
人材育成ロードマップとは、従業員が成長するための道筋を可視化した計画を指します。業務に必要なスキルや知識を整理し、段階的に習得できるよう設計することで、経営層と現場、部門間など組織全体で育成の方向性を統一できます。作成時は、求める人材像を明確にし、スキル分類・評価基準・研修内容を体系的に設定することが重要です。今回は、人材育成ロードマップの目的や作り方などについて解説します。
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人材育成ロードマップ作成の目的
人材育成ロードマップは、企業のビジョンや理念をもとに、理想の人材・人物像を育成するための道筋をまとめた長期的な計画のことを指します。人材育成は、単純に業務に必要なスキルを習得させれば良いというわけではなく、組織力や企業理念を明確にし、「どのような人材を育てていきたいか」を明確にすることで、理想の従業員像を育成するための計画を可視化できるようになります。人材育成ロードマップは、中長期的かつ効率的な人材育成を実施するために、どのような施策やスケジュールで計画を進めるのかをまとめた指針といえるでしょう。
人材育成ロードマップの重要性
市場のニーズや変化が激しい現代社会で持続的な成長曲線を描くためには、その場しのぎのOJTや社内研修だけでは、企業が求める人材育成を効率的に進めることは難しくなりつつあります。組織全体が人材のレベルを底上げし、一貫性のある育成方針を固めるために、具体的な計画案を作成して可視化することが重要です。ロードマップを作成し、人材育成の計画案や具体的な方針、スケジュールをまとめることで、中長期的な企業戦略の方針に合わせた人材育成の基盤を構築するツールのひとつとなるでしょう。
人材育成ロードマップを使用した人材育成手法例
人材育成の手法には「OJT」や、デジタルデバイスが普及した現代ならではの方法である「eラーニング」、先輩や上司から教わるのではなく自発的に学習に取り込む「SD(セルフ・デベロップメント)」など、さまざまな手法があります。どの手法にもメリットとデメリットがあるため、自社にとって最適である手法を組み込むことが重要です。例えば「eラーニング」の場合、受講者はデジタルデバイスとネットワーク環境さえあれば受講できるため、場所や時間の制約が少ないというメリットがあります。一方で、受講内容をカスタマイズするには相応のコストがかかり、人材育成手法としては導入のハードルが高いというデメリットもあるようです。
人材育成ロードマップを作成するメリット
求める人材の明確化と共有が可能になる
ロードマップの作成段階において、組織全体が求める人材や人材育成の手法や指針、方向性を定める必要があります。そのため、経営層が理想とするビジョンや企業理念を、どのように現場の働き方や従業員それぞれの意識に落とし込むのかは、双方の意見や現状・課題を共有することが重要です。部下を育てる側にとっても、人材育成を受ける側にとっても、企業として必要な人材やビジョンが明確になっていると、育成のプロセスを円滑に進めやすくなるでしょう。
適切な人材育成計画を進められる
同じ組織内であっても、特に規模が大きくなればなるほど、現場や部門によって適切な育成方法は異なります。あらかじめロードマップ内に各現場・部門ごとに育成計画やリソースを洗い出しておくことで、それぞれにマッチした内容で育成を進めることができるようになります。ロードマップの作成には現状分析や課題の洗い出しといった情報収集も重要で、これらの内容を把握し育成計画に落とし込むことで、経営層と現場のギャップを埋められ、より効率的な人材育成のアプローチを可能とします。
従業員のエンゲージメントと積極性の向上
円滑な教育方針が進められていることを、従業員が実感できていると、成長を期待されていることを各従業員が実感として得られるようになります。これにより、組織に対する信頼感や成長しようという積極性、働くやりがいを得られることが期待できます。また、ロードマップは中長期的な道筋を立てるため、従業員にとってはキャリアパスの提示をすることにもなります。企業の成長とともに自身がどのようにキャリアアップを目指すのか、その方向性が示されていることは、これから組織の一員として働く従業員にとって大きなモチベーションへとつながるでしょう。
人材育成ロードマップの作成方法
自社が求める人物像の明確化
現状分析や課題を通じて、「このような人材に育ってほしい」という明確な人物像を具現化しましょう。その人物像になるために必要なスキルや能力・資質などの要素を逆算し、企業のビジョンや経営戦略と見合った人材を定義することで、具体的な育成計画の策定が円滑に進みます。
人材育成計画の策定
理想の人物像が明確に定義できるようになると、その次は具体的な育成計画の策定に進みます。まずは現状を把握し、理想とギャップのある部分を埋められるような育成方法を検討します。積極性やコミュニケーションスキルなど、部門や働き方にとらわれない要素もありますが、特定の業種や部門に左右される専門的スキルなどは、育成計画の時点である程度パーソナライズさせることも求められるでしょう。
人材育成における目標設定
ロードマップは中長期的に計画を立てる方法であるため、最終地点に到達する前の段階だけではなく、近い将来の短期目標を同時に立て、計画が円滑に進んでいるかどうかの指標を作れるようにするとより安心です。
自社に合う人材育成手法の確定
自社に必要なスキル・人材を洗い出し、目標設定が完了したら、具体的な育成方法を検討しましょう。前記のとおり、育成方法にはさまざまな種類があり、それぞれメリットやデメリットが異なります。育成にかかるコストや実際に効果があらわれるまでの時間も異なるため、自社に合った育成方法を確定させましょう。
人材育成計画の評価・修正
人材育成計画は一度策定したらゴールではなく、効果測定をした後に適宜フィードバックや修正をはさむことも重要です。新しい育成方法を導入した場合は、実際に従業員に浸透するのには時間がかかることもあるため、ある程度余裕をもって改善や修正に取り組みましょう。
まとめ
人材育成ロードマップは、単に人材育成を実施するマニュアルではなく、企業が従業員とともに成長するために必要な育成計画の方針をまとめた重要なツールです。人材育成の方法はさまざまで、ビジョンや方針に合わない育成方法を採用してしまうと、組織全体の生産効率や従業員のモチベーションが低下することにもつながりかねません。計画的かつ効率的に人材育成を進めるためには、まずはロードマップの作成に着手してみてはいかがでしょうか。
