みなし残業とは? 意味を正しく把握してトラブルを回避しましょう

イメージ

「みなし残業」には2つの意味があります。1つは残業代を定額で決める「定額残業代制」における残業時間、もう1つは労働時間が把握しづらい外回りの営業職などに対して適用される「みなし労働時間制」での残業時間です。どちらの意味においても、適切な契約の締結と就業規則の作成、労働時間の把握を行う必要があり、行わないと訴訟などのトラブルが生じる危険性があります。今回は、みなし残業の2つの意味や起こりやすいトラブル、その対処法について解説していきます。

労務管理に便利なクラウド型勤怠管理システムAKASHIの資料はこちら>>

みなし残業とは

「ブラック企業」が流行語となるなど、残業や長時間労働が社会問題化している近年、「みなし残業」という言葉を耳にする機会も増えているのではないでしょうか。しかし、意外にもその意味を正確に理解している人が多くないのが実情で、その背景には「みなし残業」が次の2つの意味を持っているということがあります。

定額残業代制における残業時間

1つ目の意味は、「定額残業代制における残業時間」です。定額残業代制とは、1日8時間の法定労働時間を超過する分の時間外労働に対して支払わなければならない割増賃金を、実際の労働時間に関係なく毎月固定額支払うという制度のことです。そして、ここでの固定額というのは、「月に〇〇時間の残業をした場合の割増賃金」というような形で決定されます。この「〇〇時間の残業」こそが「みなし残業」の1つの意味になります。ちなみに、この「定額残業代制」は全職種に対して適用が可能な制度です。

みなし労働時間制における残業時間

2つ目の意味は、「みなし労働時間制における残業時間」です。みなし労働時間制とは、外回りの仕事が多い営業職など、企業側が労働時間を把握しにくい職種に対して適用が可能な制度で、「毎月〇〇時間働いている」と定めて、そのみなし時間分の給与が支払われる制度です。みなし時間が1日8時間の法定労働時間を超える場合、その超過分が「みなし残業」と呼ばれ、割増賃金が適用されることになります。

「みなし残業(固定残業代制)」と「みなし労働時間制」の違い

みなし残業(固定残業代制)とみなし労働時間制は、どちらも労働時間と残業代に関する制度です。名前が似ており混同しやすいため、2つの制度の違いを以下に整理しました。

  • みなし残業(固定残業代制)
  • みなし残業とは固定残業代制ともいわれ、想定される残業時間から割り出された一定の残業代をあらかじめ給料に含めて支払う制度のことです。
    例えば、雇用契約書に「月10時間の固定残業代」と記載されていた場合は、基本の給与以外に、10時間分のみなし残業代をプラスした給与が支払われます。実際の残業時間に関係なく一定の残業代が払われますが、10時間を超えた場合は超過した分の残業代を加えて支払う必要があります。

  • みなし労働時間制
  • 一方、みなし労働時間制とは、1ヶ月あたりの労働時間を定め、その時間内であれば労働者に対して残業代を支払わなくてもよい制度です。つまり、1ヶ月あたりの労働時間が定められ、その時間内であれば何時間働いても同じ給与が支払われるということになります。
    例えば、1ヶ月の労働時間が160時間と定められた場合、その時間内であれば何時間働いても同じ給与が支払われ、残業代は支払われません。ただし、みなし労働時間を超えた場合は、超過分に対して残業代が支払われます。

以上のように、みなし残業は超過した労働時間を事前に給与に含めて支払う制度であり、みなし労働時間制は1ヶ月あたりの労働時間を定めて時間内であれば残業代が支払われない制度です。名前は類似していても異なる制度であるため、正しく使い分けましょう。

みなし残業は違法?

