2022年4月より段階的に施行されている改正育児・介護休業法の最後の変更が、2023年4月より適用される「男性の育児休業取得率等の公表」の義務化です。この変更により、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業は、年に1回、男性育児休業の取得状況を公表する義務が課せられます。公表すべき内容や公表の方法などについて確認し適切に対応しましょう。今回は、改正の内容をもとに公表すべき内容と公表の方法、注意点について解説します。
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2023年4月より男性の育休取得率等の公表が義務化
2023年4月より、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業は、育児休業等の取得状況を年に1回公表することが義務付けられました。常時雇用する労働者とは、雇用形態を問わず事実上期間の定めなく雇用されている労働者のことです。公表しないからといって罰則は科されませんが、育児・介護休業法違反に該当し厚生労働大臣から勧告を受けることになります。勧告後に改善が見られない場合は、企業名が公表される可能性もあります。企業のイメージダウンや求職者の減少を避けるためにも、対象企業は男性の育休取得率等の公表を必ず実施しましょう。
一般の人が閲覧できる方法で公表する必要がある
男性の育休取得率等は一般の人が閲覧できる方法で公表しなければなりません。具体的には、自社のホームページに記載する、または厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で公表するなどの方法です。公表の時期は公表前事業年度終了後、おおむね3ヶ月以内に行うように定められています。例えば、事業年度末(決算時期)が3月であれば、初回公表期限はその事業年度の6月末というようになります。
また「両立支援のひろば」には、仕事と家庭の両立の取組に関する事業主向けのQ&Aや、企業の取組事例など役立つ情報が多数記載されているので参考にしましょう。
義務化の目的は男性の育休取得促進
厚生労働省「2021年度雇用均等基本調査によると、育児休業制度の利用状況は女性が89.5%、男性が18.9%とされています。いずれも2020年度から上昇していますが、依然として男性の育休取得率は圧倒的に低い状況が続いています。そして、この状況の打開が今回の改正法の目的です。男性の育児休業取得率の公表が義務付けられれば、会社は男性従業員に育休を積極的に促すようになり、今まで取得しづらかった人も取得しやすくなる状況が予想されます。
しかし、一番の目的は取得率を上げることでなく、育児休業を取得しやすい雇用環境整備であることを忘れてはいけません。育休中も頻繁に業務連絡を行ったり、育休を取得した従業員が不利に扱ったりすることがないよう注意が必要です。事業主は上司・同僚の理解も含めて、男女ともに育児休業を取得しやすい雇用環境を整備しましょう。
公表する内容
男性の育児休業等の取得割合
常時雇用する労働者が1,000人を超える企業は、公表前事業年度における「男性の育児休業等の取得割合」または「男性の育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のいずれかを公表しなければなりません。
男性の育児休業等の取得割合は、以下の式で算出します。
育児休業等をした男性労働者の数 ÷配偶者が出産した男性労働者の数
育児休業等とは、育児・介護休業法に規定する以下の休業を指します。
- 出生時育児休業(産後パパ育休)を含む育児休業
- 「3歳未満の子を育てる労働者に対して所定労働時間の短縮措置を講じない場合の代替措置義務」または「小学校就学前の子を育てる労働者に対する努力義務」など、育児休業に関する制度に準ずる措置に基づく休業
男性の育児休業等と育児目的休暇の取得割合
男性の育児休業等と育児目的休暇の取得割合は、以下の式で算出します。
(育児休業等をした男性労働者の数)+(小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数の合計数)÷配偶者が出産した男性労働者の数
「育児を目的とした休暇」とは、就業規則等で休暇内容に「育児を目的とするもの」と明示されている休暇制度のことです。この休暇制度は、育児休業や子の看護休暇など法定の制度や、労働基準法上の年次有給休暇以外のものとなります。計算した割合の端数については、小数点第1位以下を切り捨てて処理します。
育児休業等取得状況を計算する際の注意点
双子や三つ子でも男性労働者のカウントは1人
男性育児休業は、配偶者が出産した男性労働者を対象としています。従って、双子や三つ子であっても、カウントは1人とします。
分割取得しても男性労働者のカウントは1人
育児休業を分割して2回取得した場合や、育児休業と育児を目的とした休暇制度の両方を取得した場合でも、同じ子どもについて取得したものであれば、カウントは1人とします。分割して取得した場合は、最初の育児休業等の取得のみが計算対象となります。
年度跨ぎで取得した場合は開始年度のみカウント
事業年度をまたいで育児休業を取得した場合は、育児休業を開始した年度の取得が計算の対象となります。分割取得や年度またぎ、いずれも育児休業を開始した日を含む事業年度のみが計算対象となると認識しておきましょう。
まとめ
現代の日本において男性の育児休業の取得状況は、女性と比較して大幅に低い状況です。男性が育児休業を取得しやすくするために、雇用環境を整備する必要があります。
男性育児休業の取得状況の公表義務化はあくまできっかけであり、取得率のみにとらわれず雇用環境整備全般に目を向けることが大切です。上司や同僚にも理解を求め、会社全体で育休取得の促進に取り組む必要があります。男女ともに育児休業を取得しやすく、働きやすい雇用環境を実現しましょう。