試用期間中での残業時間の取り扱いはどうなる?

2020年12月7日


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企業が従業員を採用する場合、業務への適性を測るために3~6ヶ月程度の試用期間を設けることがあります。試用期間中であるからといって企業が従業員に対して残業を要請することは可能であり、その場合は残業代を支払う義務が生じます。研修や指導についても上司の指示がある場合には労働時間に含まれるので注意しましょう。今回は試用期間の意味や本採用との違い、試用期間中の残業の取り扱い、労働時間の注意点について解説します。

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試用期間の意味

試用期間とは

試用期間とは、企業がある人を採用するにあたり、本当にその人に適性があるかどうかを見極めるために設ける試験的な雇用期間です。試用期間が設けられている場合、その期間は一般的には3~6ヶ月程度となっています。入社前の試験や数回の面接だけでは、適性についてわからない部分も多いので、企業側としてはこのような見極めの期間があると安心です。実際に多くの企業が、正社員だけでなくパートやアルバイトの採用においても本採用の前に設けています。

本採用との違い

それでは、試用期間と本採用の違いは何なのでしょうか。大きな違いとして以下の2点が挙げられます。

  • 解雇の可能性
  • 企業や業務への適性がないと判断される場合、企業が当該従業員を解雇できます。試用期間中は本採用の後に比べ、より広い範囲で解雇が認められるのが通例です。ただし、試用期間の目的を踏まえ、客観的にみて合理的な理由があり、社会通念からして適当であると考えられる場合に限られます。

  • 雇用条件
  • 給与などの雇用条件が異なる場合があります。試用期間中は、給与が低めに設定されていることも多いです。なお、試用期間について給与などの条件を別に設定する場合、求人票や採用契約書などに明記する必要があります。

このような違いはありますが、試用期間中も雇用契約関係がありますので、当該従業員の雇用にあたって企業は労働基準法を遵守しなければなりません。特に以下の点には注意が必要です。

  • 社会保険への加入が必要であること
  • 都道府県労働局長の許可を得ない限りは、給与水準が最低賃金を下回ることは認められないこと
  • 試用期間開始から14日を超えて雇用しており、試用期間中に当該従業員を解雇する場合、本採用後と同様、解雇の30日前までに予告をしなければならないこと

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試用期間中の残業の取り扱い

試用期間中も、雇用契約に基づく一定の待遇をもって雇用する必要があるということを確認しました。それでは、残業の取り扱いはどうなるのでしょうか。

試用期間中でも残業を要請できる

試用期間中の従業員は、雇用契約に基づき雇用されているため、いわゆる36協定の締結と届出さえしていれば、企業は労働基準法に定める範囲内で残業を要請することができます。従業員は企業の残業要請に対し、正当な理由なしに拒否をすることができません。

試用期間中でも残業代は発生する

試用期間中であっても、残業は労働基準法の規定に従って残業代を支払わなければなりません。時間外労働や休日労働、深夜労働に伴う割増賃金の規定にも従う必要があります。「試用期間であるから」、「当該従業員と合意したから」、という理由で残業代を支払わないということは認められません。

労働時間の注意点

先に述べたとおり、企業は試用期間中でも残業を指示することができますが、労働基準法の遵守やその他の観点から注意しておきたいことがあります。ここでは大きく2つに分けて紹介します。

長時間の残業は避ける

残業を要請すること自体は可能でも、本採用後と同じく、労働基準法における時間外労働の時間の定めに従わなければなりません。具体的には以下のような制限があります。

  • 時間外労働(休日労働は含まない)は、原則、月45時間・年360時間を上限とすること
  • 特別な事情のある場合でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働をあわせて月100時間未満・2~6ヶ月平均80時間以内とすること
  • 月45時間を超える月は、年6ヶ月までとすること
  • なお、上記の条件の範囲内で時間外労働をさせるには、いわゆる36協定の締結と所轄労働基準監督署長への届出が必要です。ただし、たとえ労働基準法の範囲内であっても、職場や業務にまだ慣れていない試用期間中の従業員に長時間の残業をさせるのは適切ではないといえるでしょう。

どこから残業になるかを明確にする

残業代を適切に支払うためには、どの時間が残業にあたるのかを正確に管理することが重要です。特に以下の点を意識しておくと良いでしょう。

  • 労働時間を記録し、いつ、どのくらいの時間の残業が行われたかを管理すること
  • 固定残業代制度を取り入れている場合、固定給に含まれる残業代にあたる時間をあらかじめ明確にしたうえで、追加で残業代を支払わなければならない残業の時間を正しく記録すること(固定残業代制度では、一定時間分の残業代が固定給に含めて支払われます。しかし、もし固定給に含まれる分の時間を超える残業があった場合、企業はその分追加で残業代を支払わなければなりません。)
  • 勤務時間の不規則になる業界・業種の場合、必要に応じて変形労働時間制を定めること(繁忙期と閑散期がある業界・業種の場合、変形労働時間制を定めることで、残業扱いとなる時間が極端に大きくなることを回避することができます。)

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まとめ

今回は、試用期間中での残業の取り扱いについて説明しました。試用期間中の従業員とトラブルにならないよう、労働基準法に則ったうえで、残業の扱いや残業の支払いについて自社の方針を明確にして従業員に正しく伝えるようにしましょう。

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