上記のとおり、みなし残業は「定額残業代制」と「みなし労働時間制」という2つの制度における残業を指します。これらの制度は就業規則の範囲内で定めることが可能であり、労働基準法に則っている限り違法ではありません。
しかしながら、どちらの制度においても労働基準法に反した形での労働が常態化している企業が数多くあるようです。具体的には、労働者が定額残業代制やみなし労働時間制で想定されている時間よりも多く残業をしているのにもかかわらず、その分の割増賃金を支払わない企業が後を絶たないことが問題となっています。労働基準法に則れば、例えば定額残業代制において「月40時間分の残業代」が基本給に上乗せして固定で支払われていたとしても、実際の残業時間が月80時間であった場合、実態に合わせて40時間分の残業代を追加で支払わなければなりません。
また、定額残業代制やみなし労働時間制において、固定額の根拠となるみなし時間を明記しない場合や、明記されていても、みなし残業が月45時間を超えている場合などは、同様に労働基準法違反となります。つまり、定額残業代制やみなし労働時間制の実施自体は法的に認められていますが、運用や就業規則の定め方次第では違法になってしまうことがあるということです。

起こりやすいトラブルと対処法

基本的には労働基準法を逸脱しない形での運用を心がけることで、定額残業代制やみなし労働時間制における違法状態は避けることができるはずですが、違法状態からトラブルに発展するケースが多いのが実情です。以下ではよくあるトラブルとその対処法を、企業目線・労働者目線両方からご説明します。

起りやすいトラブル

みなし残業に関して最も多いトラブルが、「規定の残業・労働時間を超えているのに割増賃金が支払われない」といったものです。企業側が恣意的に実際の残業・労働時間より短い時間を固定の残業時間・労働時間に設定するケースも多く、泣き寝入りしている労働者も多いのが現状です。次いで多いのが、「時間外労働や深夜労働の割増賃金を考慮してくれない」といったトラブルです。労働基準法においては、法定労働時間を超えた労働である「時間外労働」に時給単価の25%割増、22時~翌5時までの「深夜労働」にはさらに25%割増が規定されています。しかし、特にみなし労働時間制においては、設定された労働時間が実際の勤務時間より長くてもこうした割増賃金を考慮しないという運用がなされてトラブルが発生するケースが多くなっています。

労働者が行うべき対処

労働者としてこうした状況に陥ってしまった場合、まずは未払いの賃金を請求しましょう。もし企業側が聞く耳を持たないようならば、労働基準監督署に報告することや、労働裁判を起こすことをおすすめします。企業に比べて労働者側の力は概して弱いため、泣き寝入り状態が続いてしまうケースも少なくありませんが、声を発していくことが大事です。

企業が行うべき対処

逆に企業側としては、恣意的に制度を悪用してはいけないのはもちろんのことですが、予期せぬトラブルの発生を防いでいくことが重要となります。もし定額残業代制やみなし労働時間制を導入しているのであれば、自社の就業規則をもう一度確認し、みなし時間が明記されているか、その時間が労働基準法に反していないか、実際の労働時間がみなし時間を超えていないかなどをチェックしましょう。トラブルが裁判等に発展して、社会的に「ブラック企業」の烙印を押されてしまうことによる損失は計り知れません。仮に裁判にならずとも、労働者の不満につながれば、生産性が著しく低下する恐れがあります。

関連記事:

まとめ

みなし残業は、定額残業代制と、みなし労働時間制という2つの制度にまたがる言葉です。労働基準法に則っていればまったく問題にならないのですが、様々な理由から労働基準法に違反した形での制度運用が横行してしまっています。労働者側は毅然と声を上げていくこと、企業側はみなし残業に関連した労働基準法違反をリスクとして捉えてもう一度自社の状況を確認することが大切です。

クラウド型勤怠管理システム「AKASHI」
従業員の労働時間を正確に把握するには勤怠管理システムを活用することで、効率的かつ確実に労働時間を管理することが可能となります。

ソニービズネットワークス株式会社が提供するクラウド型勤怠管理システム「AKASHI」は、36協定設定、年休管理簿や労働時間の把握など、あらゆる法改正や複雑な就業ルールに対応する機能をフレキシブルに対応します。15年以上のノウハウを活かした充実のサポート体制で導入後も安心です。

今ならAKASHIのサービスを30日間無料でお試しいただける無料トライアルを実施していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

「AKASHI」の資料・事例集を
ダウンロード >
tag

勤怠管理システム
「AKASHI」

カンタン登録ですぐにお試し可能です

30日間無料 全機能を体験できます 無料トライアル 今すぐ試してみる 30日間無料 全機能を体験できます 無料トライアル 今すぐ試してみる

活用方法や事例をご紹介

資料・事例集をダウンロード

毎日開催中。まずは聞いてみる

個別オンラインデモ