓(自分も他者も気付いていない自分)
まず「開放の窓」に当てはまる要素は、自分と他者の実施した分析が一致している事柄が挙げられます。この領域が広くなると、自身の内面を他者からも分かるように表に出す傾向があるため、オープンな印象でコミュニケーションが円滑に進む傾向にあります。反対に、当てはまる要素が少ない場合、他者からは「どんな人なのだろう」と少し近寄りがたい印象を抱かれるかもしれません。
「秘密の窓」は、あえて自己開示をせずに自分自身だけが内に秘めている要素を指します。意識的に他者に知られないようにしていることが特徴で、コンプレックスやトラウマ体験などが当てはまります。
「盲点の窓」は、他者から言及されることで初めて気づく自己の考え方の傾向や性質などが含まれます。無意識に行っていることが多く、長所ととれる一面を発見できることもあれば、反対にネガティブな印象を抱く内容に気づくこともあるかもしれません。いずれにせよ、自身の気付かなかった部分を分析することで、開放の窓の要素を広げることにつながります。
最後の「未知の窓」は、まだ誰にも知られていない自己の潜在能力や可能性を引き出すための領域と言えます。「誰も知らないのにどうやって分析するの?」と思われるかもしれませんが、自己理解を深める段階で新しい体験や行動を行うと、今まで見えてこなかった新しい自分の一部分に気付くことがあります。自己または他者が気付いた段階でその要素は他の窓へ移動することになりますが、未知の要素を分析していくことで、新たな可能性を広げられるでしょう。
ジョハリの窓の効果
自己認識のズレを把握できる
まずは前述の通り、自分に対するイメージや認識のズレを客観的に把握できる効果があります。自分が意図しないリアクションを相手から受けたり、相手に自分の意見がなかなか伝わらないというケースは、この認識のズレが関係している可能性があります。例えば「秘密の窓」が広い傾向にある場合、他者との共有要素が少ないことで誤解が生まれやすく、関係性が悪くなってしまうことも少なくありません。この場合、自己開示を進める努力を進めると、双方の認識の溝を埋めることができます。
思わぬ盲点に気づける
「盲点の窓」に当てはまる要素は、まさに今まで自分では気付くことができなかった一面です。長所を知ってその部分を伸ばすだけでなく、短所に気付いて改善しようと努力することができれば、よりスムーズな対人関係の構築が期待できるでしょう。また、他者からの視点や意見は、無意識に行っていた自分の新たな一面を発掘できる貴重な機会になるかもしれません。
自己表現の不足を確認できる
自分の内面をなんでもさらけだせばよいというわけではありませんが、自分が思っていたよりも自己表現が足りていなかった、という結果が出ることもあるかもしれません。特に「開放の窓」の要素が少ない結果だった場合、自己表現の意識の有無にかかわらず、他者にはうまく伝わっていない可能性があります。他者との接触に消極的な傾向にある場合、「開放の窓」に含まれる要素を増やすことが目標の一つとなるでしょう。
ジョハリの窓の注意点
ポジティブな言葉を用いる
自分や相手の人間性を否定するような言動は、控えることが前提です。ジョハリの窓に含まれる要素はパーソナルな部分が主軸となるため、それを否定することは相手を傷つけたり不快な気分にさせてしまうおそれがあります。ネガティブと感じられる要素を伝えるときは、なるべくポジティブな言葉に置き換えるなど、言葉選びには十分注意しましょう。
結果を深刻に受け止めすぎない
自己分析の結果に対して、特に初めて認識した内容に関しては必要以上にマイナスに受け止めてしまうこともあるかもしれません。しかし、もしネガティブな要素に気づいたとしても、それは自分のことをより深く知り、成長するための過程ということを忘れないようにしましょう。自分自身の欠点を洗い出すツールではなく、「よりよい対人関係を築くためにはどうしたらいいだろう」と考える際の参考にとどめておくのが望ましいでしょう。
参加を強制しない
周りとの関係を円滑にするには「開放の窓」をなるべく広げることでスムーズに進むとされているものの、誰もが積極的に自己開示をするのが得意というわけではないでしょう。また、信頼関係がしっかりと築かれていないメンバー同士で自分自身をさらけだすのは不安と感じる人も少なくありません。そのため「ジョハリの窓」を使用してグループディスカッションをする際には、メンバーをよく吟味し、また参加を強制せずに実施するとよいでしょう。自己開示に対して抵抗があるメンバーに対しては、心理的な負担が少ない別の方法で自己分析を行うというのもひとつの方法です。
結果の他言は無用
グループディスカッションでは掘り下げた内容や要素について対話をすることもありますが、個人的な内容をグループのメンバー以外の第三者に伝えないようにすべきです。前述の通り、信頼関係があって初めて成り立つやりとりも少なくないため、思いもよらない人にパーソナルな自分の部分を知られることにストレスや不快感を感じる人も少なくないでしょう。
まとめ
「ジョハリの窓」は、「自分が思っている自分の姿」と「他人が感じている自分の姿」を明確にし、決められた4つの枠に特徴や要素を分けることで自己理解を深めます。今まで気付いていなかった自分や、これから成長することで見える自分に出会うこともあるでしょう。周囲との円滑な対人関係の構築を目指している方は、自己分析のツールのひとつとして活用してみてはいかがでしょうか。