復職とは、休職や産前産後休暇を経て職場に復帰することを指します。復職支援の重要性は増しており、従業員の職場復帰後の安定した働きやすさが生産性向上にもつながります。そのため、復職計画や業務配分の見直し、労働環境の整備など、さまざまな観点からの対策が求められます。特に復職面談では、従業員の健康状態や心理的な安定性、業務への復帰意欲などを確認し、円滑な復職をサポートします。今回は、復職支援の重要性と具体的な取り組み方法、復職面談のポイントを解説します。
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復職とは
復職とは、心身に何らかの健康問題を抱え休職していた従業員や、産前産後休業・育児休業・介護休業などを取得していた従業員が職場に復帰することです。メンタルヘルスに不調をきたす労働者増加や男性育児参画推進に伴い、休職・休業を取得した後の復職は一般的となっています。なお、厚生労働省による2021年労働安全衛生調査によると、2020年11月1日から2021年10月31日までの過去1年間に、メンタルヘルス不調によって連続1ヶ月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%です。また、2021年度雇用均等基本調査における育児休業取得率は、女性が85.1%、男性が13.97%となっています。これらの割合は今後ますます増加することが予想されるため、休職・休業および復職はどの事業所でも起こりうることと捉え、しっかりと準備しておくことが重要です。
復職するまでの流れ
厚生労働省が策定した「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」によると、下記の流れに従い復職および復職支援を行うことが推奨されています。
- 病気休業開始および休業中のケア
- 主治医による職場復帰可能の判断
- 職場復帰可否の判断および職場復帰支援プランの作成
- 最終的な職場復帰の決定
- 職場復帰後のフォローアップ
休職および休業している労働者が円滑に職場復帰するには、復職支援プログラムや休職・休業および復職に関する規定を策定し、休職・休業の取得から復職までの流れを明確にしておくことが重要です。
復職支援の重要性
復職支援とは、傷病による休職もしくは産前産後休業・育児休業・介護休業などを取得し長期間職場を離れていた労働者に対し、円滑な職場復帰や再適応を支援するための制度です。特に、メンタルヘルスの不調により休職している場合、精神疾患の難治性や再発率の高さから、適切な支援を実施しないと短期間で再休職や退職に至るケースもあります。厚生労働省による2013年労働安全衛生調査によると、メンタルヘルスの不調から職場復帰を果たした労働者がいる事業所の割合は 51.1%です。およそ半数弱の休職者が復職できていないという結果であり、メンタルヘルス不調による休職者の復職・再適応には、適切な復職支援やフォローアップが必須であるといえるでしょう。
復職支援の具体的な取り組み方法
適切な情報提供を行う
労働者が安心して休職・休業を取得できるよう、以下の項目について情報を提供し、適切な支援を行いましょう。
- 傷病手当金や育児休業給付金など経済的な保障
- 不安や悩みなど相談先の紹介
- 公的または民間による復職支援サービスの紹介
- 休職や休業を取得できる期間 など
休職・休業期間中に会社側から過度に連絡を入れると労働者の負担となるため、休職・休業に入る際には連絡を取り合う頻度を決めておくとよいでしょう。その際、電話・メール・書面など、労働者の負担となりにくい連絡手段についても確認してください。休職・休業期間中に労働者を孤立させないよう、適度な頻度で連絡を取り合い、職場の状況など情報提供することが重要です。
職場復帰支援プランを作成する
休職・休業中の労働者から復職の意思表示があり、主治医による復職可能の判断が示された場合は、職場復帰支援プランを作成しましょう。職場復帰支援プランとは、安全かつ円滑な職場復帰を支援するための具体的なプランです。職場復帰支援プランには一般的に、下記の項目について検討・記載します。
- 職場復帰日
- 管理監督者に求められる就業上の配慮
- 人事労務管理者に求められる対応
- 産業医等による医学的見地からみた意見
- フォローアップに関する事項
- 労働者が自らの責任で行う事項 など
管理監督者に求められる就業上の配慮とは、必要なサポートや業務内容・業務量の変更、その他必要な合理的配慮などです。人事労務管理者に求められる対応は、人事異動や配置転換の要否、勤務制度の変更などを指します。労働者が自らの責任で行う事項とは、試し出勤制度の利用要否などです。
試し出勤を実施する
復職の準備が整ったらいきなり職場復帰させるのではなく、生活リズムの立て直し、通勤や労働に必要な体力の回復、職場環境への再適応などを目的とした試し出勤を実施するのも一般的です。試し出勤制度には、ステップ毎に下記のようなものがあります。
- 模擬出勤
- 通勤訓練
- 試し出勤
デイケアやリワークプログラムで勤務時間に合わせて軽作業等を行う。
いつもの通勤経路で職場の近くまで移動し一定時間過ごして帰宅する。
実際の職場などへの試験的な出勤を一定期間続ける。
試し出勤制度は、万が一災害などが起こった際に労災の対象外となる可能性や、休職・休業期間の日数算定に含めるか否かの判断が難しいといった課題はあるものの、労働者の不安を和らげ、職場環境を確認しながらスムーズに復職できるなどのメリットがあります。
復職面談のポイント
復職が可能か見極める
復職の可否を見極めるには、主治医の医学的見地に基づく判断に従うのが前提です。しかし病気の良し悪しだけで一義的に判断するのではなく、復職面談を実施し多角的に判断する必要があります。なぜなら、復職可否を判断するには、毎日決められた時間に出社し、一定時間賃金に見合った労働が行えるか否かを確認しなければならないからです。回復レベルを判断するには、復職面談に先立って簡単な生活記録を付けてもらうとよいでしょう。何時に起床し、日中は何をして過ごし、夜は何時に就寝したのかなどの記録は、有用な判断材料となります。もちろん、前章でご紹介した試し出勤制度を利用し、労務の提供が可能かどうかを判断するのも一つの方法です。復職面談では、主治医の復職診断書によって病状を確認するのはもちろんですが、労務が提供できるか否かという人事労務面の確認もしっかりと行いましょう。
復職後の職場環境や就労条件を検討する
主治医が復職可能の判断を示した場合であっても、一定の配慮や職場環境・就労条件の変更を前提に判断している可能性があります。例えば、一定期間業務量を減らす、労働時間を短縮する、残業を課さない、異なる部署・部門に配置転換する、などです。復職面談では、復職診断書に前提条件が記されているかどうかを改めて確認し、必要に応じて復職後の職場環境や就労条件を検討しましょう。復職診断書の内容に疑問がある場合や配慮が難しい場合は、主治医に確認してください。主治医が復職可能の判断を示している場合、会社の都合で復職を認めず解雇することは不当解雇に該当します。配慮なく一方的に解雇すると、訴訟に発展する恐れがあるため十分注意しましょう。
就業規則を確認する
復職面談では、就業規則の規定を確認することも重要です。通常、就業規則には休職や休業および復職に関するルールが規定されています。復職面談の結果、復職が不可能と判断した場合は、就業規則に規定された休職・休業期間を確認してください。期間が残っている場合は休職・休業を継続し、期間が過ぎている場合は規定に従い退職もしくは解雇となるのが一般的です。復職が可能と判断した場合は、就業規則の規定に従い復職手続きを進めましょう。
まとめ
復職とは、傷病などによる休職や産前産後休業・育児休業・介護休業などを取得していた従業員が職場に復帰することです。メンタルヘルスに不調をきたす労働者の増加や、男性の育児参画推進に伴う育児休業取得率の向上などに伴い、休職・休業および復職は一般的となっています。特に、メンタルヘルス不調の場合は高い再発リスクが伴うため、適切な復職支援やフォローアップが必須です。復職の可否は慎重な判断が必要となるため、当記事を参考にしっかりとした準備を行いましょう。